第七章 初めての勝利
肉が潰れるのは感じていたが、下敷きになったゴブリンは想像以上に凄惨なことになっていた。
最初のゴブリンは骨が折れたとはいえ原型は留めているのに対して、こっちはほぼミンチだし。ほぼ水分だけのスライムでは表せない肉感のグロさをまざまざと示している。
どうやら肥大してから攻撃は思っていた以上の威力になるらしい。オーバーキルにも程がある感じだ。
とにかくオレは勝った。生き残ったのだ。
そう思った瞬間に一気に緊張が解けてどっと疲れがやってくる。と同時に、
『レベルが七に上がりました
規定レベルに達したため「攻撃上昇・極小」「防御上昇・極小」「速度上昇・極小」「魔力上昇・極小」「体力上昇・極小」「幸運上昇・極小」を獲得しました
条件を満たしたため「ゴブリン殺し」「プレスアタック」を獲得しました
ゴブリン(亜種)を倒したことにより能力の一部を簒奪しました
「言語・ゴブリン族」「棍棒の扱い方」「小鬼の威嚇の鳴き声」を獲得しました』
アナウンスが流れる。思った通り、戦うと経験値でも手に入るのかレベルが上がるようだ。アナウンスが流れると同時に何となくだが力が溢れてくるのがわかった。しかもさっきスライムを食べた時より圧倒的に。
亜種って表示からして相手がレアだったのか一回の戦闘で七も上がるとは思っていなかったが、いい意味で予想が外れたので満足である。しかも今回手に入れたスキルは中々よさげなのばかりだし命を張ったかいがあったというものだ。
「それにしても、殴られると滅茶苦茶痛いのな」
さっきまで集中していたせいか痛みを感じなかったが、それが解けると同時に全身に激痛が走る。スライムの柔らかい体なら物理攻撃なんて効かなそうなイメージなのだが、そんな都合よくはいかないってか。
とりあえず、この状態で襲われたら不味いので近くに生えていた薬草を食ってみる。すると、食った瞬間にわずかだが体の痛みが引くのがわかった。
どうやら毒草などもそうだったし、薬草などのアイテムには即効性があるようらしい。普通なら効果が出るまで時間が掛かるだろうに、こういうところはゲームみたいだ。どういう基準なんだか。
薬草を食いまくって体の痛みが癒えたところで倒したゴブリンの肉を食ってみる。これでまた力が得られる……と思っていたのだが全く力が手に入る感じがしない。
スキルが得られないのはともかくそれまで感じていた経験値っぽいものが、力が手に入っている感じすらしないのだ。ただ肉を食っているだけのような気がする。
「おっかしいなー」
食べれば力を得られると思い込んでいたが違うらしい。でも、だったらなんでスライムの時には力が得られたのだろうか。全く以て謎である。
情報が少なすぎるし、今考えこんでも埒が明かないのは目に見えているのでその思考は一時停止にして後に回すことにした。
とにかく今はレベル上げだ。まだすべてのスキルを獲得したわけではないし、次の獲物を探さなければ。
ただ、スライムの巣穴を出てから何だかんだ時間が経過している。一応、狩りにはあと何回か付いて行って色々情報を得たいと思っていたので、ここらで一先ず帰還するとしよう。
ゴブリンの死体は放置することになるが致し方ない。余計な力を使う余裕なんてないし、自分の事だけで精一杯な今、埋葬してやることもできない。
「……行くか」
オレは妙な居心地の悪さを振り切って来た道を折り返していった。




