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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第一部 転生編

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第六章 パンツ無きパンチラ

 洞窟で一晩を明かしたオレは朝早くから行動を開始していた。他のスライム達はすやすや眠っているので単独で、である。


 出来れば群れで行動しておきたかったが皆狩りの時間まで動かないで待っているとのことなのでしょうがない。それがスライムとしての正しい行動なのだろう。


 悪いがオレはそんなノロマなことに付き合っていられない。いち早く条件を満たして進化しなくては。


 森を跳ねることしばらく、


『条件を満たしたため「跳躍・弱」を獲得しました』


 アナウンスが流れる。それと同時に跳ねるのが急に楽になった。どうやらスキルが跳ねるのを補助してくれるらしい。これならかなり遠くまで行けるだろう。


 どうやら体当たりとかこれとかスキルがなくてもできる行動のスキルを得た場合、消費する体力などを軽減してくれたりする補助効果があるらしい。


 アナウンスの限りではこのポイズンスライムで得られるスキルはもうないとのことなので早めに別の姿になりたいのだが今のところその気配はない。いくつかスキルを得たりしているしそれなりに条件をこなしているのだが、このやり方ではダメなのだろうか。


 だったらアプローチの仕方を変えてみよう。毒を食ってポイズンスライムに進化できたことから察するに、他も同じようにできるかもしれない。毒の他に思いつく状態異常と言えば麻痺だ。


 一旦移動するのはやめて当たりの草を適当に探す。毒のある草の形は覚えているので今回はそれ以外の草を集めてみることにした。そこでわかったが、ここら一帯に茂っているのは主に三種類らしい。


 一つは毒草であることはわかっているので、他の二つに当たりがあることを願う。


 片方を口にしてみるとなんとなくだが体力が回復して力が湧いてくる気がした。たぶん、薬草の類だ。いいものを見つけられたので嬉しくないわけではないが、今欲しているものではないので次。


 もう片方を口にして飲み込むとわずかだが体がしびれる感じがする。当たりのようだ。


 辺りにあるそれを食いまくっていると体が痺れて動けなくなってくる。これだけ摂取したら充分だろう。


 今回は痺れるだけで意識が消えるような感覚はない。待っていると、


『進化条件、「麻痺摂取」をクリアにより時間制限スキル「未熟な進化の可能性」が発動しました

これにより条件を満たした種族への進化が可能となりました

現在進化可能なものは二種あります

どちらに進化しますか?

・パラライズスライム

・ネオスライム

・進化しない』


 いきなりだが、今回も頭の中でそんなアナウンスと表示が出ている。どうやら二つ条件を満たしたらしい。どちらかにするか悩んだが、とりあえず強そうなほうを選ぶことにして、ネオスライムを選択してみる。


『進化許可を確認しました

これより進化を開始します……

進化に伴い新しいスキルを獲得しました

スキル――「突進」「肥大」「収縮」を獲得しました

上位スキル「突進」を獲得したため下位スキル「体当たり」は自動的に上書きされます

なお、他の進化条件を満たしているため任意のタイミングで進化が可能です

条件を満たしたため「未熟者(ビギナー)鑑定眼(アナライズ)」を獲得しました』


 アナウンスが終わると同時に止まっていた世界が動き出す。今になって気付いたがどうやら進化の選択の最中は時が止まっているらしい。いったいどういう原理なんだか。


 とにかく今はアナウンスの内容を確認してみることにした。


『名前:なし

種族:ネオスライム(レベル1)

スキル:「毒吐き」「微毒耐性」「言語・スライム族」「未熟な進化の可能性」「共食い」「同族喰らい」「微毒生成」「微毒付与」「スライム殺し(仮)」「同族殺し(仮)」「跳躍・弱」「突進」「肥大」「収縮」「未熟者(ビギナー)鑑定眼(アナライズ)」』


 突進はアナウンスで言っていた通りらしく、例に木にやってみたら明らかに威力が違う。前はかすかに枝が揺れるくらいだったのに、今は大きな音を立てて枝を揺らしているし、若干木自体が軋んでいるところからするとかなり強化されているようだ。


 本気でやればそこらの木なら数発で折れる気がする。ギャグじゃないぞ。

 

 肥大と収縮はそのまんま。ある程度までなら大きさを変えることができるようになった。ただ、今のところ使用する理由もないので大きさはそのままにしておこう。


 最後の鑑定眼とやらは、アイテムの鑑定をできるようになった。さっきまで見てもただの草に見えなかったものがなんなのかわかるようになっていたのだ。


 毒草に痺れ草、それに薬草と予想通りのものだったが、これは便利なスキルを手に入れた。これがあればアイテムの鑑定に困ることもないだろう。しかもアナウンスの感じからして、まだまだ強化できそうだしこれから重宝しそうだ。

