32.1年生パーティの失敗(後篇)
もちろん、その後は敵も味方も分からなくなって大乱戦になった
ただでさえ、パワーでは勝てないレイラちゃんたちは霧の中では圧倒的に不利。
まず最初に魔法を使ったフィオナちゃんがボスのデコピン一発でKOされて、つぎにユリちゃんとマリちゃんはボスに首根っこをつかまれて2人の頭をゴッチンコされて泣かされてしまった。
最後に残ったレイラちゃんはボスと中ボスの計3体を相手にしなくちゃならなくなったんだけど、ボスだけが相手の時ですら大苦戦してたぐらいだから3体を1度に相手にして勝てるはずがない。
中ボス2体に押さえつけられて、ボスがレイラちゃんのお尻をこん棒でバシっと引っ叩いた。
・・・いわゆる『ケツ○ット』っていうやつだ。
「くぅっ・・・こんなことで私が降参すると思ったら大間違いなんだからっ」
レイラちゃんは涙目になりながらも強がるんだけど、ボスは
「シッシッシッ・・・」
って笑うだけ。
コボルトっていうより犬。
それも普通の犬じゃなくって尻尾をプロペラにして空を飛んじゃいそうな犬みたいな笑い方だ。
それから、ボスは左手でこん棒を持ったまま、『じゃあそろそろ本気を出すか』とばかりに斜め上に大きく掲げる。
それって、予告ホー○ラン・・・。
「ヒッ・・・」
レイラちゃんは悲鳴を上げる。
あんな強がりを言ったりせずに降参しておけばよかったと、早くも後悔する羽目に。
しかし、ボスは容赦してくれない。
理想的なフォームから左足を上げ、こん棒(バット?)はきれいな弧を描き、最速のスイングスピードに乘ってレイラちゃんのお尻へ・・・
これにはさすがのレイラちゃんも大泣きだった。
それも4人の中で一番カッコワルイ泣かされ方になってしまった。
さらにひどいことに、これはレイラちゃんの泣き顔の挿し絵付きで、1年生の学級新聞の記事にまでなってしまったらしい。
(かわいそうとは思うけど、ちょっと見てみたい気もする)
ちなみにフィオナちゃんは誰にも話してないって言ってたから、ユリちゃんか、マリちゃんか、それとも別の誰かが見てたのか・・・真相は闇の中だ。
もちろん、『守護の腕輪』の判定も全滅判定だった。
こうして、1年生女子4人のパーティによる初挑戦は大失敗に終わったのだった。
そんな失敗があって、ホントだったら『次はがんばるぞ!』ってならないといけない所だったんだけど、レイラちゃんにとってはあの失敗は絶対に許せないものであったらしい。
そしてそのイライラの矛先はフィオナちゃんへ。
フィオナちゃんはかなり口汚く罵られ、パーティを追い出されたらしい。
(具体的になんて言われたのかは、決して教えてはくれなかったんだけど)
正直なところ、フィオナちゃんも言われなくってもパーティを抜けたいって思ってたみたいだからそれ自体は問題じゃないんだけど、そのせいでもうだれとも組みたくないって思っちゃったらしい。
失敗があったとはいえ、1年生のクラスで唯一ちゃんと魔法が使える子だから、何度かほかのパーティからも誘われたんだけど、全部断っていたみたい。
まあ、気持ちはわかる。
そんな頃、フィオナちゃんを誘ったのがゆーくんだったらしい。
タイミング的にはちょうど、ゆーくんが私とパーティを組んで4レベルダンジョンに失敗した直後くらいだ。
フィオナちゃんを誘った他の子たちはみんなフィオナちゃんの魔法に期待した子が多かったんだけど、ゆーくんはそうじゃなくって・・・
「失敗してもいいから、二人でがんばろっ」
って言ってくれたらしい。
だからフィオナちゃんははじめ、1回だけって条件でゆーくんとパーティを組むことにした。
この間と同じレベル1ダンジョンに行って、その時もやっぱりフィオナちゃんの失敗があってボスの所までたどり着くことすらできなかったんだけど、でもゆーくんはフィオナちゃんのミスを決して責めたりはしなかった。
それがすごく嬉しくて、フィオナちゃんはそれからもゆーくんとパーティを組むことにした。
2人だけではやっぱり厳しくて何回か失敗したんだけど、だんだんフィオナちゃんの魔法の精度も上がっていって、結局ゆーくんとフィオナちゃんは、フィオナちゃんの代わりに女子の戦士の子をもう1人加えたレイラちゃんたちのパーティよりも先にレベル1ダンジョンをクリアしたのだった。
その間に何連敗もしていたレイラちゃんにしれみればそのことが面白くなかったみたいですごく悔しがってたらしいけど、フィオナちゃんがもし、あのままレイラちゃんたちのパーティに残っていてもきっとうまくいってなかったような気がするよ?
