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17.お祭りの夜(前編)

 実はあの後、善は急げとばかりにすぐにグレイとデイジーに誘われて、その日のうちに2人のお家にお邪魔することになったんだけど、さらにものすごい人にチェスを教えてもらえちゃったのだ。


 ケイマン伯爵。グレイとデイジーのおじいちゃんで、現役の伯爵で私たちの国のチェスのチャンピオン。

 さらに言うと今回のイベントの主催者で、今回かかっていた税金の1割って言うのは厳密にいうと国が安くしてくれたわけじゃなくって、このケイマン伯爵が私費でその分を肩代わりしてくれたんだって言うから驚きだ。(ちょっとどのぐらいのお金持ちなのか、想像もつかない・・・)


 なんでも昔は私たちとおなじ平民で、チェスの腕一本で伯爵まで成り上がった人らしい・・・

 しかも『ナイトの魔術師』っていう二つ名まで持ってるんだって。


 チェスの世界で『魔術師』って呼ばれるのは本当に大変な事なのよ。

 だってもし私が風の魔法を使って相手のキングを倒しても、それじゃダメだからね。

 だから本当の魔術師が、必ずしも盤上で魔術師になれるわけじゃない。

 (ていうか、そんなこと考えてる時点で全然だめだよね。)


 それで、そのすごい人がさっきの対局をものすごく気に入ってくれて、弟子にならないかって誘われたんだけど、それは丁寧にお断りした。

 だって、チェスもいいけど私はホンモノの魔法使いになりたいんだもん。

 これだけはね・・・あきらめられないよ。

 あ、これだけじゃなかった。ラルフお兄ちゃんのお嫁さんになるのもあきらめないもん!


 でも、私が断ったにもかかわらずケイマン伯爵はすごく親切だった。

 私が『貴族』に対して持っていた偏見が、ホントに申し訳なく思えてくるぐらい。(でもそれは、平民のほとんどが持ってる偏見なんだけど)


 弟子にはならなかったけどその日はグレイやデイジーと一緒にチェスを教えてもらった。

 私が理解するにはかなり難しいこともあったけど、こんなチャンス滅多にないから無駄にしたらもったいないもんね。

 その後、デイジーがすぐにでもリベンジマッチをやりたいなんて言い出したもんだから、さっきとは白黒を入れ替えて対局。


 ガチガチに緊張してたさっきとは打って変わってのびのびと指すデイジーに対して黒番が勉強不足だった私は大苦戦。

 でも超ピンチの局面から頑張った。

粘りに粘って一時は逆転。


・・・それで、ちょっとだけ有利にはなったものの、勝つには足りない感じで最後は52手まで指して合意の引き分けになった。

あとでお勉強するために、これはちゃんとノートにも残しておこうっと。

 うん。やっぱその日のうちに簡単にリベンジを許さなかったのは私としては上出来だ。

 でもデイジーとはこれからもいいライバル関係になれるような気がするわ。

挑戦はいつでも受けるから!

また一緒にチェスやろうね。


 さて、そして夜。

 チェスのイベントは終わったんだけど、お祭りは夜が本番だ。

 

 旧王城の南のメイン通りを中心に、たくさんの屋台なんかが並んでいる。

 いつもだったら夜のお出かけはパパが許してくれないんだけど、今日だけは特別。

 本当は昨日もその前もお祭りは始まってたんだけど、私はずっとチェスのお勉強ばっかりしてたから全然楽しめてなかったもんね。


 だからフタバとユリカと一緒に(いつものメンバーで!)、遊びに来ているのだった。

 さて、何をして遊ぼうか。

射的なんかは簡単にズルが出来ちゃう(私みたいな魔法使いがいるせいで)し、そのせいもあって賞品がすごくショボかったりする。

 要は、全員が商品を取ってもお店が儲かるようになってるってことだ。


 ただ、インチキ商売って言うわけじゃなくてズルをしないでも的がすごく大きくて簡単になってるから、みんなが思ってる射的よりも、もっとちっちゃい子向けって思ってもらったら間違いないと思うわ。

 それに外れた子にも結局あげてるし・・・。

 まあ、そんなんだから私たちはこれはパスね。


 ・・・と、あれなんだろ。風船花火?

