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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第二部 妖精編

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第十二章 崩壊の危機

 新たなスキルのせいなのか、改めて訪れた妖精郷は前と違うように感じられた。外とは違い、尋常じゃないほどの魔力が周囲を埋め尽くすかのように漂っている。どう見てもまともな状態とは言えないだろう。


「大丈夫か?」


 結界を破るために全力を出したミラはかなり疲労しているようで、顔色もよろしくない。そもそも探索などでかなり魔力を使っていたし、疲れないわけがないのだ。


「まだまだいけますから、安心してください」


 空元気とはこのことだろう。額にも少なくない汗をかいている。

 やはり、ここからの戦いは自分が主に戦うべきだろう。この状態ではそう何回も戦えるとは思えない。


「ではまず、その結晶とやらがある場所まで行きましょうか」


 肉屋はどこにあるのかわかっているのかさっさと森の中を進んでいこうとする。それに付いていきながらオレは疑問を口にした。


「時間がないのにそんな呑気なことしてていいのかよ?」


 いち早くアベルを倒すべきではないのだろうか。


「焦っても仕損じるだけですよ。それにその女性が後どれだけもつのかも見ておかないと不味いでしょう?」


 こう言われては反論も出来ない。チャットを助けている間に死んでしまいましたでは意味がないのだ。

 敵に見つかることなく辿り着いたそこにはやはり結晶の中で眠る美女がいた。


「ふむふむ、なるほど」


 ミラには近くで休ませている間に肉屋が結晶を触りながら何かを調べている。


 ここに来るまでの間に気付いたが、この結晶はやはりと言うべきかこの異常な魔力の発生源のようだった。ここに近づけば近づくほど魔力が濃くなっているのがわかるし間違いない。


「思った以上に時間はないようですね」


 調べを終えた肉屋が初めに言った言葉がそれだった。


「今、彼女はこの妖精郷の維持と魔道生命体作成のための魔力を供給するという二つの役割を強制的に課せられています。ですがこれは普通、個人が長時間賄いきれるものではありません。この結晶が元々魔力の多い、妖精である彼女の自由を奪うと同時に体から魔力を絞り出していることによってどうにか持っていますが、それも限界でしょう」


 限界、それはつまり、


「この人は死にそうなのか?」

「今すぐということはありませんが、確実性を求めるなら三日以内に助け出すべきでしょう。そこを過ぎれば何らかの障害が残ってもおかしくはありませんね」


 三日、それが最低ラインだがそれまで助けてはいけないなんてことはない。彼女のことを考えれば出来る限り早い救出が望ましいのだろう。


「このまま敵の本拠地にて決戦、と行きたいところですがその前にオズ殿は結晶を幾つか壊してください」

「それも必要なことってか」


 道楽でそんなことをやらせるわけないし、そういうことなのだろう

 一個一個、砕いていき女性が捕らわれた結晶以外のすべてを破壊し終える。


 その砕けた欠片を肉屋は差し出してきた。食えというのだろうか。


「……やっぱり何も起きねえぞ?」


 これも食ったが反応なし。わずかばかり力が手に入る感覚があるから皆無ってわけではないがこんな微々たるものでは話にならない。それに魔力の取り過ぎか若干気持ち悪くなってきたくらいだ。


 そんなことがわからない肉屋ではないだろうに。一体何をさせたいのやら。


「いずれわかりますよ」


 さっきと同じことを言われながら、ほぼすべての結晶を腹に収めることになった。魔力の取り過ぎなのか体の中から何かが溢れ出てこようとしている感じがする。


「これでもまだ足りませんか。ミスリルスライムですから想像はしていましたが、それでも呆れた許容量ですな。ですが、後もう少しと言ったところでしょう」

「だから何をさせたいんだよ。いい加減、教えろって」

「新たな進化の条件を満たしていただいているだけですよ」


 聞きたいのはそれで何になるかだっての。問い詰めたがはぐらかされるばかりで答えない。


(まあ、仕方ないか)


 こいつに問答を続けてもはぐらかされるのは目に見えているし、時間の無駄なので諦めることにした。こいつが言わないのには理由があるだろうということで。なかったら許さん。


「その研究とやらがどこまで進んでいるのかはわかりませんが、この様子ではどちらの意味でも終わりが近いようですね」


 妖精郷の崩壊が先かアベルの研究の達成が先か、どちらにしても更なる災いが起こる気しかしない。


「それにしてもこんなバカなことをするとは」


 そう呟いた肉屋の言葉にオレは少なくない驚きを覚えさせられた。


「お前がそんなまともな感性をもっているとはな」


 まさかあの肉屋が作られた命に対して情にも似た感情を持っているとは。いつものこいつなら有用なら構わないとかくらいには言いそうなのに。


「さて、どうでしょうね」

「二人とも、さっきから何話してるんですか?」


 含み笑いのようなものを浮かべた肉屋に違和感を覚えたが、ミラが来たことで聞くタイミングを逃してしまった。


「私は大丈夫ですから早く行きましょう」

「そうだな。肉屋も他にやることはないな?」

「ええ、では参りましょうか」


 目指すはアベルの研究所、そこで最後の対決だ。

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