フィオナちゃんももちろん、そんなことをあえて言ったりはしなかったみたいだけど・・・。
フィオナちゃんが他の子とパーティを組たがらない理由はそんなわけだった。
それにしてもフィオナちゃんにこれだけ信頼されてるゆーくんはすごいなあ。
私がゆーくんとパーティを組んだ時も『さすが男の子!』って思うところはあったけど、普通の男の子じゃこうはいかないよ?
私はラルフお兄ちゃん一筋だけど、もしそうじゃなかったとしたら・・・
って、ダメダメ、二股はダメだってば!
だけどそんなことを考えちゃうぐらい、ゆーくんカッコイイ!
「ねえフィオナちゃん、そういう理由だったら無理にとは言わないよ。誰だってどうしようもなくつらい時ってあるよね。すっごくよくわかるよ・・・」
そう言ったのはフタバだった。
でも気になるのは、フタバがすっごく弱気になってるように見えることだ。
多分、ゆーくん以外の子とパーティを組みたくないって言っているフィオナちゃんを、自分のゴブリン恐怖症と重ね合わせてるんだと思うし。
「でも・・・私はずっと逃げてたら、ダメだと思う・・・」
私は、フィオナちゃんに対していったんだろうか・・・それとも、フタバに対して?
一瞬、自分でもちょっとわからなかった。
「行こうよ!」
ゆーくんもそう言って、フィオナちゃんだけじゃなくってフタバの事も気にかけてくれてるみたいだった。
ゆーくんはフタバの事情は知らないはずなんだけど、何となく察するものはあったのかもしれない。
フタバも、フィオナちゃんも固まったように黙っている。
空気がちょっと重いんだけど、でも・・・。
「私、行きます」
先に言ったのは、フィオナちゃんだった。
「本当は、ずっとゆーくんと2人だけでいいと思ってたけど・・・他の子が入ったら、もしかしたら今の関係もこわれちゃうかもしれなくてこわかったけど・・・でも・・・」
フィオナちゃんは、ちょっと泣いちゃいそうになっていた。
だから私は、フィオナちゃんのちっちゃな頭をぎゅっと抱きしめてあげた。
「最後まで、言わないでいいよ。絶対にそんな風にはさせないから安心して」
そうだよね。こんなちっちゃな子に、そんな心配をさせてたらいけない。
フィオナちゃんも、そのまま頷いてくれた。
「じゃあ、フタバはどうする??」
私は続けてそう言って。
フタバはまだ、迷っているようだったんだけど、
「それ、ずるいよ・・・フィオナちゃんががんばるって言ってるのに私が行かないって言えないじゃん・・・」
でも、本当はフタバも分かってるんだと思う。
いつかは絶対克服しなきゃならない。
そしてそれは、時間がたつほど大変になっちゃうんだって事。
「それじゃ、4人パーティで決まりだね!全員登録してくるよ!!」
ゆーくんはそう言って受け付けへ。ゆーくんが選んだのは『レベル2』だった。
この中で一番回数をこなしてるのはゆーくんだから、さすがに素早い。
あ、そうそう。
パーティの登録のルールが前回の時からちょっと変わってて、パーティのリーダーの名前とパーティ名を書くところが追加されてたんだけど、リーダーの所にはゆーくんが勝手に私の名前を書き込み、パーティ名の所には『ミルフィとゆかいななかまたち』と書かれていた。
でもねゆーくん、その書き方だとゆかいなのは私じゃなくって、ゆーくんたちだからねっ!
次回の更新は明日1月9日(月)です。




