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2話

 




 亀山さんの家族を回収してから姫柊さんの家に集まった。何故、俺の家でないかというと、滅多にないが俺の家は何時家族が来てもおかしくないからだ。

 その点、姫柊さんは天涯孤独とのことだから問題ないらしく、快く家を貸してくれている。彼女の家に訪ねてくるのは、後見人やマスコミだけらしい。後見人の人は電話で終わるし、マスコミの方は収束しているらしいので大丈夫とのことだ。


「さて、こうして集まってもらったのはほかでもないです」


 姫柊家のリビングにある椅子に座りながら、俺は両手を組んで肘を乗せながら告げる。

 テーブルの上には飲み物があり、真ん中には合計で六十万円の札束が置かれている。

 席に座っているメンバーは俺、姫柊さん、金剛さん、亀山さん、亀山さんの奥さんと娘さんの六人だ。


「我が母である女神様からの依頼を達成する為、異世界へと向かうメンバーを集めました。異世界にて依頼を達成しつつある程度自由に過ごすためです。そのため天秤議会を結成します。ぶっちゃけると私一人じゃ大変だから手伝ってね」

「ぶっちゃけたな」

「一人でTSさせられて異世界で働けとか、何それ無理ですよ」

「それは確かに」

「だな。小説とかアニメの奴らってよくやるよな」

「うん、普通だよね、無理ゲーだよね」


 男性陣がうんうん頷いている。実際問題、一人で抱えても女神様からの依頼とか、危険度も難易度も半端ないだろうし、絶対に手が回らなくなるだろう。


「どうでもいい。早く続き」

「まあ、そうだね。まずは自己紹介から行こうか」

「「「「うん/はい」」」」


 全員が頷いたのを確認して改めて話し始める。


「私はアステル。女神ヘレネの娘にしてアストライアの神格を持つ半神半人に転生させられたアステルです。ちなみに元男なので女の子の事なんて何もわからないので其の辺もよろしくお願いします」

「「「よろしく」」」

「元男なんだ」


 TSって言葉が分からなかったのか、聞き逃したかはわからないが、さっさとカミングアウトしておく。どうせバレるだろうし、先に言っておいた方が信頼を損なわないだろう。最初から女と思われていれば、風呂場でばったりと出会って裸とか見ちゃったりも起こらないだろう。


「次、姫柊さん」

「姫柊梓。十四歳、中学二年生。家族なし。後見人が離れたところに居るから、法的には大丈夫。終わり」

「次は俺だな。本名を名乗った方がいいか?」

「別に掲示板の名前でいいですよ」

「そうですね」

「関係ない」

「私達はもともと……」


 亀山さんの奥さん達は半信半疑だ。今も疑いの目で見てる。


「じゃあ、金剛だ。一応、高校生だぞ」

「私は亀山(さとし)です。こちらが妻の静香で、娘の愛子です」

「よろしくお願いします」

「よろしく」

「挨拶が終わったところでこれからの事を話そうか。まずやる事は資金の調達と、武器を手に入れる事です。能力を与えるのは直ぐにでも出来ますが、そちらは契約書を書いていただきます。貰うだけ貰って逃げられても困りますので」

「もっともな意見だ」

「うん」

「しかし、資金の調達はどうするのですか?」

「簡単ですよ。競馬場に行って馬券を買います。私の能力で馬を勝たせれば簡単で安全に稼げ……る、いぎゃぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 何処からともなく空間を超越して落雷が落ちてきた。直撃した俺の全身に激痛を与えてくる。たまらず椅子から転げ落ちてのたうち回ってしまうけれど、全然痛みが治まらない。