 この国でもちょっと珍しい。

 シャボン玉の中に線香花火見たいのが入ってるって感じなんだけど、そのシャボン玉が割れないから不思議。


 魔法を使ってるのか、なんか仕掛けがあるのかは・・・何人かが店のおじさんに聞いたりしてたけど、内緒らしい。

 内緒と言われると気になるんだけど・・・。

 でも、これを買っちゃったらずっと手で持ってないとならないからこれもパスかな・・・。


 そうなると、私たちがすることと言ったら買い食い!ってことになる。

 そういえば、去年も同じパターンだったような気がするわ。

「何がいいかなぁ・・・」

 ちょっと目移りしちゃうけど、やっぱりお祭りの時しか食べられないものの方がいいよね。いつでも食べられるものじゃ面白くないもん。


「あたし綿菓子がいい!」

 と言い出したのは甘いもの大好きなフタバ。

 余談だけどこの子、甘いものをいくら食べても太ることがないからうらやましい。

 まあ、日々の厳しい稽古の賜物なんだろうけどね。


 私も模擬戦の一件以来、体力作りは続けてるけど、それでも運動量ではフタバには全然敵わない。

「ん~、私はごはんがまだだから焼きそばかなあ・・・」

 これはユリカ。


 じゃあ、私は・・・

「すもも飴!」

 すももの周りに水あめがかかってる、アレのこと。私はあれが大好物なんだ。

「じゃあ、別行動でそれぞれ買い物したらここに集まろ~!」

 フタバが言って、それぞれ目的のお店へ。


 すもも飴のお店は綿菓子や焼きそばのお店よりも数が少ないから、急いで探さないと、私だけ遅くなっちゃう!

 え?リンゴ飴で妥協?

 ダメダメ!あのすももの酸っぱさがいいんじゃん!

 私からすればお祭りとなったらこれは外せない。

 あっと、あのお店がそうかな?


「おじさん、すもも飴下さい!」

 私はお財布からお金を取り出す。


 あ、そうそう、みんな意外に思うかもしれないけど、私たちの世界にはお札があるんだよ。

 だって金貨とかって柔らかいから、持ち歩いてたらちょっとずつ削れちゃうもんね!

 だから、お札をいつでも好きな時に同じ価値の金と交換することが出来るようにすることでお札の価値を保っている。


 この仕組みを『金本位制』って言うんだよ。

 (これは4年生だとまだ習ってないんだけど、おこずかいとかを使ってると自然に覚える。つまり、これはこの世界では常識なんだよね。)

 1グラムの金と交換できるお札が1ゴールド紙幣で、だいたいランチ10回分ぐらいの価値がある。


 ちなみにすもも飴は、0.01ゴールド紙幣で3枚だ。

 私が品物を受け取ってお金を払おうとすると・・・。

「あ、この子の分は俺が払うからいいよ」

 そう言ったのは・・・あれ、全然知らない人。


「え・・・でも、知らない人から物をもらっちゃダメって言われてるし・・・」

 って断ろうと思ったんだけど、別の誰かが

「今日のヒロインが細かいこと気にすんな!」

 って言う。


 え?今日のヒロイン??

「じゃあ、俺はこれをやる!」

「それじゃあ俺はこいつだ!」

「なら、私はこれを!!」

 そんな感じで、あっという間に私の両手はお菓子でいっぱいになった。


 もうほんと、我先にって感じで私はちょっと途方に暮れた感じだったけど、すもも飴屋のおじさんが

「みんな税金が安くなったって感謝してるんだ。受け取ってやんなよ」

 って教えてくれた。そっか、昼間のチェスのことを言ってるんだ。


 もはや、誰が何をくれたのかも分からないような状態。

だから、もし私が返そうと思っても返すことはできないんだけどね。

 でもみんながこんなに喜んでくれてるって言うのはちょっとうれしいかな。

本当にすごいのは私じゃなくてケイマン伯爵なんだけどね。

 でも、こんなにお菓子を抱えてたらすもも飴を食べられないなあ・・・

次回の更新は明日11月27日(日)の予定です。

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