例えば、あの日、もしも。
なんか悲しい。
神様仏様 如来様 風神雷神様様
教えてください私はまだ無知だった
もしも そう もしも
あの日、例えば―――。
『…………………黒咲』
私は幸せだった。
宝クジは当たってないし空から星は降らない
神様にも仏様にも会えていないし
子供の頃から夢見た魔法はまだ習得していない。
それどころかそこそこの顔に体
そこそこの友達 そこそこの彼氏に恵まれて
なんて平凡だろう
超模範的超つまらない ありがち平穏スリル無し。
だけど私はそれで良かった それが良かった
なのにどうしてだ?
『…黒咲どうして?
親がなんて言ったってそんなの関係ないよね
黒咲はそんな男じゃあないよね―――』
あ、コレ禁句です
〜は〜じゃないよね とか 理想の押し付け
っていうの?ダメらしいんだこれがさ、
いやでも待ってよ コレで私振られたの?って、
納得行かないよ なんなんだよっ。
つまりはこういうことであって。
彼氏・黒咲のお家はちょびっとでかくて厳しくて。
野良犬みたいな私はダメってか―――。
ふざけるな仏。
『…くろ、ざき』
いや、でも聞いて?確かにね?
私は下賎な下町娘 釣り合わないなんて何時代?
親が子供の恋愛に首突っ込むなよ
つーかお前も抵抗しろよ!
私って結局その程度だったって事だよね―――。
いやいや、完結しない!しない!
これで諦めるなんてね?なーいーよーねー。
いやどうする?
かーんべー。なんていってらんねー。
どーするよってどーするもなにも
LINEも電話もダメだっつの
望みの小さな光は私には降らないってか。
ともかく1ヶ月くらいたったのかな。
女々しい。
俺女々しっ!いや女だけど!
事あるごとに彼奴の顔が浮かんでくるし
でも少しづつ記憶も気持ちも薄れていって―――
もうすぐ、私忘れるのかな
なあんて思ったりして。
いや、んなわけないなー、あんなに泣いたし
こんな簡単に、諦められるわけ、って。
あれ、私今黒咲のこと好きか?
ん、わかんねえ。
あれえ、おかしいな―――
たった1ヶ月前には 彼奴無しじゃ死ぬーとか
ほざいてた自分がいた様な気がするんだよ。
私にとっても黒咲ってこんなもん…?
なんか、悲しくなった。
人生一番好きになったって確信して
今もそれは変わらないんだ でも
もし別れずに同じようにこの期間会わなかったら
私って黒咲のこと好きなままなのかな、ってさ。
なんだかんだいって、
彼奴いなくても私生きていけるんだなーって。
うん。あたりまえのことだけど。
それにしても負けた感が半端ないんだよね。
負けるの嫌いだし。普通に嫌いだし。
勝ちたい。
もう一度、勝ちたい。
『…しゃぁね―――』
080〜…あ、おじい?うん私―――
あのねえ、頼みってゆうかね?交換条件〜
うん あのね?
後継いでやるから
家の権力と金全部俺に寄越せよ。
脅迫じゃないよ。実祖父だし。
かくして私は母方の家を継いでしまうのね
かくしてって展開が早すぎたね
実は〜おじいの〜会社は〜一ノ瀬財閥〜
私は世界一の金持ちの娘の娘。
すごいでしょう?
『覚悟してろよ仏…』
1年が過ぎました。
なんと私は世界一の金持ちの娘の娘を卒業し
世界一の財閥の後継者
つまり世界一の金持ちになりました―――。
復讐だ。どうしよう。
彼奴の前で婚約発表でもしようかな、
どうしよう、どうしよう。
まずは敵地に乗り込もう。
え、大丈夫大丈夫 不法侵入になんてならないよ
世界的に
いや、俺金持ちだから、にしとこ
『…黒咲』
やっとみつけた、
会いたかったよ 黒咲
早く何か喋れよ 黒咲
わたしだけの、 黒咲
あれ。
あれ。
あれ。
あれ。
あれ。
これ、は、なに。
熱くて冷たい
涙?
『…黒咲…』
結果的に私達は結ばれなかった
あたりまえだ
私は世界一の金持ちなのだから。
私の方があの男より何倍も上の人間なのだから。
いまに彼奴は あの時のことを悔やむだろう
もしも、あのときって。
もしも、あのとき。
家のことを、話して、いたら。
無知な私 の私は死んで
私は、一年前の私は彼奴の上に立っただろう
私は
なにを、したかったのかな
今彼奴が知った真実は
決して一年前知れなかった真実ではなかった
少しの彼のプライドと
私の緊張が損なわれるだけであって
きっと彼は
私が上でも下でも私を愛しただろう
やめてくれ
そんな顔しないでくれよ
そんな顔するならどうして
あの時私を止めなかったんだよ。
どうして親より私を選ばなかったんだよ。
私は、世界一の特別だから。
知ったら、もう一緒にいられないんじゃないかって
私は無知なだったから
彼より下で、何も知らない、
下町娘のただの平凡な一人の女の子だったから。
だから、
お前は無知な私のままを選ぶべきだったんだ。
全部、お前が悪いんだ。
好きだったよ
なんて
いえるもんか
悲しかった悔しかった
全て言ってしまいたかった
だけど
あの日も
彼奴は私の上の人で
もちろん彼奴の親も私の上の人で
それが
平穏スリル無しの私達だったんだ
『…さようなら、黒咲』
敵地はかわってなかったなあ。
あの日のまんまだったなあ。なつかしい。
私好きだったんだなあ。って、
そう思うんだ。
神様仏様 如来様 風神雷神様様 。
教えてくれ
わたし。
あのこがほしくてほしくてしょうがないんだ。
どうしたら いいのか
私はもう
上に立ちすぎた
消えたと思った気持ちはずっと
私の中にあったのに
結局女の名前はわからないままね