第五章 喰って得るもの
一分も掛からずに決着は付いた。どんでん返しが起きるはずもなく結果は順当と言えるものだ。
既に人の集団は先に進んで行っており今オレの視界に映るのは先程まで生きていたはずのスライム達の骸、それだけだった。
当たりに何も気配がないのを確認してオレはひとまずその骸に近付いてみる。誰か生き残っていないかと思ったがそんな甘い幻想はあっけなく打ち砕かれた。全員、いや全匹これ以上ないくらいに死んでいる。
スライムAも剣で斬られて、体を半分に大きな切れ目を作ったまま静止していた。ほとんど関わりがなかったとはいえ先程まで一緒にいた相手が物言わぬ屍になるというのは予想以上に精神的にくる。
でも、これがこの世界では当然のことなのだろう。モンスターがいて食われる奴もいれば、それを退治する奴もいる。ここはそういう弱肉強食の世界なのだ。そして紛れもなくオレもその輪に組み込まれている。
だったら今ここでするべきことは悲しむことでもなければ、恐怖におびえることでもない。強くなるために、生き残るために行動するべきなのだ。そうできなければ死ぬ。スライムAと同じように無残に、何の価値もないかのように。
それは御免だった。理不尽な死は一回で十分だ。
(考えろ、今この場でオレは何をするべきだ?)
このまま立ち去るのもありだが、本当にそれでいいのか。ここで何か得られるものはないのだろうか。
そういえば先程は毒草を食って新しいスキルを得られた。だとすれば他のものを食って力を得られるかもしれない。
そう例えば、今死んだばかりのスライムを。先程まで生きていたし新鮮であることは間違いない。耐性を手に入れているのだから多少の毒があったところで問題もないはず。そう、何も問題はない。心情的な面以外は。
ただ、早く食わなければ誰かがやってこないとも限らないし段々スライム達の体が溶けるように崩れていく。
思っていたのとは違ってスライムは生きている間はゼリーのようだが、死んだら形を保てないのか液体になってしまう生物だったらしい。最初に死んだ奴は完全に白く濁った水のようになってしまった。時間はない。
オレは決心してスライムAの体に食いついた。嫌悪感がないわけがない、吐きそうなくらいに抵抗感がある。けど、それらを抑え込んで食い続ける。
吐き気を押し殺して(スライムが吐けるのかはわからないが)味のないゼリーのような体を飲み込む、すると
『条件クリアに伴いスキル「共食い」「同族喰らい」を獲得しました』
頭の中でまたあのアナウンスが流れる。ステータスを開いてみたらやはり、スキルにその二つのスキルが加わっていた。
思った通り、最初のアナウンスの通り、何らかの条件があってそれらをクリアすればスキルが得られたり進化できたりするようだ。
最初は毒摂取だから毒を食ったこと、今回はスライムであるオレが同族であるスライムを食ったからだろう。今、得たスキルの違いがいまいちわからないがわざわざ分けて習得したのだ。何らかの意味があるのだろうか。
それにしても一口で二つもスキルが得られたのだ。もっと食えばどうなるのだろうか。オレは一心不乱に食えるスライムの骸を腹に収めていく。
ただ、今度は不思議と不快感がなくなっていた。慣れるには早すぎるし、先程得たスキルの影響だろうか。なんにせよ助かる。
しばらくしてすべてのスライムを食いつくした結果は、
『レベルが5まで上がりました
規定レベルに達したため「微毒生成」「微毒付与」を獲得しました
また、この種族におけるレベル獲得スキルは完了しました
条件を満たしたため「スライム殺し(仮)」「同族殺し(仮)」を獲得しました』
こうなった。四つスキルを得られたのは満足だし、レベルも上がった。どうやら敵を倒すだけがレベルを上げる方法ではないらしい。
それはそうと、(仮)ってなんだ。効果の説明はないのでわからないが気になるな。
「……ごちそうさまでした」
何と言っていいかわからないのでとりあえずそう言っておいた。あいつらの血肉のおかげで新しい力を得られたのだから感謝しなければならないだろう。
さて、これからどうするか。このままここにいては危険だし、そろそろ夜だ。身を隠せるようにしておきたい。
となると、先程の洞窟に戻るのが一番か。今から隠れられる場所を見つけられるとは限らないし、下手にうろついたら何が起こるかわからない。仕方ないならともかく、無駄なリスクは避けるべきだ。
こうしてオレは一人で巣穴に戻っていった。




