表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この覇王。~ゲーム世界に放り込まれたオタクの苦労~  作者: 港瀬つかさ
5章 参謀改め、覇王の親友

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/144

42

ミューちゃんパワーアップの可能性?

 オヤジもといアルノーから「キャラベル共和国が戦争の準備してるぞ☆」という報告があって、アーダルベルトが斥候を放ってから、更に数日。ワタシは本日、城内にあるラウラの研究室っぽい塔へと向かっている。そこは城の魔導士達が集まって、色々と日夜研究とか勉強とか魔法の改良とかしているらしい場所だ。一般人には立ち入り禁止で、入り口に結界魔法張られてるので、マジでリアルに立ち入り禁止区域である。

 なお、別に中で魔宴(サバト)をやってるとかではない。単純に、魔法系にしか解らない稀少物質とか置いてあったり、魔法薬の材料とか色々あって、一般人には意味不明かつ何かあったら危ないから、らしい。……塔の内部には、一部の「(トラップ)大好きなんです☆てへ♪」みたいな魔導士が仕掛けた、様々な魔法罠(マジックトラップ)があったりするので、余計にだ。



 ……ヲイ、非力なワタシと魔法適性低すぎるライナーさんを、そこに召喚するなら、迎えぐらい寄越せ、外見幼女(ロリババア)



 結界が発動しているせいで触れてもびくともしないドアの前で、ライナーさんと二人立ち尽くす。だって、どうしろって言うんですか。ワタシにもライナーさんにも、これを解除する手段なんて存在しませんぞ?来いって言ったのラウラのくせに、これじゃ中に入れないじゃんか!


「おやぁ?お客様ですかぁ~?」

「……ハイ?」


 妙にふわふわとした、天然ボケ系キャラに違いないと思わせる声が聞こえて、ワタシは頭上を見上げた。そこには、ドアの上にある2階の窓から、不思議そうにワタシ達を見ている女性の姿があった。……テンプレや。物凄いテンプレな、天然ボケ系お姉さんキャラがそこにおったで…!

 ゆったりと編んだ三つ編みお下げに、大きなレンズのずり落ちそうな眼鏡。魔導書なのか分厚い本を手にした女性は、ワタシと目が合うとにっこりと笑った。年齢不詳というか、ふわふわしすぎてて大人だったとしても何かこう、年齢聞きたくない系のお姉さんだった。いや、可愛いんだけどね。めっちゃ可愛いんだけどね!


「ラウラに呼ばれて来ましたけど」

「あぁ~、じゃあ、貴方がミュー様ですね~。素敵な黒髪黒目です~。ドア開けますから、待っててくださいね~」


 端的に答えたら、お姉さんは一人で超嬉しそうにしながら、くるりと背を向けた。その後、カンカンカンという駆け下りてくるみたいな足音が聞こえたので、ドアを開けるために降りてきてくれたのだろう。お手数おかけします。文句は全て、あのロリババアによろしくお願いします。呼び出しておきながら入れないドアのこと忘れてた、あの厨二病ロリババア(ラウラ)が悪いので!

 ガチャリと普通にドアが開いて、さっきのふわふわ系お姉さんがワタシ達を手招きしている。素直に従ったら、そのまま塔の中を案内してくれた。曰く、「うっかり魔法罠(マジックトラップ)発動させちゃったら危ないですから~」ってことらしい。のほほんとした顔と声で、空恐ろしいことを言わんでくれ、お姉ちゃんや……。

 連れて行かれたのは、塔の中腹にある部屋だった。ラウラの研究室その1らしい。その1ってのは、分野によって研究室を変えているからで、この研究室その1は、魔導具を作ってる場所、らしい?


「おぉ、やっと来おったか」

「何が来おったか、だ!ドアが開けられないで立ち往生してたから、このお姉さんに助けて貰ったわ、このロリババア!」

「……あぁ、すまぬ。そうであったな」


 ケロッとしているラウラの頭をぶん殴りたかったのですが、ロリババアとはいえ見た目は幼女。ここでぶん殴ったら客観的に見て幼児虐待になるんじゃ無いかと思うと、ギリギリしながらも殴れなかった。……ラウラなら、ワタシが殴ってもちゃんとダメージ通ると思うんですよ。魔法系の宿命で、こやつ、防御力が紙のようにぺらっぺらだったから。良い装備品つけてても、最終決戦の段階で、防御力がアーダルベルトの十分の一ぐらいだったから!

