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うっかり転生  ~事件の裏にはヤツがいる~  作者: シールド
1章 リリアちゃん出会い編
33/45

1 とある貴族

1か月以上たっちゃった。


その部屋には男が一人いた。部屋はとある貴族の館の一室、館の主である領主貴族の執務室であり、そこにいるのはその館の主人であった。


季節は短い春を超え、夏に至ろうかという時期ではあるが、部屋の窓から見える山々の頂には、未だ白い影が残っている。山の標高が高いのではないので、この世界の人類生存圏では比較的北方に位置する国土だからだろう。他に高い建物が無い事もあり、2階にある執務室からの眺めは風光明媚そのものであるが、そこの住人であり見慣れた本人にしてみれば、特に感慨がある訳もなく。男は集められた報告書等を読み、確認し、決済し、と己が仕事をこなしていた。


不意に、ノックする音が響く。男は誰かを呼んだ覚えは無いが、何かあったかと入室の許可を出した。


「失礼いたします。」


そう言いながら鎧姿の警備兵が入って来た。


「御屋形様、いつも来ている行商人のウザンが謁見を求めて参りました。いかがいたしましょう?一応、屋敷の前で待たせておりますが。」


通常貴族へ平民が会うことを望む場合、早くて数日最悪2週間もの間待たされることもある。自領巡察中であったり、他領へ訪問中であったり理由は様々だ。まぁ、単に見栄、良く言えば威厳の演出だったりすることも多かったが。(火急の場合でもだ。どこかの辺境伯の様にホイホイ会ったりはしない。)

故に、警備兵も通常であれば、宿へ帰す。


が、今回の場合は事情が異なった。以前から付き合いのある、いわば御用商人からの面会要請だ。主からもすぐ会うこともあると伝えられていた。故に確認のためやって来たのだ。


「ウザンか。すぐに会おう。場所はここで良い、連れて参れ。」

「はっ、すぐに連れて参ります。では、失礼いたしました。」


警備兵は驚くことも無く退出していった。本来であれば執務室で誰かと会うことはほとんど無い。見栄・威厳の演出という面だけでなく、暗殺への警戒・対処や、そもそも執務室には様々な書類・情報が集まっている。うかつに他者へ漏れないよう、情報統制・防諜と言う面で執務室へは入れない。

だが、この男がウザンという行商人と執務室で会うことは初めてでは無く、来ればすぐに執務室で会うということを繰り返しているため、警備兵は驚くこと無く退出したのだった。




そして、警備兵に案内されて、行商人ウザンが執務室に入って来た。


「ウザン、良く来たな。」

「はっ、御屋形様、お久しゅうございます。行商人ウザン、罷り越しました。」


そして長々と儀礼的な挨拶を交わしてから、本題に入る前に、ウザンは懐に抱えていた荷物を取り出し、包みを広げて置いた。中には数本の小瓶があった。


「今回お持ちいたしましたのは、以前御屋形様にご好評頂き「また」とのお言葉を頂戴しました、コーシュウ産の葡萄酒でございます。今回は同じもので12本入りのモノを10箱ご用意させて頂きました。今一度ご確認いただくためのモノと、こちらは同地で作られた新しい果実酒とのことで、御屋形様にぜひと思いお持ちしたモノでございます。気に入って頂けましたなら、次回ご用意させていただきます。」


「ふむ、アレと新しい酒か。葡萄酒の方は全て買い上げよう。この新しい酒は飲んでから決めるとしようか。おい、杯を用意する様厨房に伝えよ。」


御屋形様と呼ばれた男は、機嫌良さそうな声でウザンを案内してきた警備兵にそう指示をだした。


「そうじゃな・・・荷を運び込んだら、1箱は皆で分けて飲んで良いぞ。」


命令に従い執務室を出て行こうとした警備兵の背に向けて言葉をかけた。背中からでも分かるほどの喜ぶ気配だ。顔はきっとにやけていることだろう。





「して、報告を聞こうか。」


警備兵からの連絡を受け、メイドが杯を用意し退出した後、周囲に人の気配が無い事を確認して、御屋形様と呼ばれる男がそうウザンに問うた。気配も先ほどまでとは一変しかなり冷静で落ち着いた精神状態の様だ。


