12・試合の前前日
野球に近付いたような気もしない。
「暑いなぁ〜。」
「あぁ。」
「ほんと、暑いなぁ〜。」
「あぁ。」
「喉渇いたぁ〜。」
「あぁ。」
「あ『うるさい!』」
「いたっ!」
さっきからうるさい。
「なんで叩くんだよ!」
「うるさいから。後、暑いから。」
今、俺らは1回戦目の相手の調査をしている。
暑い。
もう7月だ。
「いたっ!」
もう一回叩いてみた。
「何叩いてんだよ!」
「暑い。」
「答になってねぇ〜よ!」
こいつと居ると余計暑い。
「お前ら、調査しないと怒られるぞ。」
「あぁ。」
狼。何故君はそんなに涼しそうな顔しているのだ?
相手チームを見てみる。
特に目立つ人はいないみたいだ。
「そこまで強そうじゃないな。」
「だが、バランスがとれているな。」
「そうだな。」
「あちぃ〜。」
こいつはやる気あんのか?
邪魔だよ。
あっ!そうだ。
「お〜い。淡田。ジュース買ってくれば?調査は俺らやっとくから。」
「ほんとか!?ありがとう!じゃあ、行ってくるぞ〜!」
走って行った。
バカな奴だ。
ここから近くの店まで歩いて20分も掛かる。
あいつなら、途中でバテて、40分は帰ってこないな。
うるさいのがいなくなってよかったぁ〜。
「そろそろ学校に帰るか?」
「そうだな。」
「ふぅ〜。やっと学校着いた〜。」
「監督に報告だな。」
「監督〜。」
「帰ってきたか。どうだった?」
「特に目立った選手はいませんが、バランスはいいかと思われます。細いことは調査書に書いてあります。」
いつの間にそんな調査書書いてたんだ?
「分かった。じゃあ、帰っていいぞ。」
「分かりました。」
あれ?
「そういえば、なんか忘れてないか?」
「大丈夫だ。何も忘れてない。」
ならいいや。
「それより、明後日は試合だぞ。」
「遂に試合かぁ〜。出れるか分かんないけど。」
「ピッチャー二人しかいないから出れると思うぞ。」
「そうかもな。」
緊張すんなぁ〜。
「じゃあな。」
「あぁ。」
よし!明後日頑張ろう。
淡田は試合出れんのか?
ん?そういえば淡田ジュース買いに行ったままだったけ〜。忘れてた。
まぁ、大丈夫か。淡田だし。
「涼〜!狼!何処だぁ〜!」
「くそ〜。帰りやがったな!」
「覚えてろよ!仕返ししてやる!」
「ねぇ。お母さん。あそこの人なんで叫んでるの?」
「駄目よ。ああいう人に近付いちゃ。」 「うん。お母さん。近付かない。」