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23.ダークエルフ

「なんで、あたしが人間なんか助けなきゃならないわけ?だいたい、人間とダークエルフの仲が悪い、って『設定』したのはあんたらでしょ??」

 ダークエルフの少女、チェルニィは、不満そうに言った。

 目の前にいる男は、ルシェルフ。

 この世界の創造主。

 しかし神、ではない。


「あなたたちの一族は、何故この世界が存在しているのか、知っていますね?それともあなたは小さすぎて、まだ何も習っていませんか?」

「馬鹿にしないで!種族の中ではチビでも、あたしはこう見えて50年生きてるのよ!」

「なら、『我々の世界の人間』である彼女が死ねば、この世界に意味がなくなることは・・・わかりますよね?」

「あんた、あたしを脅すつもり?」

「そんなつもりはありません・・・が、あなたなら、不要になったものをどうしますか?」

「そんなの捨てるに決まって・・・って、まさか・・・?」

「まさかじゃありませんよ。この世界に意味がなくなれば、我々は次の『箱庭』を作る必要がある。その時、いらなくなった『箱庭』は・・・残念ながら廃棄するしかありませんね」

「く・・・わかったわよ。やればいいんでしょ。そのかわり、パパにはあんたから話といてよ」

「いいでしょう。族長も分かってくれるでしょう。彼もダークエルフと人間の関係が悪い本当の理由を理解してますから」

「あと、もう一人の子はどうするわけ?」

「それは、あなたの判断にお任せします・・・」


 チェルニィは、ふうっとため息をついて、

「まあいいわ。人間はキライだけど、ゴブリンはもっとキライだもの」

 と声に出した。

 しかしもう、目の前にさっきの男はいなかった・・・

 

 

 私は、ものすごい『青臭い苦味』と共に目を覚ました。

 思わず口の中の物を吐き出そうとしたけど、大声で

「飲み込みなさい!薬草だから!!」

 って言われて。

 言う事を聞いた、と言うよりも思わず勢いでそれをゴクッと飲み込んだ。

 う・・・やっぱ苦い。

 薬草って言うよりそこいらの雑草でも口にねじ込んだような感覚で、喉を通るときも固くて気持ち悪い・・・けど、我慢。

 そして、寝っ転がったまま、声の主の方に顔を向ける。

 

 一見、私よりちっちゃい女の子だった。

 色はものすごく黒くて、耳がとんがってる。

 話には聞いたことがある。この子、ダークエルフだよね。

 ダークエルフって言うのは、聞いた話では『邪悪で狡猾なモンスター』ってことになってるんだけど、私が直接見た印象ではそんな風には思えない。

 見た目の問題だけじゃなくて、私はこの子に、会ったことがあるもん。

 暗くて耳まで見えてなかったから、その時はダークエルフとは思わなかったんだけど、お祭りの時の・・・

 そう、私のすもも飴をとった『あの子』だ。


 そこまで考えたところで、その子に頭を軽くバシッと叩かれた。

「あんた今、あたしのことチビって思ったでしょ!こう見えてもあんたなんかより、何倍も生きてるんだかんね!」

「そ・・・そんなこと思ってないよ!」

 いや・・・正直、ちょっと思ったかも。

 でも、思ってたとは言えないからこんな風に答えてから、起き上がろうとする。

 まだちょっとぼうっとするけど・・・

 目の焦点が合いにくい感じだ。

 そうだ、思い出した。

 私はすんでのところでゴブリンの晩御飯にされちゃうところだったんだ。


「あなたが、助けてくれたの?」

 って私が聞くと、

「・・・あんたは、ついでだけどね」

 とぶっきらぼうに言われた。

 なんでついでなのかは良く分からないけど、どうやらこの子が助けてくれたってことで正解らしい。

「ありがとう・・・えっと・・・」

「チェルニィよ。チェルニィ・フレアスター。あと、お礼なんていらないから。ほんとは人間なんか助けたくなかったけど、こっちの事情で助けただけだから」


 なんかね、こういう素直じゃない反応にもちょっと慣れてきた。

 だから、私はこんな風に言い返した。

「私はミルフィ・ライプニッツよ。そっちの子はフタバ・ターナ。『ありがとう』は私の気持ちで言う言葉だから・・・だから私はちゃんと『ありがとう』って言いたい。だけど・・・あなたがそれをどう受け止めるかはあなた次第だけどねっ!」


