プロローグ1 前回の戦いで得たもの
まず触手についてだが、前の激戦を経験したことで、ほぼ自由自在に操れるようになったと言っていい。なにより生体武具及び防具生成のスキルの効果なのか剣や楯、槍はもちろんのこと棍棒や槌、はたまた戦いに関係ない物にだって形を変えることができるようになった。
まあ、剣や楯、棍棒だとスキルの補正がつくようなのでしばらくはそれらしか使わないだろうが。
自身の体を変化させ武具や防具に作り出して戦う、生体武具とはよく言ったものだ。
だが、それらはあくまで触手に限った話だ。本体である丸い体を変化させることはいまだに不可能である。いくら鍛錬しても出来る気がしないし、きっとそうするためのスキルを獲得する必要があるのだろう。今後に期待するしかない。
次にグーラから得られたスキルだが、これらは主に食うことに重点が置かれていた。
ちなみにあの戦いでグーラから簒奪したスキルは「攻撃上昇・中」「消化吸収超加速」「吸収強化・極大」「果てしない食欲」「飢えによる大反乱」「中鬼の威嚇の鳴き声」「餓死無効」「万物を食らう者」「裂震衝破」の九個。
「攻撃上昇・中」「消化吸収超加速」「中鬼の威嚇の鳴き声」「餓死無効」「果てしない食欲」はその名の通りか以前から得ていたものが強化されただけ。
「吸収強化・極大」も肉を食った時の効果が大きくなるとその名の通りなのだが、その他にも効果があるとのこと。それは今までは無意味だった、生きている相手の肉を食うことでも多少の力を得られるようになるらしい。
しかも食えば食うだけ体力も若干回復するとか。「消化吸収超加速」と「果てしない食欲」と組み合わせれば、かなり便利そうなので大満足である。
「万物を食らう者」は毒があろうが身が焼かれるような高温であろうが、食うという行動に関しては一切影響を及ぼさなくなる。わかりやすく言えば何でも食えるようになったってことだ。
「飢えによる大反乱」は逆に、あくまで限定的にではあるが、飢えるほどに力が漲るらしい。腹が膨れればそれだけ力の上昇もなくなるとのこと。あくまで満腹状態でも力に制限がかかるわけではなく、腹が減るほどに力が上乗せされていくだけなので害はない。
もちろん、餓死無効のおかげでいくら食わなくても死ぬことはないが、腹の中に何もいれないで居続ければ体力やスタミナなどは低下する。なので、これはあくまで一時のドーピングのようなものに過ぎないが。
他に気を付けるべきことがあるとするなら腹が減って強化されている状態の強さを自分の強さと勘違いしないことくらいか。下手に強くなった状態で居続けて自分の力を勘違いすると判断を誤りかねないし。もちろんグーラのように相手を甘く見て、出し惜しみした挙句やられるなんてことにならないように注意はする。が、あくまでこれは緊急手段としておこう。
最後の「裂震衝破」はグーラが使った地面に棍棒を叩き付ける、あれのことだ。効果としては全力で相手に攻撃を叩きつけると同時に周囲に衝撃を放つものらしいので、棍棒でなければならないというわけではない。
試しに一回、恐る恐る生成した剣でスキルを使ってみたが、残念ながらそれほどの威力は出なかった。恐らく元の攻撃力やら筋力が違いすぎるのだろう。グーラと比べて単純な腕力では足元にも及ばないから当然かもしれないが。
結論から言うと、グーラは相手のありとあらゆるものが食える上に食えば食うほど強くなり体力まで回復する。しかも相手の肉が食えなくても飢えて力が強化されていくというなんとも反則仕様の敵だったというわけだ。よく勝てたものだと思う。
単身でしかもスライムだったからか、相手に肉を食われることがなかったことなど幸運が重なった結果だろうが、改めて話を聞くと、とんだ無茶をしたものだ。
残りのスキルについては大体強化されたか、あの戦闘でやったことができるようになっただけ。今までと特に変わったところはない。
強いて言うなら、ミスリル生成が純ミスリル精製などに強化されたことか。生成が精製になっていたり、純と頭に付いていたりとまあ、かなり強化されたのだろう。実際にミスリルを精製してみたら前とは輝きが明らかに違ったしな。
これで純度が高いミスリルがいくらでも作れるし金や対価に困ることはない……なんてそううまい話があるはずもなく、財政状況は多少ましになったもののまだまだ豊かとは言い難いのが現状だった。
なにせミスリルを精製しようとするとものすごい集中と体力気力を必要とするのだ。今のところパチンコ玉程度の大きさの物を作り出すのに約一時間は掛かる。その上、その後丸一日疲労に苛まれて戦闘力が半減とまではいかないがかなり落ちるともあって、そうそう作れるものじゃない。
本格的に精製するのは住処などでも作り出して、安全を確信できるようになってからだろう。そうじゃなきゃ怖くて集中出来やしない。
ちなみにこれらの情報はグーラの肉の一部を対価に肉屋から得た情報だ。さすがにあれだけの威力を見せ付けられたスキルを詳細もわからずに使うのには躊躇われたのだ。
今後も出来る限りは自分で調べるが、こういう風に明らかにやばそうなスキルが手に入ったら肉屋に相談することにしよう。そうしないと怖くて使うに使えないし。