 ……いやまぁ、覇王様が圧倒的なまでの防御力を誇ってらっしゃったのは、事実ですが。そりゃそうじゃん。獅子の獣人(ベスティ)ですぜ?身体能力特化型種族の、さらに戦闘方面特化じゃね?とか言われちゃう獅子の、その中でも特に優秀とか言われちゃってる御方ですぜ?雑魚の攻撃どころか、ボスの攻撃も下手したら殆ど通らんわ。もはやヤツが最終兵器(ラスボス)様だ。


「で、ワタシを呼び出して何の用事?」

「うむ。お主にちょっとぐらい戦闘力を付加出来んかと思ってのぉ」

「出来んの!?」


 思わず食い気味で叫んでしまいました、すみません。いやでも、ほら、ワタシむっちゃ非力じゃないですか?んでもって、先日ウォール王国の一件で、ついうっかり刺客なんぞに襲われちゃったじゃないですか?しかもその報告聞いた覇王様が、《うっかり力加減を間違えて》執務机さんを粉砕しちゃったじゃないですか?……ワタシ、自衛手段を確保しておかないと、アーダルベルトに無駄に心配かけるんじゃね?と思ったわけですよ。

 とはいえ、運動神経が鈍いというか、ギリギリ繋がってるんだろうな☆みたいなレベルのワタシに、武術を習うことなんて不可能です。付け焼き刃もいいところだ。下手したら自分の持ってる武器で怪我するわ。乗馬は必須科目と言われて、とりあえず何とか、一般レベルにまでは漕ぎ着けましたけどな。それも、気長に付き合ってくれたウサギ獣人のお姉さんのおかげです。今度改めてお礼に行こう。シュテファンお手製の異世界スイーツ持って。


「世の中には、お主のように高い魔力を持ちながらも魔法の適性が無く、宝の持ち腐れのようなヒトが多くてのぉ」

「多いのかよ」

「決して少なくはないな。……それで、じゃ。そういった者達の魔力を有効活用するべく、魔導具の開発に専念しておる」


 にっこり笑顔のラウラ。……あー、見た目だけはマジでロリコンホイホイ(ようじょ)で、しかも将来的に絶世の美女になるに違いない!っていう美形パーツしてるだけはあるわー。中身を知らなかったら、その笑顔で色々とイチコロだろう。目の保養的な。……中身を知っているワタシには、割とどうでも良いがな。


「台所で料理番達が使っておる火種もワシらの発明じゃぞ」

「あ、あの超便利そうなコンロ、ラウラ達が作ったんだ?早くもっと一般に普及できるように改良したげて」

「原材料と開発にかかる労力で、量産はまだ出来んのじゃ」

「早よ頑張れ。世のお母さんのために」

 

 ラウラの頭を撫でくり撫でくりしながら告げたら、やれやれと言いたげな顔で見られた。……ちっ、このロリババアめ。外見だけならば愛らしい幼女だというのに、中身はババアだし、厨二病拗らせてるしで、ちっとも愛らしくねーわ。つーか、これと旅してたとか、本当にアーダルベルトは偉大だ。魔法代表がロリババアで、物理代表がオヤジとか、10代の皇太子様のパーティーとして寂しすぎね?

 

「それで、じゃ。実戦でも活用できそうな魔導具の開発にも取り組んでおってな」

「ほぉ?それはつまり、攻撃魔法が撃てちゃったりするん?」

「今作っておるのは、遠方に爆発魔法を放つ魔導具じゃ。で、ミュー殿それの試運転に付き合ってくれんか?」

「何でまたワタシ?」

「魔力はあれど魔法が使えない、という存在に使えるかどうかが重要じゃろう?」

「あー、まぁね。ラウラの周辺だと、皆さん魔法使えるモンな」

「うむ」


 それ言っちゃうと、多少とは言えライナーさんとかにも魔法の適性はあるわけだし、使ってみたら案外あっさり魔導具起動出来ちゃうんだろうか。当人は補助魔法ぐらいしか使えないって言ってたけど、魔法が使えるってだけで、ワタシよりは遙かにアドバンテージあるよね。

 んでもって、ラウラ達の最終目標は、魔法の使えないヒトでも使える魔導具を作ることだから、協力者(モニター)はワタシが最適と言うことか。……うむ、労働するのは好きじゃないが、これは明らかにワタシに戻ってくる感じなので、頑張ろう。これで魔導具の開発が上手くいったら、ワタシも武器を所持するに等しい状況になるわけだ。



 つーか、魔導具使えたら、疑似魔法ヒャッハーが出来るってことですからね!



