28.クラス裁判
私が教室に戻ると、みんなの席が教室の中でぐるっと四角く並べられていて、私の席と、ディック、エイルの席だけが3つ、真ん中に並べられていた。
「遅すぎ!」
って言われたのはまあ想定していたけど、それよりこの机の並びを見たときは『いったい何ごと!?』って思った。
「ほら、裁判だ裁判。被告人は早く椅子に座れ!」
そう言ってジャッキーに肩を押さえつけられ、無理やり座らされた。
あいつらはともかく、何で私が被告人なのよっ!
・・・って言うのはまあ喧嘩になったのは事実だから仕方ないか。
フランソワ先生も口を出さないから、どうやら公認らしい。
「じゃあ俺が裁いてやっからお前らお互いに言い分言ってみろ」
「そんなのずるいじゃん!男子が裁いたら、あっちが有利に決まってるし」
私は即座に口を挟んだ。
言った通りの意味もあるけど、『お前、自分は全然悪くないって思ってそうだけど、それ大間違いだからな!』って言われたのがね。
向こうの味方する気満々じゃん?
「じゃあ、誰が裁けばいいって言うんだ?みんなが見てる前で公正にやれば誰がやってもそんなに結果は変わらないぞ?なんならお前と一番仲良しのユリカにでもやらせるか?」
ジャッキーにどんな意図があってそう言ったのかは分からなかったけど、それだったら私には異存はない。けど、向こうは・・・
「おい待てよ、それ、ずりーだろ!」
・・・ってディック。そう言うよね・・・そりゃ。
「お前らな、『男対女』じゃねえんだよ。まずその発想から離れろ。さっき言ったように誰が裁いても公正にやりゃあ結果はそんなに変わらねえ。ゴチャゴチャ言うなら俺が両成敗で3人まとめてブッ飛ばしてやってもいいんだぞ」
ジャッキーは指をポキポキッと鳴らした。
「「それはダメ(だ)っ」」
思わず、私の声とディックの声が被る。
う・・・こんな奴と・・・。
けど、ジャッキーにブッ飛ばされたら命がいくつあっても足りないよ!
「はい、ジャッキーそれは有罪。ホントの殺人事件になるからやめときなさい」
ああ、ユリカったらもう裁判長の椅子に収まっちゃってる。
「心配すんな、さすがにそれは冗談だ」
そう言いながらもう一度、今度は反対の手の指をポキポキッと・・・。
やめなさいよね。ホントに。
「じゃあ、まずは両方の言い分を聞きましょうか。どっちから話す?」
仕切るユリカに、私はすぐに手を上げた。
「言い分も何も、ディックとエイルが一方的に私たちのこと馬鹿にしてきたんじゃん!それ以外何があるのよ!!」
そしたらディックもすぐに
「俺らはちょっとからかっただけじゃん。そしたらコイツ、俺らに暴力振るってきたんだぜ?そんなの暴力の方が悪いに決まってるだろ!」
って言い返してきた。
他の子たちからの意見は、全然ない。
暴力、って言っちゃえばそうかもしれないけど、あれってそういうんじゃないよね!?
でも、その場にいなかった子たちにそれを言葉で説明するのは難しい。
あと、本人があまり人に話されたくないって言ってたからちょっとどうしようか迷ったんだけど、もうみんなにばれちゃったのは明らかだったから、
「フタバはすっごく重い『ゴブリン恐怖症』だったんだよ。それをあんなにしつこくゴブリンゴブリンって・・・あんたら最低じゃん!」
って言ってやった。
それでもフタバがまだ言われたくないって思ってたんなら謝んないといけないけど、こいつらに言いたい放題にさせとく訳にいかないし!
「俺たちは『恐怖症』なんて知らねえよ。お前らが勝手に先生の言いつけ守らずにゴブリン狩りに言って返り討ちにあって、勝手に『恐怖症』になっただけじゃねえか。俺たちにはそんなのの責任まではねえだろ。それに・・・知ってたらあそこまではやってねえし」
最後の方でちょっとどもってるのが意外。
ちょっとは悪かったって思ってるのかな?
