第二十六章 乱入者
距離的にオレとゲオルギウスのちょうど中間付近にあった倉庫の扉を開けて入ってきたのは係員らしき男達だった。その手には武器が握られている。
「何事……だ?」
リーダーらしき男の威勢がよかったのは初めだけで最後の方の言葉はほとんど掠れていた。目の前の状況を理解できないのか、全員固まってしまって動こうとしない。
係員達から見て左を見れば禍々しい大剣を今にも振り下ろそうとしているスライムが視界に入る。それは当然オレなのだが。
右を見れば天井すら焼くほどの勢いで吹き荒れる火炎に焼かれながらも、その影だけで体の大きさと存在感がいやでもわかるケルベロスのゲオルギウスがいる。
予想外の事態にオレやゲオルギウスを含めて全員が固まったたが、すぐにその状態から抜け出した奴は二人。
それは当たり前だがオレとゲオルギウスだ。
「逃げろ!」
オレがそいつらに気を取られたのを見逃さずにゲオルギウスが炎の壁を突き抜けて一気に距離を詰めてくる。
それでも「黒閃」を放つのには十分すぎる時間的な余裕があった。だが、オレは放つことができなかった。
(この軌道じゃ巻き込んじまう!)
圧倒的なまでの闇を全力でぶっ放す「黒閃」は威力がコントロールできない。このまま放てば中に入ってきている多くの係員まで消し飛ばすのは間違いなかった。
無理だと判断した後は体が勝手に動いていた。
大剣を二つの剣に別けると、片方からゲオルギウスの足止めをするように溜めた闇を放つ。「黒閃」とは比べようもなく細い黒い光が走るゲオルギウスの右足に被弾した。
機動力を奪っていたおかげか躱されることなく、ゲオルギウスは苦悶の声を上げながら倒れる。だが、すぐに起き上がろうとしていた。
この程度の威力ではゲオルギウスを殺しきることはできない。だが、何か手を打たなければ巻き込まれる犠牲者が出るのは避けられない。
(どうする?)
その時、視界映ったのは火炎によって焼かれ続けてボロボロになっている天井だった。
(これしかない!)
オレはその壊れかけた天井に向けて残った闇のすべてを打ち込んだ。祈りを込めた一撃は天井に吸い込まれ、急速にヒビが広がっていき、
「逃げろ!」
先ほどと同じセリフをオレが係員の奴らに言った瞬間に崩落が始まった。これには呆けていた奴らも我に返り、慌てて部屋の外へと走り出す。
「まさか熱で脆くなった天井を狙うとは」
異変を感じとったゲオルギウスも扉に向かって走り出そうとする。もちろんそれをオレが許すわけがなかった。
オレは逃げるゲオルギウスの足に後ろから剣を突き刺す。どんなに頑丈でもこの状態で走れるわけがなかった。
「バカな! 道連れにする気ですか!」
「くたばるのはお前だけだよ!」
もう一発くらわせようとしたところで地面が赤く光る。足に突き刺していた剣を抜きながら横に跳んで、湧き上がる炎を躱した時にはもうすべてが遅かった。
天井の崩落が本格化して、視界を覆い尽くす瓦礫の大群が落下してくる。もうどちらも逃げられない。
そのまま崩落に巻き込まれるようにしてオレの視界は真っ暗になった。