 

 ちなみにオレの姿はサイズが一回り大きくなったものの緑から薄汚れた白に逆戻りしていた。ただ、この姿でも毒は吐けるし習得したスキルを使用するのには問題ないようで助かる。

 

 ただ良いことばかりでもなかった。新たなスキルを得たもののレベルが一に戻っていたのだ。どうやら進化するとそれまでのレベルはリセットされてしまうらしい。


 まあ、レベルがリセットされても前までとは比べ物にならない力が体中に漲っているからよしとする。


「さてと、これからどうするかな?」


 感じからすると、この場でパラライズスライムに進化することもできる。だが、ネオスライムで得られるしスキルをすべて覚えきっていない今進化してしまうとそれらのスキルが得られないままになってしまいかねない。


 それにパラライズスライムになって弱体化してしまう可能性だってある。名前的にたぶんネオって付く今のほうが強い種族だろうし。


 なので、とりあえず今は現状維持で行くことにした。次に進化するか考えるのはレベルで得られるスキルを習得し終えてからにする。


 というわけでこれからはレベルアップを目的にして動くことになるのだが、レベルを上げるにはどうしたらいいのか。


(いや、敵を倒せばいいのはわかってるんだけどな)


 そうそう運よく倒されたモンスターの死体を食える機会があるとは思えない。前回は運が良かっただけで今後は早々そんな機会に巡り合うこともないだろう。唯一あるとすればオレが自分の手でモンスターを仕留めた時くらいか。


「……いつまでも逃げてられないか」


 正直に言えば、出来ればもっと力をつけてから戦いに挑みたかった。だが、いつ進化の時間制限が来るかわからない今はできる限り早く条件をクリアしなければならない。


 躊躇している暇はなかった。


「……よし! いっちょやったるか!」


 少なくとも相手に毒をかけてしまえばこちらが有利になる。外見から毒を吐くなんてことを予想できないはずだし奇襲で毒吐きさえ当ててしまえばよほどの相手じゃない限りオレが負けることない……はずだ。


 そう自分を鼓舞して森の中を進むこと数分、早速敵を発見した。


 幼い子供ぐらいの身長だが顔は人間のものでない。醜悪な顔に汚い緑の体、小さな鬼とでも呼べばいいだろうか、そんな感じだ。数は二匹、しかし休憩中なのか隙だらけだ。


「……小鬼(ゴブリン)?」


 草むらそいつらを凝視していると頭の中でそんなアナウンスが聞こえた。どうやら未熟者(ビギナー)鑑定眼(アナライズ)は物だけじゃなくモンスターにも効果があるようだ。


 二匹のゴブリンの装備は一匹が棍棒なような物でもう一匹は見る限り何も持っていない。衣服も身に着けていないし、武器を隠し持っているなんてことはなさそうだ。


 狙うは武器を持っている方、そいつに奇襲で毒吐きを食らわせて後のは突進でやってやればいいはず。


 そう頭でイメージしてはいるもののオレは中々動き出すことが出来なかった。だってそうだろ。今まで荒事の経験なんてほとんどないってのに、いきなり命がけの狩りをやれなんて無茶振りにも程がある。


 前にスライムを食えたのは、焦りと驚きから半ば夢現であったのからだ。一晩経って少し冷静さを取り戻した今のオレにしてみれば何であんなことが出来たのか不思議でならない。自分が自分じゃなかったとすら思う。


(恐い、めっちゃ恐い)


 何か一つ失敗したり見落としていることがあったりすれば死ぬかもしれない。そうじゃなくても、運が悪くてなんてこともあり得る。命を懸ける、それは実際に体験してみると想像していたのと比べ物にならないくらいに恐怖を感じさせるものだった。


(でも!)


 ここで行けなきゃオレは一生言い訳して行けない気がする。一人じゃ危ないとか言って危険から遠ざかって生きる。それも悪くない。けど、スライムであるオレがそんな生き方を出来るのだろうか。


 巣穴に籠っていてもそこに退治に来る人がいないとも限らないし、こうやって飯を確保しに来た時に他の魔物に狙われることもあるかもしれない。


 そう、考えればきりがないのだ。情報がほとんどない今、オレが目指すべき指針は一つ。


 それは強くなること。


 弱ければスライムAみたいに殺されるだけなのだ。あいつだって強ければ人間達を殺して今も生きていたはずだ。返り討ちにならずに今もオレと会話したり、もしかしたら友人にだってなれたかもしれない。でもあいつは弱かったからその可能性は永遠に潰えた。


 それに、強くなる為には今ここで引いては行けない。そんな予感がオレにはあった。あの時、少女の死に様を見たかのようないきなりの直感が。


 音を立てないようにそいつらの背後まで移動して、大きく息を吸って覚悟を決める。


(三……二……一……)


 一度に出せる毒の量は限られている。ありったけの毒を口の中に作り出して、


(零!)