「だ、大丈夫?」

「だっ、だいじょばない……なんで……」

『天罰です。正義の女神たる貴女が不正行為や犯罪行為をしようとしたのです。当然の事です』

「お、おのれ……」


 闇金の人達を始末した時はなんともなかったのに。いや、あれはある意味では正当防衛か。あいつら、俺の身体も狙ってきてたし。


『反省してください』

「はい……でも、それだと商売とかその結果は……」

『公正な、正々堂々とした勝負や競争なら問題ありません。ですが、一々天罰で調べるのも可哀想ですから基準となるものを与えましょう』


 女神様の声がそう言うと目の前に天秤が現れて、俺の中に消えていった。すると視界の片隅に天秤のマークが出てくる。

 善と悪を測る天秤のようだ。よくよく見ると他の皆にもついている。この傾きで色々と判断できるのだろう。


『それを基準にしてください。それでは頑張ってください』

「ふぅ、落ち着いた。じゃあ、改めていうけれど、クリーンで安全にお金は稼ぎましょう。悪い事をしようとすると今みたいに天罰がくだります」

「「「わかった」」」


 皆、驚愕から回復したようで一斉に頷く。落雷を受けたくはないよな、うん。俺もごめんだ。というか、普通の人間が受けたら死ぬっての。


「しかし、安全に稼ぐならやはりこれらの資金を元手に商売をするしかないですね」

「そうなるな。ファンタジー世界って事だしやっぱ塩とか胡椒だろうな」

「あちらで得たお金で金などを購入してこちらで換金というのがいいでしょうね」

「亀山さんと金剛さんって商売が得意なんですか?」

「私は商社で働いていましたからね。失敗してしまいましたが」

「俺はあんまりだな。バイト経験があるくらいだ」

「よろしい。じゃあ、基本的に商売は亀山さんがメインで、金剛さんは護衛とかをよろしくお願いします」

「わかりました」

「おう」


 任せられる人に任せるスタイルで行こう。その為にメンバーを募集したわけだしな。


「私は?」

「姫柊さんは私の護衛兼世話をお願いします」

「世話?」

「髪の毛の手入れとか無理ですからね。静香さんと愛理さんはこちらに住んで物資の管理とかをお願いします。まあ、郵便物を受け取ったりですね」

「了解」

「「はい」」


 商売を本格的に始めたら、かなりの量の塩とかを取引しないといけない。そうなると、あちらの世界でも行動するから、ネットスーパーとかを使った方が楽だろう。

 その為に荷物を受け取る人と生活しているように見せかける為の人がいる。実際に二人にはここで生活してもらうのだから問題ない。

 いざという時は連絡してもらって戻ればいい。それに愛理ちゃんは幼すぎる。年齢は聞いてないが、多分六歳から八歳くらいだから、危険な異世界になんて連れていけない。


「武器はどうするの? 包丁ならあるけど」

「近接戦闘がそんな簡単にできるとは思えないのですが……できますか?」

「無理です」

「無理だな」

「頑張れば?」

「計画では資金を稼いでから、アメリカとかで銃器を購入しようと思っていました。ですが……資金を獲る計画が頓挫してしまいました」


 競馬やカジノで荒稼ぎしてから銃器類を購入し、異世界の探索へとおもむこうと思っていた。銃器類なら慣れないうちでも遠距離から確実に狙えて威力も保証されているから、初期武器としては悪くない選択肢だろう。補給を考えなければだけど。


「でも、あの魔法の力で倒せばいいんじゃないですか?」

「私はそれでもいいのですが、亀山さん達はきついでしょう。私の手が空いていなかったり、居ない時に襲われたりしたらどうしても自衛手段が必要です。与える力もしばらく習熟が必要もなると思いますし……」

