第二章 毒、つまりポイズン
何か聞こえる。これは……アナウンス?
『進化条件、「毒摂取」をクリアにより時間制限スキル「未熟な進化の可能性」が発動しました
これにより条件を満たした種族への進化が可能となりました
現在進化可能なものは一種、ポイズンスライムのみとなります
進化しますか?
YES
NO』
頭の中でそんな声と表示が出ている。よく分からないが進化して悪い結果にはならないだろうしオレはYESを選んでみる。
『進化許可を確認しました
これより進化を開始します……
進化に伴い新しいスキルを獲得しました
スキル――「微毒耐性」「毒吐き」を獲得しました
条件を満たしたため「言語・スライム族」を獲得しました』
そうアナウンスが響いた瞬間、視界が開けた。
目を開けるとオレはいつものベッドの中、なんてことはなく先程いた草が生い茂る場所にいた。
どうやらまたしても死ななかったらしい。しぶといといういかなんというか。
毒の取り過ぎで意識を失ってしまったみたいだが、命までかかわるなんて事にはならなかったようだ。まあ、多少舌がヒリヒリするくらいの毒でそう簡単に死ぬわけもないか。
しかし、先程何かアナウンスみたいのが頭の中で流れた気がするが一体何だろう。足が生えたわけでもないし、特に体に変化はないみたいだが。感触からしてスライムのままなのはわかる。よくよく感じてみればこの独特のプヨプヨ感、間違えようもはずがない。
徐に、ステータスを開いてみると
『名前:なし
種族:ポイズンスライム(レベル1)
スキル:「体当たり」「毒吐き」「微毒耐性」「言語・スライム族」「未熟な進化の可能性」』
普通に変わっていた。種族も違うしスキルも増えている。慌てて湖を使って姿を確認してみると確かに変わっていた。
色が。
先程までは白だったのに、今は全身緑になっている。
ポイズンだから緑とは随分と安易な気がしたが、わかりやすいのでよしとする。通常が白なのは何もないって意味だろう。
こうなってくると、どうやらあのアナウンスは夢ではなかったらしい。あの言葉からして特定条件を満たすと進化できるようだ。
ただ、
(所詮スライムだもんなー)
スライムと言えば、どのゲームでもお話でも雑魚中の雑魚。キングオブ雑魚と言っても過言ではない。
進化と言っても毒が使えるようになっただけ。嬉しくないわけではないのだが、進化と言えばもっとこうガッと一気に強くなるもんじゃないのだろうか。姿も色しか変わらないし全然強くなっている実感が湧かないのが正直な感想だった。
まあいいだろう。そんなことより考えなければならないことがある。
先程のアナウンスからして、あの可能性とやらのスキルの効果は分かった。ただ、その時に気になることも言っていた。
(確か時間制限スキルとか言ってたな)
言葉通りの意味だろうし、このスキルには時間制限があるのだろう。ということはその時間を過ぎれば効果を発揮しなくなるはずだ。
つまり、進化にはタイムリミットがあると思った方がいいということだ。
もしかしたら時間を過ぎても大丈夫かも知れないが楽観視していいことはない。甘い考えでは自分の首を絞めることになりかねないし、なるべく早く次の進化を行わなければ。
とは言っても進化の条件がわからない。レベルが上がらずに進化できている事からして必ずしもレベルを上げる必要はないのはわかっている。だが、何をすればいいのかなんて見当もつかない。
ぶっちゃけ、さっきのだって感覚としては飯食ったら進化した程度にしか実感がないしな。
更に同じように草を食ってみたら相変わらずの不味さだが今度は舌がしびれるようなことはなかった。どうやら微毒耐性のスキルがさっそく効果を発揮しているらしい。
もう一つのスキルも確認するために、毒吐きと思って唾を吐いてみた。その唾が掛かった草が軽く煙を立てて溶けていくのを見て感想を訂正、ポイズンスライム恐ろしいわ。若干だが地面まで溶けてドロってなってやがる。
その時、急に背後から草の根をかき分ける音がする。ハッとして振り返るとそこにいたのは、
「……スライム?」
白い奴、つまり普通のスライムが丁度現れるところだった。若干だがオレより角張ってる気がする。球体と言うより角が取れた四角のような感じだ。
スライムなんて雑魚とは言え敵の出現だ。緊張しながらもオレは戦闘になるのかと身構えた。
相手が襲ってきたら返り討ちにしなければならない。でなければオレは死ぬのだ。冷たい汗……は残念ながら出ないようなので頬を伝うことはなかったが、そうなるくらいにオレは緊張していた。
そしてスライムは、
「アー?……オマエ、ダレダ?」
普通に話しかけてきた。かなりのんびりとしているというか片言でいかにも頭悪そうで聞き取りづらいが間違いなくしゃべったぞ、こいつ。そう言えばスキルでスライムの言語を獲得していたっけ。こうして会話できるのもそのスキルのおかげだろう。
戦う意思はないように見えるのでひとまずオレも会話を試みることにした。
「そういうお前は誰なんだよ?」
「アー、オレカ。オレハ……ダレダロウ?」
「いや、知るかよ」
思わずツッコんでしまった。てか、喋るの遅!
「オマエ、マイゴ? ナラ、ツイテコイ」
スライムはこっちの質問には答えないで一方的にそう言うと反対方向にゆっくりと歩いて(ズルズル滑って)行こうとする。どうやら本当に襲う気はないらしい。
(て、当たり前か)
ついつい自分が人間のように考えてしまったが、今のオレはこいつらと同じスライム。同族を襲う奴がいないわけではないかもしれないが、大抵仲間と見なすのが普通だ。こいつもオレの事を迷子とか言ってるし、その可能性が高い。
本当はここでもっといろいろ試したいこともあったし、こいつに聞きたいこともあったが今はついて行くことが最優先だ。じゃなきゃ見失ってしまう。
なのでオレはそいつの後を付いていくことにした。が、それにしても歩くのも遅いのな、こいつ。




