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ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この覇王。~ゲーム世界に放り込まれたオタクの苦労~  作者: 港瀬つかさ
10章 皇妹と学園都市とジョーカー

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覇王様の妹ちゃんは愉快です。

たぶん。


「あのー、つまり、ライナーさんはワタシに勿体ないってことで良いのでしょうか?」

「ミュー?」

「え?そういうことじゃないの?ライナーさんは、ワタシの隣より、アディの側にエーレンフリートと一緒にいる方がぴったりっていう」

「ミュー様、俺の存在意義を奪わないでください。専属護衛なんですが」

「うん、知ってる。お世話になっております」


 片手を上げてワタシが発言すると、アーダルベルトは不思議そうにこっちを見てきた。エレオノーラ嬢は、驚いたような顔でワタシを見ている。そして、ライナーさんがワタシにツッコミを入れてきた。大丈夫です。別に貴方の仕事を奪いたいわけじゃ無いです。

 ワタシはじーっとエレオノーラ嬢を見る。驚いたように目を見開いていた彼女が、次に、信じられないモノを見るかのようにワタシを見てくる。ほむほむ。何かこう、うん、そんな気配がすっごいするなーと思ってカマかけたら、ちゃんと引っかかってくれた感じですかね?っていうか、マジかよと言いたいのはワタシの方だ。なんてこったいの世界だ。

 しばらく硬直していたエレオノーラ嬢は、次の瞬間がしっとワタシの手を握ってきた。その顔が、キラキラと輝いている。凄い勢いで輝いている。


「お解りいただけますか?」

「いただけます」

「ミュー様……っ!」

「うぉ?!」

「……エレオノーラ、何をしている」


 感極まったように抱きついてくるエレオノーラ嬢に驚いた。あと、すみませんが、力強いっす、お姫様。貴方獣人(ベスティ)なんで、あの、非力な人間のワタシ相手の力加減をどうか、覚えてくださ、……イダダダダダ!痛い、ちょ、マジで痛いって!ぎゅうぎゅう締め付けられて、背骨が軋んでる気がするんですけど!誰か、誰か、っていうか、アーダルベルト、ヘルプぅうう!

 視線で必死に訴えたら、胡乱げな顔で妹を見ていたアーダルベルトが、べりっと彼女を引っぺがしてくれた。うぅ、ありがとう、相棒。流石に皇女様相手だと、近衛兵ズじゃ無理ですもんね。あと、エレオノーラ嬢、詳しい話はまた後日。二人で楽しみましょうな?


「申し訳ございません。つい、感情が昂ぶってしまって……」

「いえいえ、大丈夫です。とりあえず、その話はまた後日ということで」

「はい」


 穏やかに微笑むエレオノーラ嬢は大変麗しかったので、眼福だなぁと思いました。……その眼福な美少女が、どう考えても同類だと解ったのは何とも微妙な気分ですが。まぁ良い。こっちの世界にも仲間がいたと思えば、それはそれで楽しい。うん。


「ですが、それとは別に、ミュー様には女性の護衛騎士の方が、色々と不都合が無いのではありませんか?」

「アディ、そういうもん?」

「まぁ、同性の方が色々やりやすいのはあるが、お前の側に置ける女性騎士なんぞおらん」

「お前な」

「アーダルベルト兄様、心配には及びませんわ」

「……あ?」


 相変わらずな相棒にツッコミを入れるワタシであるが、顔を輝かせたエレオノーラ嬢の発言は気になったので視線をそちらに向けた。アーダルベルトは、物凄く胡乱そうな顔で彼女を見ていた。お前何を言い出すつもりだ、ぐらいの顔だった。覇王様は妹相手に色々アレだと思う。何この兄妹。

 そんなワタシの心のツッコミは届くことはなく、エレオノーラ嬢はすっと自分の背後に控えていた人物へと掌を向けた。ぺこりと頭を下げてくるその人は、大変美しい人物だった。すらりとした、抜き身の剣みたいな気配を纏った人だ。詰め襟の軍服めいた騎士服を着ているが、多分女の人なんだろう。凜々しい面差しだけど、随所随所に丸みがある。

 白に近い灰色の髪に、青みがかった灰色の瞳が印象的だった。肌も白い。黒を基調とした軍服が、素晴らしくお似合いだ。身長はエレオノーラ嬢よりも頭一つ分は高いので、女性にしては随分と背が高い。動作一つ一つにも隙が無くて、まさに騎士という感じだ。