「はっ、此度は隣国の辺境領域で行っておりました実験及び不和・破壊工作の件でございます。」

「ふむ、あれか。確か食品内に病の元を封入した上で〖鑑定〗を欺くことが出来る様になったので、実験を兼ねて行った件だな。」

「御意」


ウザンは頭を下げながら肯定した。ウザンは自身が御屋形様呼ぶこの男を半ば尊敬し、半ば恐れている。その理由の一つが、通常の領地経営を水準以上に熟しながら、いくつもの謀略を同時並行で立案・実行する頭脳だ。当然、財力・兵力も恐ろしいが、一つの謀略が潰れても、次善策をすぐに実行していたり、そもそも一つの策の成否に頼らない方策を立てているのだ。どれだけ手が長いのか・・・万が一謀反を企んだところで直ぐに潰えるであろうことは想像に難くない。


「詳細は時系列順にレポートにまとめさせて頂きました。こちらです。」


ウザンは懐より、今度は羊皮紙の束を取り出した。


「結論から申し上げます。実験自体は成功。なれど破壊工作は失敗。貴族間の不和工作は種は植え込めた可能性はありますが、実情を考えると失敗と言えるでしょう。」


「ふむ、失敗の理由は・・・白の隠者の気まぐれな行動か?まあ、仕方あるまい。あれは一種の天災だからな。しかし、ハオマとはな・・・まさか、この小瓶の中身は・・・」

「ハオマにございます。村に潜入・監視しておりました部下達にも念のため飲むようにと配られたモノを小瓶に移し、村人たちに気付かれぬよう運びました。我らは同時に開発した薬であの病に罹ることはありませんでしたので、飲む必要ありませんでしたから。」

「でかした。さすがに残りは持って来れんかったか・・・」


苦笑しながら、男は言った。自身でも無理だと分かっているように。


「はい、監視も多くいましたし、あの村は元とはいえAランクも多く半数がBランク以上もしくは特殊スキル持ちという戦力過多な村でしたから・・・だからこそ標的にしたのですが。あの村から守られている何かを奪って逃げ出すのは、竜の宝を奪って逃げると同等かそれ以上に困難と言えるでしょう。」

「まぁ、貴重な手駒を無謀な賭けに使いたくはないな。・・・ハオマが天秤に乗せられているとはいえな。存在するということはいずれ手に入れられる機会も来よう。」

「はっ、奪取の機会ありましたら必ずや。」


この時はまだここにいる2人は知る由もなかった。速攻で領主貴族を経て国王(国庫)へ入れられてしまうなど。


「まぁ、封入実験は成功したのだ。問題は無い。良くやってくれた。」

「ありがたきお言葉。感激の極みにございます。 念のためでございますが、部下を遣ってあの村を監視し、機会がありましたら、マナ水供給ルートの切断とあの村に集う戦力の漸減を図りたいと考えますが、よろしいでしょうか?」

「ふむ・・・白の隠者がなぜあの村に現れたのかも気になる。よかろう。・・・それとだ。大丈夫だと思うが、こちらの工作と知られるようなことはあるまいな。」

「その辺りは念入りに。探索者パーティーに接触し例の食品を渡した者は、隣街に居たチンピラを使いましたし、様が済みましたら速やかに処分いたしましたので、いかなる方法でも追跡不可能です。」

「まぁ、おぬしのことだ、大丈夫とは思うたがな。ゆるせ」

「いえ、御屋形様のご心配は当然のことかと」


ウザンは相手方にハオマの小瓶を押しやりつつ確認した。


「他に何かなすべきことはございますでしょうか?」

「いや、今のところお主にだす指示は無い。追って指示を出すこともあろうが、しばらくは情報収集とあの村の監視だけで十分だ。・・・少し長くなったか。他の者達に怪しまれる前に帰るが良い」

「御意。それでは御屋形様失礼いたします。」


そう言ってウザンは男の執務室から出て行き、部屋には男とハオマの小瓶そしてレポートそして静寂残った。


男は考える。このハオマの使い道を、今後の方針を、ありとあらゆる可能性を。

己が望む世界に作り替えるために。







3人称に変更しようとしたけど、うまくいかない。

どうしても説明臭くなるし・・・

でも、1か月以上たっちゃったし・・・

で、納得いって無いけど出します。


一応、黒幕視点。村長の感大当たり編でした。

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