6話
お待たせしました。
生産系の人達を大量に勧誘していく。色々な国の人で困っている人を集めては助けて、あちらの世界へとギフトを与えて送り込んだ。島は順調に開拓されているす。料理人が増えたので、レトルトの食事を届ける必要は無く、調味料や米などになった。それに畑も作ってくれたので素材はましだ。大工の人も集めただけあって、充分に街と呼べる規模になった。クエストアプリで確認すると完了の数が増えている。
≪チュートリアルクエスト≫
①拠点を確保する。(完了)
②人口を増やす。(完了)
③眷属を手に入れる。(完了)
④モンスターを倒す。(完了)
全てのクエストを完了しました。報酬が受け取れます。報酬は任意のギフトを一つ入手できます。
≪オラクルクエスト≫
①港を手に入れて使えるようにする。(1/2)
②街を作る。(完了)
③島の支配権を手に入れる。
どうやら、報酬が受け取れるようなので受け取る。任意のギフトという事でスキル作成を選択する。これで、色んな人にスキルを与えられる事が出来る。取り敢えず、これはその人の才能をスキルという形に昇華させ、育ちやすく出来るようにするようだ。また、行った行動によって溜まった経験値をスキルを付与する事もできる。これでより、ゲームらしくなった。
「っと、仕事しないと」
パソコンに向かってイラストレーターの仕事を開始する。ご飯はカップ焼きそば。偶に食べたくなるんだよな。綺麗なイラスト20枚を30分で仕上げて、ふと思った事がある。アニメを作ったら、売れるんじゃないかと。既に俺の書いたイラストは一級品のような感じだ。絵を書けばコンクールに入賞して金賞を総なめにするほどだ。実際、書いて出してみた事がある。取材や外に出るのは拒否したので姿はバレていない。
「えっと、アニメの作り方は……これですね」
ネットで検索してアニメの作り方を調べながら、徹底的に書き上げていく。しかし、これはネットの中で作った方が速いので絵と音楽を同時に作っていく。問題は声だ。まあ、これは何人かのプレイヤーにオファーを出して、作り上げよう。いや、声はどうにかしてみせよう。
二時間かけて、自分の声を加工して、色々な声にした。梓や金剛さん、亀山さん達の声も使わせて貰って、それで音声ソフトを作成して作り上げた。PV用のアニメ。それをアストライア貿易機構のHPで載せる。
「ふぅ、これで完成ですね。っと、メールですか……これ、プライベート用?」
メールアプリから、見るとどうやら家族からだった。この頃、電話すら出ずにメールとか掲示板アプリばっかりだ。内容が気になったので、開けようとしたらチャイムが鳴った。おそらく、宅配便だろう。編集さんが資料を送って来たリもするし、イラストレーターとして参加した本を貰ったりもする。たぶん、それだろう。
玄関に向かい、何も気にせずにドアを開ける。すると、宅配業者ではなくて、見覚えある女の子が居た。今の俺と同じような姿の幼い少女は不思議そうに首をかしげる。
「かりん、どうした?」
「えっと、知らない女の子が出てきたのです……」
「ん? 君は誰ですか?」
女の子と女性の二人。つまり、俺の母親と妹がそこに居た。慌てて扉を閉めようとするが、既に遅くて扉をしっかりと開けられた。
「これ、私の服だよ」
「ちょっと宗二、居るの!?」
中に入ると、誰もおらず母さんはこちらを見詰めてくる。
「少し、お話いいかしら?」
「お兄ちゃん、いないのですか?」
「そうみたいね。取り敢えず、この子に聞きましょうか」
ワンルームなので、中に入ると直ぐにテーブルに座る。
「では、話しましょうか。まず、名前は?」
「あ……アリスです」
「そう、アリスちゃん。それじゃあ、宗二との関係は?」
「仕事仲間です」
嘘は言っていない。
「じゃあ、宗二はどこにいるのかしら?」
「今、遠い国に取材しにいっています。詳しい事は聞いていません」
「そう、それでどうしてアリスちゃんはここに?」
「家を空ける間、好きに使っていいという事で住まわせて貰っています」
「それだけ? アリスちゃんは何歳なのかしら?」
「二十五です」
「嘘っ!?」
「本当に仕事仲間なの? それだけで女の子を住まわせるなんて事はないと思うわ。それに通帳とかも置いていっているみたいだし」