 ……なんて言うか、リアル宝塚みたいな感じのお姉さんだな。格好良すぎるぞ。目の保養万歳ー。


「……クラウか」

「お久しぶりです、陛下。もしもお許しがいただけるならば、私がミュー様の護衛をと思っております」

「却下だ」

「私の技量では、足りぬということでしょうか?」

「お前の力量は知っている。ライナーに劣らぬであろうことも。だが、お前にミューの護衛を任せるわけにはいかん」

「何故ですか?」


 淡々と、ハスキーボイスで問い掛ける男装の麗人。きびきびした所作が大変格好良いですね。眼福眼福。……っていうか、何でこのお姉さん、ワタシの護衛にこだわってんの?ワタシ別に、ライナーさんでえぇねんけど。気心知れてるし。

 延々と続く押し問答に飽きたのか、アーダルベルトがバンッと執務机を叩いた。一応手加減はしてあるのだろう。執務机さんは無事だった。

 そして。


「そもそも、お前は護衛される側(・・・・・・)だろうが、クラウディア!」

「その呼び名は好きではありません。私のことはクラウとお呼びください、陛下」

「いい加減にしろ。己の立場を考えろ」

「私の立場など……。私は陛下のお役に立つのが望みであるだけです。陛下が誰より大切にされているご友人ならば、私の命に代えてもお守りしたいと願って、何が悪いのですか?」

「どこの国に、自ら要人警護を買って出る皇妹がいるんだ、阿呆!」

「ここにおります、兄上」

「開き直るな!」


 コントみたいなやりとりを繰り広げるアーダルベルトとクラウディア?さん。何が起きてるのか全然解らないんだけど、今、凄い情報ぶっ込まれたような気がします。ちょいちょいとライナーさんを手招きして説明を求める。というのも、エレオノーラ嬢はにこにこ笑ってそんな二人のやりとりを見ているからだ。アンタ結構強いな、皇女様……。

 ワタシの考えを察してくれたのか、ライナーさんはそっと耳打ちで情報を与えてくれた。というか、耳打ちで無くても別に誰にも聞こえない気がする。目の前で覇王様と男装の麗人が言い争いをしているから。


「あちらの男装の女性は、クラウディア様と仰います。陛下の同母の妹君で、ご幼少のみぎりより剣術に秀でておられました。また、母君から魔法の才能も受け継いでおられ、真っ向勝負をすれば俺やエレンでも勝てないかも知れません」

「……色々ぶっ込まれてパンクしそうなんですけど、あの、あちら、皇女様……?」

「はい。先帝陛下の第三子、第一皇女であらせられた、皇妹のクラウディア殿下であらせられます」

「………………あいつの弟妹は変なのしか居ないの!?」


 思わず叫んでしまったけど、多分ワタシは悪くない。悪くないったら、悪くない!

 いやだって、よく考えてよ?アーダルベルトには弟が一人と妹が三人いて、そのうち弟と妹の一人は同母、妹二人は異母という感じ。そのうちの三人の情報が出そろったわけですが、どいつもこいつもマトモじゃないんですけど!どういうことだってば!

 まず、弟。

 テオドールくんは、ただのおバカです。外見だけはアーダルベルトに良く似た赤毛の獅子ですが、アレはただのバカです。大バカです。異論は認めない。認めないったら認めない。通算五回もクーデター企てる弟なんぞ、バカで十分だ!

 んで、妹その1。

 クラウディアさんは、男装の麗人さん。剣術も魔法もお得意とか、ハイスペックですね。色彩が白っぽいのは母君譲りなのでしょうか。とりあえず、何で御自らワタシの身辺警護買って出ようとしてるんですか。変人ですか?

 そして、妹その2。

 エレオノーラ嬢は、多分、他の方が見たら普通の美少女だと思います。所作も美しいし、笑顔の素敵な美少女であります。……しかし彼女、どう考えても中身がワタシの同類である。同胞の気配しか感じないのである。皇女様なのに腐っているようなのである。多分、これが一番残念ではなかろうか?