「まあ、小説とかのようにそんな簡単に使えるようにはならないな」

「私は無理矢理脳内にインプットされましたが、おすすめは出来ませんね。下手したら廃人コースです」

「それは嫌」

「ですね」


 そんな話しをしていると静香さんがお茶を用意してくれた。愛理ちゃんはテレビを見出したが、放置する。子供には退屈だろうからね。


「そういう訳で……どうしましょうか?」

「そうだな」

「う~ん」

「あ」

「どうしたの?」


 姫柊さんが声を出したのでそちらを見ると、彼女はテレビの画面を見ていた。しかし、無情にも愛理ちゃんによって画面は変えられてしまった。今はアニメが流れている。


「おいおい、お前までテレビが見たいのか?」

「違う。聞くけど不正や犯罪じゃなければいい?」

「犯罪といっても、それはあくまでも人が定めた法ですから、そちらも微妙かもしれませんが……不正は確実にアウトでしょう」

「なら、いい方法がある。銃器は持ってる奴から奪う」

「「「え?」」」

「テロリストから奪えばいい。違う?」


 テロリストから武器を奪うというのは、大多数からみれば悪ではない。むしろ被害を減らす行動ととれる。


「確かにそうだな」

「ふむ。良い考えかもしれませんね」

「ですが、危険では?」

「問題ありません。では、皆さんは必要な準備をしておいてください。お金はこの六十万でお願いします。私が銃器を確保してきます」

「了解」

「任せてください」


 直ぐにスマホでテロリスト対政府の戦争が行われている場所を検索する。その地の写真をスマホに転送して登録する。それから転移する。




 転移した先では激しい銃撃戦が行われており、とても大変だった。周りには沢山の怪我人や死体が転がっているのだ。


「重力障壁」


 自らの周りを重力の壁を作成して飛来する弾丸を全て無力化する。同時に空に浮かび上がり、地上の様子を確認する。

 片方は統一された服装をし、もう片方はバラバラの姿をした人達が戦っている。ニュースサイトで見る限りはテロリストが悪い事になっている。だが、片方の情報だけでは信じられないし、危険なので天秤を使って判断する。

 彼等を見ると天秤が悪の方へと傾いているのがはっきりとわかった。それはもう、一気に片方が底についたほどだ。


「なら、やるべき事は一つ」


 彼等の物資が一時的に保管されているトラックの場所に瞬時に転移する。


「だ、誰だっ!!」

「いきなり現れたぞ!」

「さようなら」


 重力操作で重力のかかる方向と重力そのものを数倍に強化して、首や手足をへし折る。護衛を蹴散らしてから中に入る。トラックの中は銃器類でいっぱいだった。

 見た限りでは銃弾や砲弾も沢山あるので、トラックごと自宅の駐車場へと転移させる。

 転移が終われば殺した人間達から彼等が持つ銃器類を頂く。

 武器と弾薬の回収をしていると、発砲音が聞こえて視界の隅から銃弾が飛来して停止する。

 現在、俺が展開したままの重力障壁に阻まれ、身体まで到達できていない。


「これはアレをやるしかないですね。ええ、やるしかないです。ファンとして、オタクとしてはやらざる終えないです」


 そんな訳で私は更に重力を操作して重力のかかる方向、ベクトルを変更。某ロリっ子の不良守護者のように銃弾を反射する。

 反射された弾丸は見事に襲撃者達の銃を粉砕して手を潰してくれたけれど、正直言って勿体ない。目的は銃器なのだから、もっと丁寧に倒そう。


「化物めっ!!」

「くそっ、喰らえ!!」


 筒状の物体、ロケットランチャーから放たれる砲弾に掌を向けて重力で押し包んで握る動作をしながら、同時に操って押し潰す。意味は無いが、相手に恐怖を刻み込むには丁度いい。カッコイイしな。

 爆発した衝撃はこちらには届かないので、転移能力を駆使して彼等の背後に転移する。無防備な状態の彼等を押し倒して背中に乗り、手足を破壊していく。



 倒し終えれば一箇所に集めてOHANASIを行う。そこで心良く色々な情報を教えて貰った。

 その後、教えてもらった彼等のアジトに襲撃を仕掛けて、物資を根こそぎ貰っていく。

 同時に捕まっていた人達も救助し、その人達には十分な物資を別けてあげる。彼等はしっかりと安全な地域に送ってあげてから帰宅した。



 帰宅してみたら、家中が銃器類で溢れてしまった。これは誰かに見付かるとかなりやばい。問答無用で即お縄な状態だ。


「それに整理整頓をしないと危険か……です……」


 暴発したり、うっかり引き金を引いてしまったら大変だ。いや、いっそ整備に出すか。

 テロリストが使っていたので、どこから流れた品かもわからないから正直言って怖い。

 うん、アメリカに行って銃器類を整備してもらおう。幸い、彼等が資金として使っていた金や金塊は手に入ったから大丈夫だろう。





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