「あ、それは私の報酬もそこに入れて貰っていますから。家賃代わりに」
「なるほど……もしかして、そう言えっていわれているのかしら?」
「ち、違いますよ!」
「お兄ちゃん、ロリコンだったのです?」
「違う! あいたっ!」
久しぶりに天罰が来た。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、かりんアイス食べたい」
「冷凍庫にあるから勝手に……あっ」
「「……」」
じーと見てくる二人。これはやばい。
「さらばです!」
「待ちなさいっ!」
電子世界に逃げ込んで、梓の家に逃げます。仕方ないけれど、セーフハウスは無くなってしまった。
さてと、必要なデータを移して梓の家に転がり込んだ。まあ、こっちで生活しても全然問題無い。次にやる事は港の整理と整備。船の作成か購入。購入する方がいいかも知れない。しかし、そうなるととんでないお金が必要になる。いっその事、映画を作って稼ぐか……いっその事、日本政府を巻き込むのもいいかも知れない。でも、指名手配されているんだよな。
「どうしたの?」
「いや、お金を稼がないといけないんですよ。船を手に入れないといけないですし」
「船……お金。なら、ネットソフトを作って売ればいい」
「確かにその通りですね後は宣伝も大事ですよね」
「大事」
「それで、あちらはどうですか?」
「順調。順調に進んでいっている」
「わかりました。一度、皆を集めましょう。スキルを与えます」
「ん、わかった」
梓と共にあちらの世界へと移動する。しかし、俺自身が全員にスキルを与えるのは非効率的だ。付与があるのだから、配置した天秤にスキル作成を付与して、自動で発動させるようにするか。そっちの方が効率的だ。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
転移した場所は神殿で、復活ポイントであり天秤が設置された場所です。ここは必要な場所です。信仰を得る為に神殿はやはり重要です。
「放送施設は?」
「これ」
「ありがとうございます」
マイクを受け取って、街中に放送を流します。
「エインヘリヤルの皆様、女神アステルです。何時も開拓ありがとうございます。お蔭様でグランドクエストが完了しました。グランドクエスト完了に伴い、神殿にある天秤にスキル作成能力を付与しました。これはエインヘリヤルの皆様の才能や経験値をスキルとして昇華させる物です。手が空いた方は是非とも天秤に触れてスキルを習得してください」
しかし、これだけじゃ駄目だよな。何か他にないか? いや、そうだ。アレをしよう。
「また、アニメを作成します。声優になりたい方や、シナリオを作りたい方など募集します。現在、アストライアのHPにて公式PVアニメを流しております。そちらを参考に、参加したい方は神殿のご意見所に申し込んでください。また、今から一時間におきましては私が直接、スキルを与えたいと思います」
放送を終えると神殿内に居た人が一斉にこちらにやってきた。
「梓、列の整理をお願いします」
「ん、任せて」
台を用意して、そこに登って並んでくれた人を順番に対応していく。
「女神様、スキルください!」
「はい。では、手を差し出してください」
「どうぞ」
女性の手を握り、意識を集中すると彼女の才能が可視化されていく。
料理S
弓D
剣C
短剣A
「このような感じですね。どうしますか?」
「全部、というのは出来ないですよね?」
「そうですね。一つに集中する感じだと思ってください。時間が経ってスキルが定着すれば次のスキルを入手できるでしょう」
「じゃあ、料理でお願いします」
「畏まりました。かの者に料理の祝福を……どうですか?」
「凄いです。料理に関して、知識が増えています。どれぐらいが適正かもわかりそうです」
「では、美味しい料理を期待しています」
「はい、任せてください!」
「では、次の人」
「俺は剣を使っていたのですが……」
「ですが、適正は槍ですね」
それから、適正をどんどん教えてはスキルを与えていく。一時間を延長したけれど、これは仕方ない。どちらにしろ、これで開拓が進んでいく事だろう。