 ……ラストワンの末姫殿が、マトモなお姫様であることを願いたい。だって、弟妹が色々個性炸裂過ぎて、覇王様が流石に不憫。今もクラウディアさんと口論してるし。何で護衛されるべき皇族が警護役に名乗り上げてんのか意味解らない。


「末の姫君は、どんな方ですか……」

「ハンネローレ様は、植物の育成がお好きな内向的な姫君ですよ。裁縫がお得意で、刺繍やレース編みが大変お上手と聞いております」

「……あの辺よりはマトモですか?」

「…………ミュー様、返答に困ることを聞かないでください」

「サーセン」


 しみじみとため息をつきながらライナーさんに言われてしまったので、素直に謝りました。ごめんなさい。いやだって、気になってしまって。兄姉がこのラインナップで、その末の姫君マトモに育ってるのか心配になったんだよ。下手したらすぐ上の同母の姉ちゃんに毒されてないかなっていう意味も含めて。

 そんなワタシとライナーさんのやりとりが終わった頃に、眼前の兄妹喧嘩?も終わったらしい。不満そうな顔をしているクラウディアさんと、呆れモードな覇王様。……あー、とりあえず、覇王様の言い分が通った感じかな?良かったな、アーダルベルト。お疲れさん。


「……ミュー、これも妹だ。クラウディアという」

「ミュー様、お初にお目にかかります。こうしてお会いできて嬉しく思います。……いつも兄上を、陛下をお助け下さり、ありがとうございます」

「あ、いえ、こちらこそ。ワタシは特に何もしておりませんが」

「とんでもない。特に、あの愚兄を退けて下さったことについては、感謝してもし足りません。本当に、本当にありがとうございます」

「……あ、はい」


 素晴らしい笑顔で言い切るクラウディアさんですが、笑顔が怖いっす。目が怖い。何?愚兄って、テオドールのことだよね?貴方もしかして、テオドールのこと嫌いですか?ワタシもあいつは嫌いですけど、何かこう、ワタシ以上に剥き出しの嫌悪感とかダダ漏れなんですけど、皇妹殿下ぁあああ?!


「クラウは昔からテオドールが嫌いでな……」

「マジかよ……。同母の兄妹なのに仲悪いのか……」

「兄上、嫌いなどと生温い。私はあの愚兄を疎んでいるのです。憎んでいると言っても過言ではありません。……まったく、己の立場も弁えず身の程知らずな愚物め。いっそ私のこの手で引導を渡してくれようか」

「やめんか」

「何このお姫様超絶物騒」


 クール系の男装の麗人に見せかけて、内面が物凄く沸点が低いお姉さんだった。真面目に怖いんだけど、クラウディアさん?貴方どこまでテオドール嫌いなんですか?!


「こいつは昔から俺贔屓でな。その反動で、テオドールに手厳しいんだ」

「なるほど」

「兄上、私は贔屓などしておりません。正当な評価を下しているだけです。幼少時より皇族としての務めを果たしてこられた兄上と、己の身も弁えぬ愚物を比べるなど失礼ではありませんか」

「そこはせめて愚兄にしてやれ」

「あんなもの愚物で十分です」


 きっぱりはっきり言い切るクラウディアさん。その目には迷いが無かった。迷いが一切無かった。同母の兄に対して容赦がなかった。年齢が近いせいで、余計にイライラしてたんだろうか。綺麗な顔が怖いです、お姉さん。


「……と、まぁ、こういう感じで、俺贔屓だ」

「オッケー、了解した。ブラコンっつーより、忠誠心抉らせみたいな妹さんだな、ヲイ」

「……言うな」


 というか、弟には敵愾心向けられて、妹にはマックス極振りな忠誠心向けられてるとか、どんだけですか。個性炸裂すぎんだろ、ガエリアの皇族!!!




 色々と脱線したけど何とか協力を取り付けて、後日ワタシは学園都市ケリティスに向かうことになりました。……腐女子の皇女様の案内で!




 

誰が、妹が一人しか来ないと言った?←

末の姫君がマトモであることを祈ろう。

覇王様の弟妹は愉快です←ヲイ

ご意見、ご感想、お待ちしております。


※地味にしれっとお月様に出没してますが、何でも許せる方のみお探しください?|∀・)+

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ヒトこのコミカライズ、「がうがうモンスター」で連載中。コミックス1~3巻発売中。4巻11月15日発売。
「ヒトを勝手に~番外編」番外編やってます。

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こんなんも書いています。書籍化もしてます。よろしくお願いします。
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