 ちょっと意地になっちゃったかな。

 でも、助けてもらわなかったら今頃ゴブリンに食べられてたとこなのは事実だし。

「あんた、面白い子ね。あたしにあんな酸っぱいの掴ませるぐらいだからもっとヤな子だと思ってたわ。あたしは酸っぱいのが超苦手なのよ!」

 え・・・それはヒドイ。

「あれはあなたにあげるつもりで買ったわけじゃなくて自分で食べるために買ったんだけど・・・」

 私は抗議したけど、それは無視された。うーむ・・・。


 ん~、なんかまだちょっと、頭痛いし息が切れる・・・。

 そんな様子が見てて分かったのか、

「まだしばらく休んでた方が良いわ。毒は時間がたてば抜けるタイプだし、薬草も飲んだからちょっとすればよくなるはず・・・心配しないでも、あんたらが休んでる間はゴブリンが戻ってこないようにあたしが見張ってるわ」

 すごく助かる。それに、状況としては言葉に甘える以外の選択肢がない。

「お礼はいらないからね!あんたみたいにしつこくお礼されるとめんどくさいから!」

 今度は先回りされた・・・まあ、でもそこは気持ちは伝わってるんだろう。そうじゃなきゃ、こんな言い方はしないもん。


「ねえ・・・フタバは、大丈夫なの!?」

 やっと、一番聞かなきゃいけないことが聞けた。ちょっと頭の中の整理が出来てないのかな。

「初め来た時は泡吹いて痙攣してたからもうダメかもって思ったけど、今はもう落ち着いて呼吸も普通になってるから命には別状ないと思うわ。けど、あんたよりはだいぶ重症よ」

 そっか・・・そりゃそうだよね。あの毒の吹き矢を、私は一発受けただけだけどフタバは三発受けてるし、戦って体動かしてたから毒も回ってるもんね。

 けど、命に別状がないならちょっと安心。

 私はちょっとだけほっとして、一息ついた。


 他にも、たくさん聞きたいことがある。

 それこそ、きりがないくらい。

 だってダークエルフの子と、そもそもこんな風に会話が成り立つとすら思ったことはなかったもん。

 でもそれはチェルニィの方だって同じなんだろう。


「ねえあんた、人間の街にはあんなに甘いものがいっぱいあるのに、なんだってあんな酸っぱいものが好きなわけ!?」

 あら、割とどうでも良さそうな事を聞かれた!?

 まあ、回復するまでお話ぐらいしかすることないし、暇つぶしの雑談だと思えばいいかな。

「あの水あめの甘さとすももの酸っぱさの絶妙のバランスがいいのよ!食べてるとクセになるくらい」

 答えと言ってもこのくらいしかないけど。


 だって、好きな食べ物を好きな理由を詳しく説明なんて出来ないもん。

 チェルニィは本人が言う通りよほど酸っぱいものがダメらしく、かなり嫌な顔をしている。

 あれ?でも・・・

「ねえチェルニィ、なんでそんなに私たちの町の事詳しいわけ?」

「そんなの、決まってるじゃない。あたしがあなたたちの街に行ったのがあの時の一回だけだとでも思った?」


 フタバもだけどこの子も無謀だなあ・・・

「わかってるかもしれないけど・・・チェルニィさあ、私たちがあなたたちのこと、どう習ってるか知ってる?」

 これは、ちょっと失礼かも、とは思ったけど。

「もちろん、知ってるわ。人間が私たちをモンスター呼ばわりしてるのはね。でもあたしは人間なんかにつかまったりしないし。あたしたちの村じゃ人間の街みたいにたっくさんの甘いものは手に入らないからね。やめられないわ」

本人は、私たちの何倍も生きてる・・・なんて偉そうに言ってたけど、味覚はお子様らしい。


・・・って思った瞬間、また頭をスパーンと叩かれた。

「あんたまた、あたしのことチビって思ったわねっ!」

「そんなこと思ってないよっ!」

 そう言いつつ、本音は

 (なんでバレたんだろう・・・)

 だったんだけど。


「まあいいわ。それより・・・あなたは知ってるの?なんで、人間とダークエルフの仲が悪いか」

「ううん。詳しくは知らないわ」

  私は正直にそう答えた。

  知らないどころか、個人的には『仲よくしたっていいんじゃない?』って思ってるぐらいだもん。

  けど、チェルニィが語ったお話は、私の予想をはるかに超えていたのだった・・・。




次回の更新は明日12月18日(日)です。

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