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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第三部 ギルド編

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幕間 ミラの迷い

 オズさんがその身を危険にさらして情報収集している間、私も密かに行動していた。もちろん私が下手に動いてギルドの内通者だとばれればオズさんにまで危険が及びかねないから、怪しまれないように最低限のことしかできなかったけれど。


 ただ、その成果は芳しいものではなかった。はっきり言ってしまえばわかったことは何もないという事なのだけれど。


「やっぱり大会の参加者程度じゃ大して情報は得られないみたいですね」


 観戦に来た一般客よりは自由に動けると言っても制限はある。多少の危険を覚悟して、立ち入り禁止の奥に忍び込めば話は違うかもしれないが、それは前述の理由で出来ないとなると動きようがなかった。


「私達じゃどうしようもないし、オズに任せるしかないわよ」


 そうのんびりとした口調で言うチャットは試合観戦の方に完全に興味が行っていた。


「それは分かってますけど……」


 オズさんが頑張っているのに自分だけ何もしないのは嫌だった。これまでだって頼りっぱなしだし、次こそは私がオズさんを支える側になりたい。


 私はそう思っていた。


「ねえ、ミラ」

「なんですか?」


 無駄とは知りながらさりげなく周囲を観察する私にチャットが話しかけてくる。これまでみたいにまた何か初めて見る物の説明をして欲しいのだろうか。


「あなたはオズのことを好き?」

「な!?」


 反射的にチャットの方を振り迎えってしまう。周囲の様子を探ることなんてどこかに飛んでいってしまっていた。


 私は慌てて視線を元に戻した。ただ、動揺は隠せなかったが。


「な、何を言ってるんですか、こんな時に」

「別にいいじゃない。というよりオズがいない今しかこういうことは話せないでしょ?」

「……まあ、そうですけど」


 オズさんの前でこんな話をされるなんて考えただけでも恥ずかしすぎる。絶対にそんなことはさせてはいけないことだ。


「……チャットはどうなんですか?」


 自分の答えは言わずに相手に言わせる。ズルい方法だ。


 そう思っていてもなにより私は自分の答えを口に出すのが怖かった。言葉にするともう後戻りできない気がして。


 そんな私の葛藤を知ってか知らず家チャットはあっさりと答えを口にした。


「もちろん大好きよ」

「そ、そこまで言い切れるんですか。まだ会って間もないのに」


 実際、三人で行動してまた半月も経っていないのだ。思いを否定する気はなかったが、そうなる期間が短すぎやしないだろうか。


「時間なんて些細な物だってお母様も言っていたわ。本当に大事なのは自分の気持ちだって」

「……そうですか」


 正直、こんな風にはっきりと思いを口にできるチャットを私はうらやましく思っていた。自分にはない素直さを持ってオズさんに甘えている姿を見ると嫉妬すら生まれてくるときがある。


 自分からは何もしないしできないのに。


「ゆっくり想いを育むのも否定はしないけど、のんびりしてると私が先に奪っちゃうんだから」

「……」


 こんなにもわかりやすく、はっきりと宣戦布告されたというのに私は何も言い返せなかった。だって言い返したらそれが答えになってしまいそうだったから。


 種族の差はどんな言葉で取り繕っても大きなものであることは変えられない。ましてやモンスターとなれば尚更だ。


「……そんなことより今は依頼の方が優先です!」


 だから私はそう言って答えから逃げる。もう少しだけこのままでいたいから。一歩先に踏み出せば、辛い思いをすることがわかっているから。


(後少しだけこのままで)


 そんな些細な願いが少し先の未来で跡形もなく打ち砕かれるなんてこの時の私は想像さえもしていなかった。

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