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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第二部 妖精編

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プロローグ2 旅路

 村を出てから三日、旅は特に問題もなく順調に進んでいた。グーラが暴れていたせいか、ここら一帯のモンスターの数も減っているようで、ほとんど襲われることもなくここまで来られたのは僥倖と言うべきだろう。

 

 ミラ曰く、本来なら整備された街道を通っても最低で数時間に一回はモンスターと遭遇するらしい。それに比べればこの三日で戦闘回数はたった五回と明らかに少なめで済んでいる。


 逆に言えば、それだけ力を得る機会は減っているのだが、未だに現れるのは残党らしきゴブリンのみ。力もほとんど得られないし、スキルはほとんど簒奪しきっているので戦うだけ無駄だ。


 なので、実に快適な旅を満喫していられた。


「ミラ、あとどれくらいか分かるか?」

「たぶんですけど、このペースなら明日のお昼には街に着けると思いますよ」

「へー、意外と早かったな」


 一週間は掛かると思っていただけにこうも簡単にいくと拍子抜けですらある。


「モンスターがほとんど出てこなかったのはやっぱり大きいです。私が村に行くとき一人だったこともあって、もっと時間が掛かりました」

「今は夜も交代で見張りするからある程度は休めるしな」


 一人だったら全て独力でやらなければならないのだと考えればかなり大変そうだ。おちおち眠ることも出来やしないだろう。


「それにしても討伐隊ってのとは、まだすれ違わないな」


 村へと続く街道は一つだけだし、こうしてオレ達が街道に沿って行動している以上どこかですれ違うだろうと思っていたのだが、今のところ、それらしき奴らどころか誰にも会っていない。


 おかげでミラの道具袋の中に隠れるなんてことにならないで済んでいるので助かるが、逆にここまで快適だと後でしわ寄せみたいに不幸がやって来るんじゃないかと不安になってくる。


 我ながら臆病というか心配性だが、余計なことを考えるのは性分なのだ。変えようがない。


「たぶんですけど、今もまだ編成中だと思いますよ。あの村に魔法による通信が可能な人は私以外いませんでした。だからまだ情報が伝わってないはずです」

「まあ、すれ違うだけだろうけど危険が来ないなら一番だし構いやしないけどな」


 下手に鉢合わせして戦うなんてことになったら面倒以外何物でもない。出来ることなら討伐隊と会うことなく南の街とやらに着けるのが理想だろう。


 南の街から村までは一本道で、その先は強力なモンスターがいる上に過酷な環境で有名な砂漠地帯となれば滅多にそちらから人が来ることもそこに行く人もいない。しかも今は名付きがいる場所から一人で旅をしているエルフ、客観的に見ても怪しいことこの上ない。


 何があるかわからないし、できる限り情報は伏せておく。楽観視して痛い目見てからじゃ遅いのだ。


 とそこで、一つの疑問が浮かんでくる。


「そういや、ミラってなんであの村にいたんだ?」


 いきなり転生してあの場に生まれたのか召喚されたのかわからないオレはともかくとして、ミラがあの村に行くとすれば南の街から行く以外に方法はないはずだ。さすがに砂漠地帯を踏破してきたとは思えないし。


 となると、何か目的があってあの村にいったとしか考えられない。言い方は悪いがある意味、行き止まりのような辺境の村に用事が何もないのにわざわざ行くとは考えにくいし。


「えっと、オズさんは妖精って言ってわかりますか?」

「なんとなくの意味なら分かるが、精霊と妖精の違いとか言われても正直わからない。イメージとしては森の奥深くの秘境とかに住んで、背中に羽が生えてる小人みたいな感じだな」


 非常に勝手な想像で申し訳ないが、オレの想像だとそんなのだ。


「大まかに言ってしまえばそれで大丈夫ですよ。妖精に関してはまだまだわからないことが多いので言えることはあまりないんですけど、唯一言えることは滅多にその姿を見れることはないってことです」

「まあ、そうだろうな」


 なんとなく妖精ってレアな感じがするし。


「その妖精がここら一体で目撃されているっていう噂が南の街で流れていたんです」

「それで妖精を探しに来たってか?」


 その手の噂が真実である可能性なんてほぼ零だろうに。


「もちろん最初は私も信じてませんでした。けど、風の精霊が時折何かの気配を感知してたのが気になって。その気配の正体を探し出すために私はここに来たんです」


 声に呆れが混ざったのがわかったのかミラが少しムキになって言い返してきた。


「よくわからないけど、それで結果はどうだったんだ?」


 こんなことで怒られても困るので、話を進めて誤魔化した。ミラを怒らせると怖いのはすでに経験済みである。


「……何も見つかりませんでした」

「いや、オレを睨まれても困るんだが」


 別にオレが何かしたわけでもないし。


「いや、でも、もしかしたらその気配ってグーラだったんじゃないのか? 名付きの気配を感知したとか」

「もちろんそう思って精霊に確認しましたけど、それとは違うそうです」


 精霊が名付きの気配を察知してくれるとなれば、今後かなり役に立ちそうだったのだがそうそううまくはいかないらしい。


 だが、それにしても精霊が何かを感知しているっていうのには何か引っかかる。こういうのを見過ごすと後々大変なことになるのが鉄則なので、


「肉屋、お前は何かわからないか? もちろん対価は払うぞ」


 これまで姿を消して黙ったままの肉屋に話しかけた。こちらにはどこにいるのか全く見当もつかないがあいつがこういう情報になるかもしれない話を聞いていないはずがない。


「残念ながら白骨にもわかりかねますね」

「お前でもわからないのか」


 少々意外だったが、肉屋と言えども知らないことはあるだろうし、仕方ない。

  ただ、こうなると手詰まりだ。まあ、わからなくても何かがあるわけではないし別に構わないのだが。


「ギイ!」


 そこに実に数時間ぶりにゴブリンの群れが草むらから飛び出してきて、進路をふさぐようにしてくる。いかんせん弱いし、そうそう現れないので気が抜けてしまうがこういう油断は命取りだと改めて自分を戒めた。


 緩んだ気を引き締めることも兼ねてここは一人で戦うことにしよう。


 ミラにそう告げるとオレは生体武具である二本の剣を作り出す。触手に関してもそうだが、どうも自由自在に扱うにはこの数が限界らしい。腕を振るうように扱っているせいかもしれないが、やはり元人間なのでそれに準じた動き方になってしまうのだ。


「さて、行くか」


 結局、圧勝過ぎて気を引き締めることはできずに戦闘はあっさりと幕を下ろすことになったのだった。

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