5話
電脳世界で最強のハッカーとなった私に敵は無い。神様の肉体スペックを使って複数の窓を展開し、犯罪組織の情報や闇金の情報を収集して組織やそのバックに居る連中の証拠を確保して叩き潰す。その過程でお給料として報酬を貰う。これは山賊退治と同じで、倒した者の物にしても神罰はくだらない。よって、それを元手にして色々と動いた。
まずやった事は簡単。闇金から頂いた借用書を使って法律に沿った金利を再設定し、支払われ過ぎていた分は相殺する。その後、借金を減らす為に私が作った会社、世界貿易機構アストライアに入社して貰う。級金は毎月支払われ、一部は借金返済にあててもらう。ちなみに仕事は事務処理とネットワーク管理ぐらいなので単純だろう。プロを雇って指導もしてもらったから尚更だ。
次に麻薬の情報を得て、原産地に飛んでその辺り一帯を根絶やしにて関わった連中は組織ごと文字通りに潰れて貰った。世界が平和である為に必要な犠牲だ。きっと、多分。もちろん、アステルの名前で大々的に声明も出して証拠を突き付けたし、壊す映像も出した。この理由は簡単だ。信仰を集める為。これによる。麻薬で人生を壊された人や犯罪の犠牲になった人達から大量の信仰が集められ、同時に犯罪者達から恐怖や畏怖といった感情を集められたので神格も上昇した。
さて、電脳世界に入った私は必要な映像を亀山さん達に撮って来て貰ってそれを編集してPVとして世界中に拡散させた。同時にフルダイブシステムを転移魔法とアバター作成の技術で構築し、アストライアと名付けた機器をネットの住人達にばら撒いた。金剛さん達にさくらをして貰い、順調に注文数が増えている。このゲームはネクストワールドと名付け、スマホにアプリをインストールし、専用のヘッドディスプレイをつけてプレイする形式にした。問題はアバターの作成には私が直接関わらないといけない事だ。アバターさえ作れば後は精神を飛ばしてアバターに憑依させるだけなので非常に簡単だ。
「っと、次のお客さんですか」
回想していると、電脳世界に魔法陣が生まれて六人の男女が現れた。それぞれが部屋着なのだが、中には全裸の人も居た。
「おお、まじで電脳世界かよ!?」
「って、おまえなんで全裸なんだ!」
「全裸待機は基本だろうが!」
「こっちくんな!」
「きもい」
「っ」
女性達は直に視線を逸らしてこちらを見て来る。
「初めまして。私は女神アステルと申します。エインヘリヤル達よ、良くぞ我が呼びかけに答えてくれました。貴女達には仮初の肉体を作成し、我が領地を開拓して頂きたいと思います」
「聞いてた通りだな」
「幼女女神様、最高!」
「ぜひ、踏んでください!」
「ひゃっほーっ!」
全裸待機していた馬鹿が三世ダイブを行って来るので、重力魔法で叩き潰してあげる。
「ぷぎゃーっ!?」
「おお、身体が重い」
「次、変な事をしようとしたら資格を剥奪し、男にとって大事な部分を叩き潰します」
「「「ひぃっ!?」」」
恐怖に身体を震わせる男達を無視して話を再開する。
「さて、皆様にアバターを作成して頂き、我が領地を開発していただくのですが、その条件として私を信仰して貰います。これは特殊な力、ギフトを与える為に必ず必要な物です。拒否する場合はお帰り頂くしかありません。また、他宗教への改宗は認められませんし、地球とネクストワールドでも一日五分から十分でいいので私に祈ってください。祈っていただければ代わりといってはなんですが、ボーナスを与えます」
簡単に言えば、私を信仰して祈ればボーナスをあげる。つまり、ギブアンドテイクな関係という事だ。
「なお、課金による強化も可能ですので、課金する場合は世界貿易機構アストライアにお支払いください。基本プレイは信仰のみで結構です。では、アバター作成を始めます」
「質問は!」
