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ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この覇王。~ゲーム世界に放り込まれたオタクの苦労~  作者: 港瀬つかさ
14章 お姫様達とお泊まり会

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前回よりは短いスパンで投稿出来たぞ!の気持ち。


「それで? 女子会をするというのは、何でそうなったんだ?」

「何でと言われても……。ノーラちゃんばっかりワタシと過ごしているのがずるいってことらしいよ。良くわからんけど」

「そうきたか」


 お泊まり会もとい女子会の許可を取るために覇王様に話を通したところ、何でそうなったんだという反応をされてしまった。ちなみにこれは、ワタシが彼の妹たちに気に入られているのがわからないというわけではない。

 この色々と情緒ポンコツな皇帝陛下は、プライベートでそんな風にわちゃわちゃ過ごすというのがさっぱりわかっていないのだ。人間として色々欠けている。

 お友達がいないので、お友達と特に何も用事なく一緒にたむろしてしゃべるみたいな経験がないのだ。だから、お泊まり会とか女子会とかいうことを説明しても「何でそうなるんだ?」という発想になるらしい。何というかこう、周りに人がいるのに人付き合い下手だなぁと思ってしまう

 いやまぁ、仕方ないのかもしれないけど。彼は、子供の頃から割となんでもしっかりできてしまった。その上、皇太子殿下なので周囲が一線を引いていたのだろう。何せ、妹のクラウディアさんですらアレである。何で実の妹から、忠義全振りみたいな感情を向けられるんだろう。

 そもそも、ワタシはこの世界にきて数年経つけど、アーダルベルトの同年代の友達みたいなのにも会ったことがない。百歩譲って元パーティーメンバーは気さくだが、やっぱりどこかに相手は王族っていうのがあるのかもしれない。全然見えないけど。その辺は当人たちの問題だろうけど。ただ少なくとも、今の彼らはアーダルベルトに仕える部下なわけで、プライベートでどんちゃん騒ぎをするような関係ではないんだろう。

 そもそも、お仕事が忙しい皇帝陛下である。プライベートでどんちゃん騒ぎをするという発想がない気がする。やればいいのになぁ。ワタシが美味しいものを食べてるときに強奪するぐらいなら、気心しれた誰かとおしゃべりすればいいのに。

 ワタシはそんな風に思うわけだが、前にこの手の話題を周囲に振ったときに、何というかこう、ものすごく微妙な顔をされたのを覚えている。

 なお、話題を振った相手は、ワタシの護衛を担当してくれているライナーさんである。

 ライナーさんは何だかんだでアーダルベルトとの付き合いは長くて、彼の生活がどういう感じだったかを色々理解しているようだ。ついでに、人間として色々ポンコツであるという部分もちゃんと理解しているので、そっと目をそらされてしまったのだ。

 敬愛する皇帝陛下が相手なのであんまりなことは言えないという気持ちはあるようだが、それでもフォローしきれないあれこれがある、というのがそれだけで伝わってきた。滅私奉公の皇帝陛下というのも困ったもんである。

 まあ、初めてできた友達がワタシらしいので、ワタシにちょっかいをかけてくる分に関しては、もろもろ仕方ないとは思っている。思っているが、女子会が通じなかったのは何とも言えない気持ちである。親しい人たちと特に何の意味もなくわちゃわちゃしたいというだけの、本当に単純にそれだけのことなのだけれど、それが心底わからないみたいな顔をしている覇王様には、どう突っ込めばいいのやらと思う。

 まあ突っ込んでも無駄なので、ワタシはステファンが用意してくれた今日のおやつを食べるのみである。

 暢気におやつにするなと言われそうだけど、とりあえず話は通したし、女子会の許可はこれなら下りるだろうという気持ちもあるので、一仕事を終えた心持ちなのだ。許可が下りる理由? そんなものは簡単だ。この男は何だかんだで兄バカなのである。全ての兄バカの見本みたいな男で、弟妹は全部可愛いと思っている男という認識で間違ってない。

 そんな、あきれ返るほどに兄バカな覇王様なので、この程度の我が儘は周りが何か言ってこようものなら、圧をかけて押しつぶす程度の過保護さは存在している。それに、どこか遠出をするとか、危ない場所へ行くとかでもない。自分のテリトリーであるお城にやってきて、それもややこしい表舞台に立つとかでもなく、ワタシと奥に引っ込んでお泊まり会でわちゃわちゃするというだけである。