 オレはゴブリンの背後から飛び出した。


 ゴブリンは葉が揺れる音に気付いて振り返るが、こちらの事を視認する前に武器を持つ方の顔面めがけてすべての毒を吐き出す。


 背後からの奇襲であったこともあり相手には避ける暇なかった。頭から浴びるように毒を食らったゴブリンは握っていた棍棒を放り出し、顔を手で覆って地面をのた打ち回る。


(まず一匹!)


 運よく目に入ってくれたようだし、これで死ぬかはわからないがしばらくは行動不能のはずだ。


 何が起こったか理解できていないようで呆然としているもう一匹の腹めがけて、飛び出した勢いを緩めることなくそのまま突進する。


 体に当たる瞬間目を瞑ってしまったから見れはしなかったが、骨が砕けるような感触が体越しに伝わってくる。目を開けた時にはゴブリンの体は宙に浮いていた。


 そしてそのまま地面に打ち付けられるようにして倒れて動かなくなる。いや、ピクピク痙攣してはいるのだがどう見ても最後の断末魔のようなもので死に掛けなのは明らかだった。


 ただ、念には念を入れて少量だが毒を顔に吐いて目を潰しておこう。シュウシュウという音を立てて完全に目を潰してやった。まあ、すぐに動かなくなったから意味なかったが。


 ほっと一息ついて振り返ると、毒にのた打ち回っていたはずのゴブリンがいない。と思ったら、


「ぐう!?」


 衝撃と同時に体がグニャっと形が変化するという人間じゃあり得ない感覚を覚えたと思ったら、次の瞬間には吹っ飛ばされる。感じからして棒状の何かで背後から殴られたようだ。


 わずかな時間それにへばり付き、そしてすぐに吹き飛ばされる。

 結構なダメージなのか一瞬走馬灯のように自分が死に掛けた時のことが見えたくらいだ。


 スライムの体はゼリーのような柔らかさと比例するかのように軽いようでまるでホームランのようによく飛ぶのだ、これが。運よくすぐ傍の木に当たってそこまで飛ばされなかったからいいものを、そうじゃなかったらどこまで飛ばされたことか。


 その棍棒で横殴りの一撃を放ったのは当然のことながら武器を持ったゴブリン以外何者でもない。怒りに満ちた表情で棍棒を振っている。


 顔の部分は赤くなってただれてはいるもののさっきのゴブリン程ダメージを負っている様子がない。レベルが高いのか、耐性でも持っているのか知らないがこいつには毒の効き目は薄いようだ。


 ゴブリンは逃げるそぶりは見せず、怒りのままに棍棒を振り回しながら突っ込んでくる。その動きに知性はなく野生の本能そのものという動きだった。


 普通なら血走った目で殺そうとして来る姿を見れば恐怖を感じるはずなのに、オレはそれを見て何故だか逆に冷静に慣れた。


(こいつはただ怒りに任せて棒を振り回しているだけ。獣そのものだ)


 だったらこっちは元人間の知性で対抗してやればいい。頭に血が昇った獣に負けるなんて元人間の名が泣くってものだ。


 オレはすぐに出来る限りの毒を作ると、狙いを定めて吐き出す。当然、奇襲でこれ以上ないくらいのタイミングにありったけの量の毒をくらわせても生きている相手にほんのわずかな時間で作った毒でダメージを与えられるなんて思っちゃいない。


 オレが狙ったのはゴブリンの足元、もっと正確に言えばゴブリンが次に踏み込むであろう場所に毒の液体を仕込む。


 ゴブリンは怒りのままに一歩を踏み出した。結論から言えば生涯最後の一歩を。


「ギイ!?」


 驚きを表すかのように鳴き声を上げてゴブリンはまるで漫画のようにひっくり返る。毒によってぬかるんだ地面に足を取られたのだ。


 さっき走馬灯か何かで死に掛けた時の事を思い出して思いついたのだが、うまいこと嵌ってくれた。おまけにパンツを履いているわけもないから見たくないものをサービスショットで見せつけてくれる。吐き気がするっての。


 その隙を逃さずオレは全力でそいつの上空に跳躍する。跳躍のスキルを覚えたからか思った以上に飛び上がれた。そしてそのまま先程習得したもう一つのスキルを発動する。


「おらああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 数倍近くまで膨れ上がった体でオレは重力に逆らうことなく、そのままゴブリンに突っ込んだ。

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