「却下します。時間がかかりすぎますので。また、アバターやスキルに関してのみは受けつけます。では、魔法陣にそれぞれ乗ってください」
六人が魔法陣に乗ると、金色に光り輝く円環が出現し、彼女達を上から下、下から上へと移動してスキャンしていく。
「さて、アバターの作成です。現在、貴女方の身体をスキャンしております。アバターの身長、体重など無理の無い範囲で弄れますが、基本的には現実の身体とほぼ同一です。ここで一つ注意点があります。もし、贅肉を落とすと現実でもスリムになれます」
「「「っ!?」」」
「問題は現実で激しい痛みが襲い掛かってくる事です。もちろん、無理な範囲はできず、自然な感じまでしか顔などは弄れませんので、そちらは整形をお勧め致します。また、アンチエイジング効果もございますので、作り込みを推奨いたします」
クローンみたいな物で、どうしても作る時は現実の身体とリンクしてしまう。
「アバターは構築から作成に一週間の時間がかかります。その間にアプリによるゲームで資金稼ぎ、ギフトとスキルを考えるなどで時間を行ってください。またスキルの付与は数時間が必要な為、前日には締め切らせていただきます。では、魔法陣から出て容姿を決めましょう」
六人が魔法陣から出ると、魔法陣の中に六人の肉体が出現する。
「まじかよ」
「そっくりだ」
「では、それぞれがスマホで自由に操作してください。これよりは個室とさせて頂きます」
六人をそれぞれで区切り、個室を作成する。何故ならプライバシーがあるからだ。特に女性は裸になる訳だから仕方ないだろう。もちろん、こちらからの声も聞こえるし、ナビゲーターとしてピクシーを作成している。
六人が弄っている間にこちらは前回の者達の要望を聞いてギフトやスキルを付与していく。付与したギフトスキルは信仰を得て私が習得した物から派生したり、習得したりできる。習得は消費するポイントが高いので無理なギフトは拒否し、出来そうなギフトは新たに神格で得たポイントを使って購入する。更にプレイヤーのアバターが稼いだ経験値や手に入れたスキルは私も格安で習得できる。つまり、私は人が増えれば増えるほどどんどん強くなっていくのだ。止められない、止まらないとはこのことだ。また、回復のギフト愛理ちゃんが回復系ギフトを習得しているので、それを使って不治の病やもう死ぬしかない人達の治療を行ったりもして信仰を集め、お金もちの人には寄付して貰ったりしている。寄付してもらったお金は全て孤児院やまっとうな活動をしているボランティア団体へと物で寄付している。
「軽戦士タイプ。作成完了。ギフトは連撃。武器は片手剣でスキルは二刀流。もう一人は同じタイプで刀ですね」
有名などこぞの二刀流剣士だ。もっとも、もう一人は二刀流だけれど刀を使う。そういえば、こないだは変わり種で金髪ポニーテールで光剣二刀流とかいうのを作った。皆、好きですね。もう、テンプレとして配置しておいたのでスキルを少し弄るだけで楽に作れる。
「しかし、開拓だと言っているのに戦闘系の多い事、多い事。全く、そんなに殺し合いが好きですか」
「いや、それはアステルの加護のせいもある」
「梓」
後ろを振り返ると、スナイパーライフルを担いだ梓が歩いて来た。この電脳世界には連絡の為に梓達も来れるようにゲートを作ってある。
「加護、ですか」
「全部、戦闘系」
「まあ、アストライアですからね。豊穣系の力もあるはずですが……」
豊穣が約束されていた黄金時代とか。
「もしかして、生産系列が少ないから解放されていない?」
「あり得るかも知れませんね。これは生産系優遇キャンペーンを開催しましょう」
「頑張って」
「はい。それで。何用でしょうか?」
「トラブル発生」
「ふむ」
ゲームだから、好き勝手に暴れる人が居る。そういう人達には注意し、聞き入れられない場合は出て行って貰う。こんな事が出来るのは簡単だ。
「では、天秤を与えましょう」
