第十三章 教団
ギルドでまた個室に通されたオレ達を持っていたのは、当然ながらランディだった。
「色々と遅くなってしまってすまないね」
「それはいいけど、一体何があったんだ?」
カーラの様子からしてただ事ではなさそうだった。面倒なことにならなければいいのだが。
「色々と困った情報を手に入れてね。まず、今回の闘技大会の裏にはかなり厄介な連中が潜んでいるようなんだよ。これを見てくれ」
ランディはそう言って一枚の紙を差出してくる。そこには四足の獣の背中に大きな剣が突き刺さっている、絵というよりは模様とも言うべきものが描かれていた。
これを見たミラはすぐに反応する。
「これってレゾナス教の紋章ですよね?」
「その通り。今回、違法奴隷を影で扱っているのはこの教団みたいなんだよ。まあ、らしいと言えばらしいのだけどね」
「そうなのか?」
名前や教団ってことから宗教関係の組織だってことは理解できる。勝手な考えだが、その神を信じる信徒とかが奴隷を扱うとはイメージできなかった。
「このレゾナス教の主義を一言で表すなら人族至上主義。それ以外は神の敵であり滅ぼすべき、というかなり過激な思想なんだよ」
「そりゃまたヤバ過ぎる奴らだな」
エルフとか妖精など様々な種族がいるこの世界でその思想。頭がいかれているとしか思えないのだが。
まあ、前の世界でも人間は魔女狩りとかやっていたことを考えると強くは言えない。人が場合によっては同族ですら迫害することは残念ながら紛れもない事実なのだから。
そして、オレも元はその人間だったのだし。
「その人間大好き教団がなんでまた奴隷なんて扱ってるんだ? その話からすると、獣人族とやらも滅ぼす対象のはずだろ?」
捕まえたりせずに、殺すのがそいつらの主義としては正しいはず。正直、反吐が出る話だが。
この質問にランディは苦笑いをしながら答える。
「教団も組織であるからには少なくない資金が必要になってくる。過激な思想のせいか信徒は多いほうではないから、活動資金に困っていても不思議ではない」
「つまり、どうせ殺すなら有効活用しようってか」
何ともいい加減な話だ。神の敵とやら滅ぼすのが目的なのに、その神の敵を使って金儲けを企む。矛盾しているとしか言いようがない。
「確かにおかしな話なのだけれど、彼らも金がなくては活動できないのだろうさ」
何とも人間の業の深さを嫌でも感じさせられる話だ。
「さて、話を戻そう。その教団の今回の取引相手なのだが、この国の貴族である可能性が高い」
貴族と言われてもオレには偉い奴ってことしかわからないのだが。そもそも、ここが何て国に属するのかも知らないし。
「レゾナス教団は人族以外を迫害しているが、逆に言えば人族に対してはかなりの優遇をする傾向がある。貴族みたいに大金を落としてくれる相手なら尚更に。それがこの教団のうまいところで、権力者と通じることによってその犯罪行為が表沙汰になるのを未然に防いでいるようなんだ。ギルドとしても貴族に庇われた者を相手にするのは分が悪く、手が出せないのが現状というわけさ」
「今回の奴隷もその貴族への貢物ってところか」
「その可能性が高いね」
貴重な奴隷を裏取引で渡して、金と自分達の安全を買う。胸糞悪い話ではあるが、賢いことも否定できないやり方だ。
どんな場所でも基本的に弱肉強食、弱い者は搾取されるしかないのは変わらないらしい。今はどちらとも言い切れないが、少なくとも前の世界ではオレも搾取される側だった。
どんなに不正を見咎めて正しいことを主張しても、力がなければ潰されるだけ。そんなのは飽きるほど見てきたのだった。
「この教団がどこまでこの件に関わっているかはまだ不明だけど、用心だけはしておいてほしい。彼らに目を付けられたらかなり面倒なことになる」
「了解、覚えておくよ」
その教団がこのパーティを見たら、獲物以外の何物でもない。人間が一人もいない上に、半分はモンスターだし。
狙われるのは御免なので気を付けよう。
そうして詳しい依頼の内容について説明を受けた後、オレ達は宿に戻ってゆっくりと休み、大会当日を迎えるのだった。




