1 村長視点1
ようやくの会話文。主人公1以来だ・・・
夜が明けた・・・
南方特有という流行病が発生してから6日。
この辺りを治めている子爵様へ報告と馬で急ぎの救援要請を行ったのが発生の2日後。
この村の薬師であるマルグリアが倒れたのが2日前。
今、この村に薬を作れる者は居ないが、それでも材料の在庫が尽きているとマルグリアから聞いていたので、運良くと言えるかは立場によるだろうが、昨日到着した探索者一行に薬草各種とマナ水の採取を依頼した。
そうして、初めての森では勝手が分からず薬草類は少ないもののマナ水だけは確保してきてくれた。
助かった・・・救援が来たときに材料がありませんでは話にならんからな。
子爵様の居られる館のある街までは通常片道5日かかるが、馬なら2日で行ける。
あの子爵様ならすぐに救援準備してくれるはず!
そうすれば、今日・明日には救援が到着し何とかなるはずだ。
一応、救援要請にマルグリアの見立てと軽減薬のレシピも添えてある。
マルグリアの腕は信頼しているが、いかんせん田舎だ。最新の情報には疎くなってしまう。
彼女の知らない薬が出来ている可能性もある。
子爵様のところなら情報があるかもしれん。
そう、思わんとやってられないほど今の状況は悪い。
マルグリアの薬のおかげで死者はまだ出ていないものの、4人に1人は病にかかっている。
老人や子どもだけでなく、体力のある大人も罹っているのだ。
どれほど危険な状況か分かるだろうか?
最悪の場合、村の放棄も考えなければならないのだ・・・
流浪民に世の中は冷たい。他の村や町に身を寄せられる親戚が居ればまだ良い。多少肩身が狭くとも生きて行ける。しかし、それすら無く村を捨て流浪民になるということは緩慢な師を選ぶと言うことと同義なのだ。
ん?外が騒がしいな。まさか、救援が来たか!?
そう考え私は外に出ると、そこにはマルグリアが元気とは言えないが病は治っていると考えられる姿でそこに居た!彼女は2日前に病にかかり高熱で歩けず、なんとか家に送り届けたというのに!
未だに治った者は居ないというのに一体何があった!?
「ああ、村長。丁度良かった!家へ数人呼んで来てください!」
彼女は走ってっ来たのか息を切らせて、いきなりそう言った。
「まあ、待て。皆驚いているし、状況が分からん。まずは落ち着いて説明をしてくれ」
冷静な彼女にしては珍しい物言いに私は説明を求めた。状況が分からんのでは軽々しく動けん。
「薬が・・・今流行っている病を治せる薬が家にあります。それを運びたいのです!」
「な、治療薬が出来たのか!? 材料が入手できないのでなかったか?」
「いえ、別口です。ですが、治るんです。でも、運べなくって人手が欲しいのです」
まさかと思ったが、治療薬が出来たのか・・・よかった・・・これで皆が救われる。
外にいた数名の村人へ伝える。
「皆聞いた通りだ! 治療薬ができた! 皆治るぞ!
マルグリアの家に取りに行くので数人手伝ってくれ! 荷車は必要か?」
「ええ、鍋ごと持って来たいのでお願いします。」
小分けにしていないのは珍しい・・・余程急いだのか?
家にある荷車を用意し、マルグリアの家に向かう。
彼女の家は薬草をすぐに調合できるよう森に近い村はずれにあるため数分かかる。
彼女と一緒に村人より先行していると彼女が近づいて来た。
「村長、相談があります。あとで時間を下さい。」
深刻そうな顔でそう言って来た。
彼女は探索者としての経験が豊富で、皆から相談を受けることはあっても、育児以外の相談をすることは珍しいのだが・・・余程の厄介事か?
「薬を配り切ってからでも?」
「ええ、大丈夫です。ですが、子爵様の救援が来る前にお願いします。」
「ああ、分かった。私の家でき「いえ、薬は村の皆に任せて私の家でお願いします」分かった。」
最優先は皆の治療だ。その後で優先的にということか・・・
まあ、皆の命が助かり、村の存続が可能になったのだ。
いつに無い彼女の反応が気になるが・・・
これ以上胃の痛くなるような事などそうそうあるまい・・・・
そう、その時は思っていた・・・
がんばれ村長。君の胃が溶ける時はすぐそこだ!
もう一話村長あります。
やっぱり文章量少な目です。