 よーし、ラウラ!ワタシ、魔力の含有量《だけ》は高いと太鼓判貰ってるから、頑張っちゃうよ!自分のステータスとか見れないので非常に困るが、つまるところ、魔法使えない物理系のくせに、MP(マジックパワー)がやたら滅多高いとかそういうタイプなんだろ?……つ、使えないとか、言わないでくれ!

 目をキラキラしているだろうワタシの背中に、微笑ましげな視線が突き刺さってますが、振り返ったりなどせぬ!その視線の主が誰かなど、ワタシには解っている。ライナーさんです。ライナーさんが、「非力なワタシも武装できる?!憧れの魔法使えちゃったりするの!?」とwktkしているワタシを、実に微笑ましそうに、まるでお父さんのように見守ってくれてるだけです!いつものことだから、もう細かいことは気にせぬのだ!


「まぁ、ぶっちゃけお主に必要なのは攻撃ではなく防御方面じゃろうとは思っておるが」

「えー……」

「ただ、結界系は自然発動(オートモード)にするのが難しくてのぉ。仕方ないので、任意発動の魔導具はアミュレット系として売り出されておるが……」

「あー、確かに、結界とか防御とかは、オートの方が良いよね。頑張って開発して。あと、既に売ってるんだ?」

「何を言っておる。お主が付けておるそのイヤリングがそうじゃ」

「…………ただの護符(アミュレット)だと思ってたよ!任意発動が必要な魔導具なら、使い方説明しとけよ!」


 不思議そうな顔をしたラウラの頭を、すぱーんと叩いておいた。

 いやだって、叩いても良くね?ワタシ、ゲーム知識の延長で、アミュレットって言われたから、付けてると防御力が上がる系のアイテムだとしか認識してないもん!このイヤリングが、実は任意発動の魔導具だとか、誰も教えてくれなかったよ!?

 ライナーさん、知ってました?!あ、瞬きしてるって事は、知らなかったんですね。よし、なら悪いのはラウラです。頭ぐりぐりしちゃる。


「こりゃ、ミュー殿、ヒトの頭を押さえつけるでない。帽子が凹むであろう」

「煩い。そんな厨二病拗らせた魔女帽子なんぞ、凹んだところで誰も困らん。むしろ、ワタシにアミュレットの説明してなかったお前が悪いわ!」


 そう、ラウラが悪い。だって、このイヤリング、ワタシちゃんと肌身離さず(お風呂と寝るときは外してるけど)身につけてるんですぜ?つまり、この間ウォール王国の刺客に襲われた時だって、ちゃんと装着してたんだ。お洒落じゃ無くて、防具として。それなのに、使い方教えて貰ってないから、全然役に立たなかった!

 しかも、問い詰めたらこれ、任意発動の攻撃結界が封じられてるとか言うじゃないですか!防御するだけじゃ無く、敵意を向けてきた相手の攻撃をはじき返す能力まで持ってる、要人警護にばっちりな魔法が封じられてたんですよ!?それなのに、ワタシもライナーさんもエーレンフリートもそれを知らなかったとか、どういうことじゃ!このロリババア、マジでちゃんと仕事しろよな!?



 その後、イヤリングに封じ込められてる任意発動の攻撃結界を起動することが出来たので、ワタシ、魔導具は使えるようです。マル。



実はちゃんと魔導具装備してたことにようやっと気づいたミューちゃんでした。

ただし、任意発動なので、彼女が発動を命じなければ意味が無いという…。

ラウラ、殴られても文句言われないよ。

次話、ちょびっとシリアスになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字脱字報告は、ページ下部の専用箇所をご利用下さい。(明確な誤字脱字のみ反映します)

lj0ckmqe5sj317f2bciyf3la82ir_yns_is_rs_7
双葉社Mノベルス様より書籍版全4巻発売中。

ヒトこのコミカライズ、「がうがうモンスター」で連載中。コミックス1~3巻発売中。4巻11月15日発売。
「ヒトを勝手に~番外編」番外編やってます。

cont_access.php?citi_cont_id=445315341&s最強の鑑定士って誰のこと?~満腹ごはんで異世界生活~
こんなんも書いています。書籍化もしてます。よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