第十七章 黒の剣
目を開けるとそこは前にも見た白い世界だった。
「またかい」
そこは少し前にも来たことがある場所だった。
「ここに来たってことは、また死に掛けたってか?」
前回ここに来たのは生死をさまよった時。ここに来る条件がそれなら今回もオレは死に掛けているはずだ。
「さしずめここは、あの世とこの世の間ってところか?」
あたりを見渡すとここにあるのが当然と言わんばかりに剣が地面に突き刺さっている。そして、それ以外には何もない。
「それにしてもこの剣は一体何なんだ?」
この剣に書かれていた名前をオレは得て名付きになった。ここまであからさまな偶然があるわけないし、この剣がかかわっていることに疑いようはない。
よく見ると所々錆びついているようだし、お世辞にも良い武器とは言えそうにない。
何となく柄に触れて見ると、
「が、あ!?」
急速に魔力が吸い取られた。慌てて離すが、この一瞬だけで相当量を持って行かれている。
「ど、どんだけ大食いなんだよ」
一秒にも満たない間にどれほどの量の魔力を吸い取られたことか。下手に長い間触っているとすべてを絞りつくされてしまいかねない。
だが、その魔力を吸ったせいか所々にあった剣の錆が消えていた。よく見なければわからない程度だが確実に。
「……ようするに今回はこれにありったけの魔力を流せってか?」
前回は剣に掘られた文字を読むことでここから現実に戻ることが出来たはずだし、今回もノルマがあると考えればわからなくもない話だ。
他に出来ることもないし、やるしかない。深呼吸で精神を落ち着かせてから、柄を握って魔力を流し込んだ。
「ぐ、うぅ!」
かなりの量を吸われているが、前もって棍棒やら結晶やらで体内に溜め込んでいた魔力の分を剣が勝手に吸い取ってくれることでどうにか持っていた。
完全に消化しきれていなかったのか未だに自分のものとして扱えない魔力だったので消費するというよりは処理するといった感じか。
溜め込んだすべての魔力を使い切ったところでようやく剣は満足したのか、魔力を吸うのを止める。正直、これ以上吸われたらヤバかった。
「それにしても見違えたな」
剣はその姿を完全に変えていた。
錆びていた部分は消え去り、新品同然に戻っている。
ただし、その剣の色はなぜか黒一色だった。まるで誤って墨でもぶっかけたかのように完全な黒。それでも刃物独特の鈍い光沢を持っているのだから変な話だ。
とにかく使えそうになったし、こういう時のセオリーを考えて、剣を地面から引き抜いてみた。
「よっと」
意外に簡単に抜けた剣はやはり切っ先に至るまで純白ならぬ純黒。
そしてその剣は抜くや否や、黒い輝きを放ち始める。
(これって前の時と同じ?)
色は違えど、前に名前を読み上げた時に現れた光と同じような光だった。だとすればここから現実に帰れるということだろうか。
黒い光はあっという間にすべてを呑み込んでいき、視界はまたしても暗転した。