 ついでにそこに真綾さんも混ぜるというだけで、妹たちにベタ甘のこの男が反対する理由がどこにもない。そもそもワタシは、一応念のためにと報告と確認をしただけである。報連相って大事だよね。

 まあ、そんなわけなので、ワタシはおやつを楽しむのだ。今日シュテファンが用意してくれたのは、あんバタートーストである。

 普通のトーストを半分に切って、長方形に仕上げてある。これは、この方が食べやすいだろうという配慮だ。焼いたトーストに薄くあんこを塗ってある。ちなみにこのあんこは、食感を楽しめる粒あんだ。その上に薄く切ったバターがぺたりと乗せられているものだ。

 バタートーストの上にあんこを乗せるのでは、また趣が違う。また、あんこの上に、塊のバターがぽつんと置かれているのでも、味わいが異なる。「あんことバターを同時にパンと楽しみたいんだよ」というワタシの訴えを聞いたシュテファンは、「それじゃあ、こういう感じでどうですか?」と最適解なあんバタートーストを出してくれたのだ。うちのシュテファン、優秀すぎる。最高。

 大きく口を開けてあんバタートーストをかじる。カリカリに焼かれたトーストのザクッと食感が良い。その上に、メインの味として存在するつぶあんの優しい甘みが何とも言えない。そして、そこに最後の仕上げと言わんばかりに伝わるバターの旨味と塩味。最高のコンボである。

 普通のバタートーストも美味しいし、あんパン的なのも美味しい。でもあんバターには、また別の何とも言えない味わいがあるのだ。あんバターという組み合わせを考えた人は最高だと思う。魔改造民族、日本人万歳。美味しいご飯万歳。

 ちなみにシュテファンはとてもいい子なので、単に細長くしただけでなく、トーストの厚みはほどほどに調整されている。上に具材が乗るので、あんまり分厚いと食べにくいだろうということらしい。イメージ的に、五枚切りと六枚切りの間ぐらいの厚みだろうか。実に良くわかっている。

 これが、八枚切りとか十枚切りになったら、薄っぺらすぎてトーストを食べている実感がない。かといって、四枚切りではあまりにも分厚すぎて食べるのにひと苦労だ。四枚切りは、あれはあれでバターをたっぷり染みこませたバタートーストにすると実に美味しいのだけれどね。

 そういえば、トーストの四枚切りって関西にしかないんだっけ? 関東の人たちは四枚切りの食パンの存在を知らないらしい、というのをテレビで見たときに、食文化の違いってそんなとこにもあるんだなぁと思った。

 ちなみにワタシは、四枚切りの食パンも、五枚切り、六枚切りの食パンも美味しく食べる。八枚切りや十枚切り、十二枚切りなどはサンドイッチとかにして、それはそれで美味しくいただく所存である。どれも違って全部いいと思う。

 問題があるとしたら、自分が食べたいときに欲しい厚みのものがないと悲しくなるだけである。今はシュテファンが常に最適解のパンを用意してくれるので、大変助かっている。シュテファン、やっぱり優秀。ワタシ、これからもシュテファンと一緒に生きていく。

 ちなみに、ワタシの隣でアーダルベルトもあんバタートーストを食べている。こちらは通常の食パン、四角いあの食パンのままでバクバクと食べている。相変わらず口がでかい。なんだろうこいつの一口、いろいろと突っ込みたい。

 ……というか、シュテファンはトーストとあんことバターのバランスを考えて、最適解になるように考えて作ってくれているんだ。それを、一口二口でバクバクと食べるのはどういう了見だろう。ちょっと腹が立ったので、ツッコミを入れることにした。


「アディ、もうちょっと味わって食べろ」

「味わっているが?」

「食べるのが早いのはわかるよ。でも、このあんバタートーストは、ステファンがパンの厚みもあんこの量もバターの量もちゃんと考えて、美味しく食べられるようにと一生懸命作ってくれたおやつなんだよ? そんな風に、ひょいぱくひょいぱく食べるようなもんじゃないの。それに、あんこの甘さとバターの塩っぱさ、トーストのサクサクした食感をしっかり味わって食べるべきものでしょ!」

 

 そう力説したワタシを、アーダルベルトは何だかとても残念なものを見るような目で見ていた。なんだ、その目は。誰が残念だ。確かにワタシはポンコツではあるが、美味しい食べ物について力説して何が悪い!


