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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第一部 転生編

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第四章 人間とモンスター

 洞窟を出ることしばらく、オレは街道の近くらしきところに来ていた。


 先程の道なき道である森の中とは打って変わって草原が広がり、そこに一つの線のように整備された道が続いている。

 これもゲームでよく見るものだ。


 その街道の近くの草むらに潜むのはオレの他に数匹のスライムのみ。先程の数とは数が明らかに違う。その理由は簡単。ここに来るまでの道でそれぞれ勝手に好きな方向に進んでいったからだ。どうやら狩りといっても集団でするものではないらしい。


 今、この場に集まった奴らも別段協力するような様子は見せていない。恐らくそこまでの知恵もないのだろう。


 オレは草むらで息をひそめながらものすごく嫌な予感を感じていた。いくら知能が低いとはいえこのまま獲物に襲い掛かるつもりなのだろうか。


 スライムなんて最弱筆頭のモンスターが何の策もなく特攻して勝てる可能性があるとは到底思えない。それともオレが知っているのとは形や色が若干違うように、この世界では元の世界の常識と違ってスライムは意外と強いのだろうか。

 

 答えの出ない考えをして待つことしばらく、


「エモノ、キタ」


 とスライムAが言った。


 ようやくかと思って、オレはスライムAの視線を追ってその獲物を視界に入れる。そこで絶句した。


 そこにいたのは人間の集団だったから。


 よくよく考えてみればモンスターが襲い掛かる相手の筆頭は人間以外の何物でもないじゃないか。狩りって言葉でついつい動物を相手にするとばかり思い込んでいたがそんなわけがない。人間を襲うからこそこいつらは魔物とかモンスターと言われているのだ。


 この時点でオレは狩りに参加する気はなくなっていた。いくらスライムに転生したからって好き好んで人間を殺すことをするわけがないし、したくもない。


 それに相手は人間であるもののオレのようなスライムが敵うような相手とは思えなかった。集団は剣や防具で身を固めていて明らかに戦闘出来る準備を整えている。


 何の装備もない村人とかの相手ならともかく、今のオレが彼らのような武器を持つ相手に敵う気がこれっぽっちもしない。一回進化しているオレですらそうなのだ、それ以下のスライムでは結果は火を見るよりも明らかだろう。

 

 だというのに、他のスライム達は一切ためらうことなく草むらから飛び出していく。こういう時になるとそれまでのノロマな動きではなく跳ねていくのは本能なのだろうか。だとしても自殺行為外の何物でもない。


「おい、待てって!」


 オレは何とかスライムAの前に立ってその進路を塞ぐ。手も足もない今、止めるにはこうするしかない。


「ナンデ、ジャマ、スル?」


 助けてやろうとしているのに何て言い草だ、こいつ。オレはいら立ちを隠さず言い捨てた。

「見ればわかるだろ。このまま挑んだって死ぬだけだぞ!」

「ソレガ、ドウシタ?」

「な……!?」


 この言葉にオレは咄嗟に言葉を返せなかった。こいつは死ぬことが怖くないというのか。


「オレタチハ、ヒトヲ、オソウ。ソレダケ」


 その言葉でオレは理解した。こいつらにあるのは人を襲う本能だけなのだ。ほんの少しの知性はそのおまけでしかない。


 元人間であったオレとは価値観も常識も何もかもが違い過ぎる。


「サキニ、イク」

「あ、おい!」


 そう言ってスライムAは今まで見せたことがない軽快な跳ね方を見せてオレの頭上を飛び越えて行ってしまった。体しかないオレにはそれを見送ることしかできない。


 いや、たとえ手足があったとしてもオレは止められなかったに違いない。あまりにもオレと他の奴らは違い過ぎるから。

 

 案の定、出て行ったスライム達はどんどん剣で斬られ、魔法で焼かれてその数を減らしていった。ここで飛び出して行けばオレも同じ目に遭う。


 死にたくないオレは草むらに隠れたままスライム達が全滅するのを見ているしかなかった。

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