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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第三部 ギルド編

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第八章 種族の壁

 朝日が顔に降り注いだことでオレは眠りから覚める。


「ん、朝か」


 やはりこっちの体になってから寝起きが良くなっている気がする。まあ、野生のモンスターが朝弱いとか格好つかないか。


 ちなみにこの部屋は二人部屋なのでベッドが二つ。そしてオレはその内の一つを使っている。


 さて、ここで単純な計算を行おう。ベッドが二つ、それに対して二人と一匹がいる。肉屋は初めから数に入っていないのであしからず。


 当然ながらベッドが一つ足りないわけだ。オレが片方使っていることからわかるように残るベッドは一つ。


 この場合出される答えはもう片方のベッドでミラとチャットが仲良く寝ている、だ。そう考えた人物は物凄く正しい。これ以上にないくらいに正しい事をオレは保証しよう。


 実際にはオレの両隣でスヤスヤ眠っているのだが。一つベッドは使わずじまいである。


 何故こうなったか、昨日の就寝時に何故だかチャットとミラが揉めたからだ。


 その時、オレは檻の中で寝る気だった。そして二人がベッドを一つずつ使うものだと思っていた。それが普通だろう。


 だが、チャットの、


「オズ、一緒に寝ましょうよ」


 の一言で事態は急変したのだった。


 オレはキッパリ断ったのに、そうしてくれないと寝ないと駄々をこねるチャットを見ていたら何故かミラが怒る。しまいにはミラがずるいと言い出すのだから本当に困った。


 そうしている内にどちらがオレと寝るかで争って、いつの間にかオレが檻で寝る選択肢はなくなっていた。こっそり檻に入って寝ようとしたら二人に引きずり出されたし。


 結局肉屋の、


「だったら三人で寝ればいいのでは」


 という一言で争いは平定、一時休戦となった。あくまで休戦であり、今晩また同じ争いが再度勃発するのは明らかだが。


 オレも一応、前世では三十年近く生きた。だからどっかの鈍感系主人公のように、この二人がこちらに向ける感情に気付いていないわけではない。自惚れに聞こえるかもしれないが、見当は付いている。


 だけど、あえてオレはそれに気付かないふりをしていた。


「よいしょっと」


 日の高さからしてまだかなり早い時間のようだし、二人を起こさないようにこっそりとベッドから降りる。二人とも久しぶりに野宿ではなくまともにぐっすりと眠ることが出来たのだ。こんなに早く起こしては可哀そうだ。


「おやおや、両手に花をもっと味合わなくてもいいのですか?」

「茶化すな、骨」


 肉屋がどこからともなく姿を現す。


「冗談はさておき、どうされるのですか?」

「何がだよ」


 話の流れ的に何を聞かれたのは分かった。だが、オレはあえて分からないふりをしたのだった。


「お二人の想いに応えないのですか?」

「……そんなこと、出来るわけがないだろう」


 そう、出来るわけがない。オレはどんなに強くなっても、内面が人間でも所詮はスライムなのだから。


 二人の好意は本当に嬉しい。それが恋愛によるものか、親愛によるものかを別にしても。でも、嬉しいからこそダメなのだ。


「もし、万が一オレがこの二人のどっちかを選んだとして、それで先に何が待ってる? こんな化け物と一緒になったって負担を掛けるのは目に見えてるじゃないか」


 この二人にはオレなんかよりまともで、もっと良い人が相応しい。


 例え今、二人がオレに好意を寄せていたとしても、それは一時の気の迷いに過ぎない。


 彼女達もいずれ気付くはずだ、どんなに親しくしようと、オレは人間ではないモンスターだと。奇跡が起きて想いが通じ合ったところで、そういう意味では一緒には生きられないのだと。


「きっと後悔する。それはオレにとっても二人にとってもいいことじゃないだろ」

(だからこのままでいい。仲間として旅をしていられればそれで)


 それがオレの気持ちだった。

 例えそれ以外の気持ちが僅かでもあろうが、関係ない。


 前にミラとの関係について考えた時と同じようにオレは思考をそこで停止した。それ以上、考えてはいけない。考えたらオレは気付いてしまう。自分が本当は何を望んでいるかを。


「この話はこれで終わりだ」

「……左様ですか」


 結局オレは、答えから逃げているのかもしれない。けど、今のオレにはそうすることしかできないのだった。

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