「いや、前から思っていたんだが……。お前、本当に食べ物に関してこだわりが強すぎないか?」

「別にこだわってるわけじゃないよ。美味しいものはちゃんと美味しく食べたいし、美味しく作ってくれた人に感謝して食べようと思ってるだけだよ」

「……」

 

 嘘偽りのない本心を伝えたら、一応は納得してくれたのだろうか。それでも、まだ若干すごく残念な子を見るような顔で見られた。

 なお、なぜか室内にいた他の三人、ライナーさん、エーレンフリート、ユリアーネちゃんからも同じような視線を感じた。解せぬ。

 ワタシは、切々と食べることがどれほど大切か、美味しいものを作るのがどれほど大変か、それを食べさせてもらえることがどれほどありがたいかを、彼らに訴えた。訴えたのだが、訴えれば訴えるほどに、「いや……、でもそこまでこだわらなくても……」みたいな反応が返ってくる。何てこった。我々の間には盛大な温度差がある。

 こんなに美味しいあんバタートーストなんだから、ちゃんと美味しく味わって食べてくれと言いたいだけなのに!

 ちなみに、おやつタイムには強制参加の近衛兵ズとユリアーネちゃんも、ちゃんとあんバタートーストは食べている。近衛兵ズはアディと一緒で、四角い普通サイズの食パン。ユリアーネちゃんはワタシと一緒で、長方形タイプの食パン。

 一応彼らも美味しいと思って食べてくれてはいるようだし、大口でバクバク食べる覇王様ほど一瞬で消えるような食べ方はしていない。なので、ワタシとしては彼らには味わって食べるが通じていると思っていたのだ。なのに、なぜかワタシが力説すればするほどに、全然通じなくなっていくのはどうしてだろう。わからない。

 

「お前の故郷は何かこう、食べ物に関して辛い経験でもある国なのか?」

「何の話??」


 辛い経験などない。我が祖国日本は、美食の国である。美食というか、お高いものから庶民飯、ついでに言えば、防災などの備蓄用のご飯に至るまで、何もかもがきちんと普通に美味しい国である。

 そもそも、まずいものは見向きもされない。食べるということは幸せということだ。幸せを感じるためには、美味しくなければいけない。そういう意味で、我が故郷の食べ物は何でもだいたい美味しいし、辛い思い出などない。

 言われている意味がわからないので、ワタシは小首を傾げる。それを見た覇王様は、こう宣った。


「いや、前から思っていたが、あまりにも食べ物に対する執着が強いのでな」

「別に執着が特別強いわけじゃないよ。確かに食いしん坊だけど」

「お前のそれで特別ではないのか?」

「うん」


 ワタシは素直にうなずいた。

 食べ物に対して特別こだわりが強いというのは、例えば原材料にまでこだわりを見せる人とか、特定の分野に関して極める勢いでその情報を知っているマニアみたいな人とかだ。つまりは、作り方、材料、食べ方、ありとあらゆるものに強烈なこだわりを見せるような人たちだと思う。

 そういうのに比べたら、ワタシはただの美味しいものを美味しく食べたいと思っているだけだ。嘘は言っていない。

 嘘は言っていないのに、なぜか四人の目線がものすごく変なものを見る感じになった。何で……? ワタシ、今までもこんな感じで、美味しいものは美味しいでしか生きてないのに……!


「いや、改めて考えると、人種の違いみたいなものがあるなと思っただけだ」


 何てこった。人種の違い扱いされた。

 いや、確かに人種は違うのだ。彼らは獣人(ベスティ)であって、人間であるワタシと人種は違う。けれど何だか、今口にされたのはそういう次元じゃない気がする。根本的な価値観もろもろが違う、何か別の生き物ぐらいの認定をされた。

 解せぬ。あまりにも解せなかったので真綾さんに愚痴ったら、ニコニコ笑顔で「世界的に見ても、食べているときが一番幸せと考えるのは日本人ぐらいらしいわよ」というコメントをいただいてしまい、あまりの現実に悲しくなった。何てこった。元の世界でも我々はちょっぴり異質だったらしい。辛い。

 

 

 

日本人は地球でも珍しいタイプの人種らしいので、異世界でも多分珍しいタイプなんでしょう。多分。

ご意見、ご感想、お待ちしております。

なお、感想返信は基本「読んだよ!」のご挨拶だけですが、余力のあるときに時々個別でお返事もします。全部ありがたく読ませて頂いております!

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う~む 美味しいご飯はみんな幸せを噛み締めるものだと 当然のように考えてましたが、違うんですねぇ
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