「町中に設置するといい」
「後は自警団も組織すべきですか」
「うん。でも、それは人数が足りない」
「そうですね」
まだあちらの世界に送り込んだ人間は100人くらいだ。壊れた港町を修復しつつ、探索を行って貰っている。出て来るモンスターは素材や武器として使われているけれど制作者が足りない。
「では、行きましょう」
「うん」
梓と二人で転移して港町に移動する。回りでは黒髪短髪の男性二刀流剣士と斧を担いだツインテール少女が睨みあっている。
「横取りしやがって! あれは俺の獲物だったんだぞ!」
「違います。先に攻撃したのは私です」
「はいはい、注目してください」
手を叩いてこちらに視線を集める。かなりの量の視線が一気に集まった。自らが信仰している女神が現れたのだから、当然だ。いや、ぶっちゃけGMが現れたくらいにしか思われていないけれど。
「これからトラブルに関して、基本的にこちらにある天秤を採用致します」
広場に巨大な天秤を作り出し、配置する。
「この天秤は嘘を見抜き、罪の大きさを表します。つまり、片方ずつに乗って頂き、重かった方が悪いという事です。ちなみに物理的な重さは関係ありませんのであしからず」
「質問です、女神さま!」
「はい、どうぞ」
「両方が悪い場合は?」
「動きません。均等を保ちます」
「まじでアストライアの天秤か」
「なら、いいか。あ、ついでに質問! 武器がたりません!」
「作ってください。一応、生産系キャンペーンを開催いたしますので、しばらくお待ちください」
「銃が欲しいです」
「高いので課金してください」
銃弾と実際の銃を買って来るんだから当然だ。
「あと、なんでインスタント食品とかが売っているんですか?」
「買って来て運んでいるからです。まずい食事がしたいですか? あと、料理人募集中です」
「食材はあるんだけどなあ……」
「まあ、あれです。皆で頑張って開拓しましょう。食べれる果物とかも見つかったはずです」
「まあ、そうだな」
「というか、やっぱ生産系が必要だよな。知り合いに聞いてみるか」
「生産系限定で募集すればいいんじゃね?」
「「「それだ!」」」
「では、実際に生産系だけを募集しましょう」
「「「異議なし」」」
そんな会話が進む中、少女と男性が二人でそれぞれ乗ると、どちらも動かなかった。
「これ、ちゃんと動くのか?」
「では試してみましょう。まず、そこのあなた、悪い事をしてください」
「おっけー。とりゃっ」
「痛っ! いきなりなにすんだ!」
「では、乗ってみてください」
「おう」
今度は乗った人の内、殴った方に傾いた。装備が軽装と重装備に関わらずだ。同時に罰として軽い電撃が与えられた。
「この通り、悪い事をした量によって神罰が与えられます。みなさん、仲良く遊びましょう」
「「「は~い!」」」
それから、私は戻って料理人の誘致などを行う。借金で大変な人や家族に重い病気がある人を助ける事を条件にこちらで働いてもう。実際に怪我や病気を治して見せたので信じてくれた。後は建築関係の人達も誘っていく。当然、天秤を使って犯罪者やよからぬ事を考える者達は排除して、善人やいい人達だけを勧誘していく。
『ここでニュースをお伝え致します。多数の国を股に駆けて犯罪者を撲滅するアステルと名乗る存在を一部の国が働きかけ、指名手配をかける事となりました』
『助かっている人も居るだけどね。それに大麻を初めとした麻薬原産地を撲滅してくれているのに』
『国ぐるみでやっている所からしたら大損害でしょうし、指名手配をかけたくなるでしょう』
『しかし、デモが起こりそうですね』
『いや、それ以前に報復の可能性もありますよ。ましてや、相手は人知を超えた力を持っているんですから』
報復ですか。別に被害はないので放置ですね。被害がこれば消しましょう。悪を庇うのなら、それはその者も悪だという事ですから。