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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第三部 ギルド編

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幕間 ミラの予感

 オズさんが予選の決勝を危なげなく勝利して、その後倉庫に戻って少し経った時、それは起こった。


 エルフ族は基本的に目や耳が人族よりも優れている。その所為か、お昼休憩になっても騒がしい観客席にいたというのにその異変に気が付くことができた。


「……モンスターの鳴き声がします」

「ミラ、どうしたの?」


 私の様子に何かを感じ取ったのかチャットが話しかけてくる。こういうところを見る限り周りのことをしっかり観察していて視野が広いのに、どうして時々呆れるほど抜けるのか不思議ですらある。


(って、そんなこと考えている場合じゃなかった)


「はっきりとは聞こえなかったんですけど、モンスターの鳴き声が聞こえた気がして」

「午後の本選の準備をしてるとかじゃないの?」

「まだ開始まで一時間近くあるし、準備にしては早過ると思います」


 それに、そろそろ救援隊の人達が倉庫内に侵入するか、既にそうしているはずだ。そこで何か起こったのだろうか。


 大会の参加者として目を付けられているかもしれないので私とチャットは救援隊に参加できなかったが、無理を言ってでも参加するべきだっただろうか。


(もし何か起こってるとしたら、まず間違いなくオズさんも巻き込まれてるはず)


 あのお人好しのオズさんが戦いをただ見ているわけがない。どうせ、私の時みたいに無茶してでも助けようとするに決まっている。オズさんの存在は他人に知られれば知られる程危険が増すのをわかっているのに、その上でばれてもいいと思っているのだから始末に負えない。


(でも、そうだからこそカッコいいと思えるんだけど……って何考えてるの、私!)


 さっきチャットと話した内容がまだ頭から離れていないのか、どうしてもそういう風に考えてしまう。落着け、私。今はそんな場合じゃない。


「さっきから急ににやけたり、赤くなったり様子が変だけど大丈夫?」

「だ、大丈夫です。ええ、全然大丈夫です」

「そうは見えないけど」


 これ以上突っ込まれたら隠し通す自信がないので、


「と、とにかく私は気になるので少し周りの様子を見てきます。チャットはここで周りを見ていてください」


 そう言い残して私は席を立った。実際、モンスターの鳴き声は気になっていたので逃げるためだけの言い訳ではない。


(まあ、半分くらいはそうだけど)


 またしても余計な事を考え掛けたが、即座に思考停止。


 とにかくここまで聞こえるほどのモンスターの鳴き声がしたのは変なので調べてみることにした。


 観客席からの階段を下ると闘技場の外壁に沿うようにして作られた通路を進むことになる。


 ここの構造はまずは円形の闘技場があり上に観客席が、下に控室と闘技場などがある。そして、これが本館と呼ばれている。


 そして、その横に隣接するかのようにしてある別館の方にこの通路が繋がっており、そこは基本的に関係者以外立ち入り禁止。


 モンスターを隔離しておく倉庫もそこにあるはずで、距離的に鳴き声が聞こえるなんてことは起こることは滅多にないはずだった。だからこそその声に私は違和感を覚えていたのだ。


(とは言っても、忍び込むのは無理だよね)


 大会の係員は全員身分証明書を胸に着けているし、あれがないと入口のところで捕まってしまう。誰かから奪う事も考えたが、それは危険過ぎるので却下だ。まだ何か起こったと決まったわけではないし、勝手なことはできない。


「とりあえず、行ってみよっかな」


 入り口付近ギリギリまで近づいて何か聞こえてこないか確認してみよう。それで何もなかったら戻ればいい。


 そうして着いた別館の入り口で私は更に大きな鳴き声を聞いた。いや、これは鳴き声というより咆哮だ。こんな大きな声が聞こえて来るなんてやっぱりおかしい。


 そう思って耳を澄ましていると、遂に決定的なものがやって来た。


 やって来たのは観客席にまで伝わっているだろうと思われる、何かが崩れ落ちるかのような轟音に加えて激しい揺れ。どう考えても何かが起きているのは間違いない。そしてそれにあのオズさんが関わっていないわけがなかった。


 すぐさま私は別館の入口にいた係員の人に話かけた。


「あの、この揺れって何があったんですか?」

「わ、わかりません。とにかく危険かもしれないのでここには近寄らないでください」


 動揺している割には口を滑らせることはなかった。けれど、動揺しているということは余程の事態に陥っているという事の証明でもある。


 どうにかして情報を聞き出したかったが、引き下がっても教えてはくれないだろう。一旦離れて様子を窺おうとした時に、


「ミラ嬢」


 何処からともなく声を掛けられる。いきなりのことに驚いたが、よく聞いてみればこの声は肉屋さんの声だ。


 会話を聞かれるわけにはいかないから入口から少し離れて小声で話し出す。


「どうしてこんなところにいるんですか? オズさんと一緒じゃないんですか?」

「白骨は捕まっていた奴隷の方達を連れて先に避難いたしました。オズ殿は一人でレゾナス教の刺客を足止めされています」

「そんな……救援隊はどうなったんですか?

「返り討ちにあったようです。何人かは生きていたので奴隷の方と共に別館の一室で隠れて頂いております」


 ということは、オズさんは救援隊を一蹴した相手とたった一人で戦っているというのだろうか。何で毎回そんな無茶をするのだろう。


「じゃあすぐにでも助けに行かないと」

「いえ、倉庫に行っても意味がありません」

「何故ですか?」

「刺客というのが名付きだからです。しかも、かなり力を持った。間違いなくグーラよりも遥かに高位の名付きでしょう」


 肉屋さんの言葉を疑うつもりはなかったが、この言葉はそう簡単に信じられなかった。


「どうして名付きが教団の刺客なんてやってるんですか!?」

「それはわかりません。ですが、名付き同士が戦うにはあの倉庫はあまりにも狭く脆すぎる。この振動から察するにあの二人が決着をつける前にあの空間が崩壊する方が早いのは目に見えています。そうなればオズ殿は戦いの場を別の場所に移すでしょう。広くそして名付きが全力で暴れても周囲に被害を及ばさない場所に」


 そんな条件に合う場所はここには一つしかない。


「闘技場ですね」

「恐らく」


 確かに闇の力を得たオズさんの全力は強力な分、周囲にもたらす被害も並大抵の物じゃなかった。オズさんが巻き添えを無視するなんて出来るはずないし、全力を出せる場所まで相手を誘導してやってくることは十分に考えられる。


「……わかりました。私は先に闘技場に向かいます」

「白骨はチャット嬢にこの事を伝えに行ってまいります」


 そうして私は闘技場へと急いで向かうのだった。

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