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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第三部 ギルド編

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第九章 金の力

 ミラとチャットが目を覚ましたのは、オレが起きてから一時間以上経ってからの事だった。


 朝食はミラが前もって三人分頼んでくれたおかげで、オレも普通の飯にありつけたのは感謝するしかない。


 そうして飯を食い終わった後は、先日受けたヘルハウンドとゴブリンの討伐をするために街から出る道を進んでいた。


「ここって街の四方に門があるんだったっけ?」

「その通りです。ギルドマスターの話だと警備が厳しい北側以外ならいつもと同じように自由に出入りできると思います」


 何でもギルドに登録している冒険者はギルドカードを提示すれば大抵の街や国境を自由に移動できるのだとか。現在の北の門のように緊急時には別らしいが、それでも便利なアイテムである。


 ギルドカードとはギルドに登録した時にもらえる、いわば身分証明書みたいなものらしい。いつの間にか知らないが、チャットもカーラから受け取っていたみたいだった。今朝になって自慢げに見せてきたし。


 ちなみにミラが北の門から入ってくる時にそれを使わなかったのは、オレ達と一緒に行動するためという意図もあったらしい。オレは檻の中で何もできないし、チャットを一人にするのは心配なのは否めないのはオレとミラの共通の認識なので当然の行動とも言えた。


 本人はその評価に不満気だったが黙殺した。誰がどう見てもこっちが正しいと言い切れる自信がある。


 こうして街中を移動してみると、やはり活気があった。昨日のギルドの帰り道で買い物に付き合わされた時は、ミラが金を浪費しないかの監視であったり、チャットがフラフラとどこかへ行こうとしたりと注意することが多すぎて、ほとんど周りの様子を気にすることも出来なかったのだ。


 ってか現在もミラは時折、物欲しそうな目をして店を見ている時がある。まだまだ気を抜いてはいけないらしい。


「ミラ。買う事自体は構わないが、ちゃんとこれからのことも考えてくれよ」

「わ、わかってます。……たぶん」


 最後の言葉が余計なのだが。まあ、自覚してはいるようなのでまだましかもしれない。


 金を預かれれば良かったのだが、生憎こんな体では金を管理することもできない。肉屋に頼もうかとも思ったが、この程度のことであいつを使うのはなんか違う気がしたので止めておいた。


 チャットに預けるのは論外だし。


 そうそう、現在そのチャットは、


「私こんないっぱいの人を見たの、初めてだわ」


 オレを籠ごと抱えて、初めて見る光景にキラキラと目を輝かせていた。


「なあ、本当に付いて来るのか? 宿で待ってた方がいいんじゃ」

「それは嫌」


 最後まで話させてくれずに否決された。朝食の時にモンスターの討伐行くとなった時から説得を続けているのだが効果は認められない。むしろ逆効果になっている気すらする。


「でも、危険があるってこと本当にわかっているのか? 万が一の時はモンスターに殺される可能性だって零じゃないんだぞ」

「その話は朝から何回も聞いたわ。わかってるから大丈夫よ」


 そんな浮かれた様子でわかっていると言われても信用できないのだが。


「まあまあ、私達が付いているし無理をしなければ大丈夫ですよ。それにこれからの為にもチャットがどれくらいやれるか見ておいた方がいいですし」

「いや、そうかもしれんが」


 意外なことにミラも賛成では、オレ一人でいつまでも反対してもいられなかった。ただ、不安は拭えない。


(なるようになる、そう思うしかないか)


 ここまで来たら腹を括るしかない。オレは何かあったらフォローをしっかりすると、改めて覚悟を決めた。


 そこでふと、関係ないことが気になった。


「ミラってオレとか肉屋のことはさん付けだけど、チャットの事は呼び捨てだよな」


 本当にどうでも良い話だが気になってしまったのだから仕方ないだろう。


「私は基本的に男性にはさん付けしますよ? 襲って来たりした人とか敵にはさすがに敬称は付けませんけど。……ま、まあ、オズさんなら呼び捨てにしてもいいかな、なんて思わなくもないですけど」

「……オレ、敵だと思われてる?」

「そういう意味じゃありません!」


 墓穴を掘りかけただけど、どうにか誤魔化した。


 そうこうしている内に、門が近づいて来る。それと比例するかのように人の数が減って来たのでオレは静かにしておいた。さすがのここで話したらオレの声を聞かれるだろうから。


 ミラが門番と二、三言会話してすぐに戻ってくる。どうやら本当に北以外の検問はちょろいようだ。


 そうして門をくぐる時、ふと視界にある光景が映りこんだ。商人らしき人物が一人の門番の手に何かを握らせていた。種類はわからなかったが硬貨の類だろう。


 所謂、賄賂という奴だ。


「あの程度のことはどこでもあります。ここはむしろまだましな方です」


 ミラが視線をそちらに向けることなく言ってきた。禁止されてはいても、黙認されているのが現状というわけだ。


 こんな状況じゃ、違法奴隷とかが紛れ込んでもわからないのは仕方ないだろう。なにせそれを阻止するはずの門番が協力してしまっているのだ。ランディは人材不足が深刻と言っていたが、まさにその通りだろう。


(まあ、それならそれでやりようもあるけどな)


 人間、綺麗事だけじゃやっていけないのは前の世界でも充分に学んできている。そして金の力の偉大さも同様だ。


 金は人を狂わせる、それはこっちでも同じらしい。自分もそうならないように気を付けるとしよう。


 そうしてオレ達は東の門を抜けて、モンスターが蔓延る平原へと足を踏み入れるのだった。

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