でもさあ・・・
「じゃあ、最後に腰抜かしてるフタバにゴブリンの人形押し付けてたのはなんだったわけ?泣いてもまだやめなかったよね??あれ、ホントに怖かったんだと思うよ。見てわかるじゃん!!」
私とコイツら以外で現場で見てたのは・・・ジャッキーだけか。
それがちょっと心配だったけど、
でも、ユリカに
「どうだった?」
って確認を求められると。
「ああ、それはミルフィの言ってる通りだと思うぜ」
って言ってくれた。
ますますコイツの意図はよくわからないんだけど・・・。
でもさ、ほら、やっぱり私たちが悪いんじゃないじゃん。
ディックやエイルが悪いんじゃん。
その証拠にディックは
「あれはエイルが勝手にやったんだ。俺はあそこまでやるなんて思ってなかった」
なんて言ってるし、エイルの方は
「俺、そもそもディックに言われなきゃそもそもこんなことやってないよ!」
だって。
つまり、コイツら仲間割れしてるってこと。
でもね、仲間を裏切って自分だけ悪くないって主張したってダメ。
本当にヘタレで馬鹿の上に最低コンビだわ!!
他の子たちも、ここまでくると大体向こうの方が悪いって分かってくれてると思うし空気の流れは完全にこっちだ。
「あんたたち、とにかく潔く、フタバに謝んなさいよ!」
ホントは、謝ったら許せるなんてもんじゃないと思うけど・・・
「ふざけんな!なんで俺たちがっ!」
コイツ、諦めが悪い・・・。
「じゃ、判決出すけどいいかしら?他に意見がある人がいたら先に言って。ジャッキーあんたなんかあるんじゃないの?」
ユリカが聞くと、ジャッキーはちょっと迷ってから
「んー俺の意見は、やっぱいいや。まあ、この話の内容ならディック達の方が悪いだろ。けど・・・謝る気がない奴を無理に謝らせて意味あるか?」
って言った。
ディック達だってもう、言い分なんてないでしょ。もともとそっちが悪いんだから!
「じゃあ判決を言い渡します。ディックとエイルは謝りたくなければ謝らなくてもいいから、その代りミルフィとフタバには学校を卒業するまで一切ちょっかいを出さない事。話しかけるのも禁止よ」
「どう見てもあいつらが悪いのに謝らせないなんて絶対ダメじゃん。それおかしいよ」
私はすぐに口を挟んだ。
そりゃ、ユリカが裁判長をやってくれるってなった時は良かったって思ったよ。
だけど、悪いのに謝らせないなんてやっぱりダメだと思う。
「俺は謝る気なんてないけど、話すのもダメだったらもし気が変わったとしても謝ることは出来ないぜ」
ディック、あんた言ってることもおかしいでしょ。何なのよ一体・・・。
「当事者の判決への意見は認められません。他の人に異論がなければこれで決定よ。誰か、意見がある人いる?」
しばらく、全員が沈黙。
けど、ここで口を開いたのも、やっぱりジャッキーだった。
「裁判長、当事者同士を裁くだけならそれでいいけど、要は無視させるってことだろ?それってクラスの雰囲気がスゲー悪くなるんじゃね?」
「ん~、じゃあ、どうする?ジャッキーだったら・・・」
「俺ならか?俺なら決闘させるね。ただし怪我があっちゃまずいから、ちゃんと模擬戦ルールでな。ミルフィが勝ったらディックとエイルはフタバに土下座して謝れ。ディックが勝ったら何もなし。そしてどっちの結果になってもあとはお互い全部水に流せ」
うう・・・ジャッキーらしいと言えばらしい。だけど
「コイツら謝らせる為ならやってやるわよっ」
「ふざけんな!返り討ちにして泣かしてやるからな!」
こんな感じで、私とディックはこの日の放課後、対決することになった。
こいつ、フタバに一方的にやられてたヘタレだし、絶対負けないんだからっ!
次回の更新は1月1日の予定です。




