エピローグ
次の日、オレ達は村から旅立っていた。
ひとまず村の脅威は去ったが、警護の目的でここら一帯に討伐隊が派遣され、残ったモンスターを掃討するらしい。それに巻き込まれるのは御免なので早めにここから離れることにしたのだ。
あれだけ派手に戦ったので当然といえば当然だが、オレの存在は既に村中に知れ渡っているとのことなので情報を隠すのはほぼ不可能。
幸運だったのはミナの親などはミラ達からこれまでの話を聞いて、お礼にかくまわせてほしいとの申し出をしてくれたことか。だが、悪いとは思いながらも断らせてもらった。
いつまでも隠れてはいられないだろうし、なにより迷惑が掛からないとも限らない。となれば長居は無用。
ミナやアリスが別れを惜しんだがいつかまた会うことを約束して村を出た、そのはずだったのだが、
「はあ……どうしてこうなった?」
「白骨はどちらでも構いませんので」
「何度も話してもう決まったことです。諦めてください」
何故かミラがこの場にいるのだ。いや、一緒に旅をすることになったので、その観点から見れば何の問題もない。
問題はなぜ一緒に行くことになったか、だ。
簡単に言えば押し切られた、その一言だ。
ミラがオレに残したミスリルのナイフ、あれはなんと両親の形見だったというのだ。いくら知らなかったし仕方のない状況だったとは言え、そんな大事な物を食っておいて何もなしじゃ済まされない。というか罪悪感などでオレの気が収まらなかった。
それで、お詫びにできることなら何でもすると言ってしまったのが運の尽きだろう。まさかこれからミラの旅に同行することなんて言い出すとは思わなかったのだ。
もちろん最初は認めなかった。危険だからと。
だが、結局負い目があったこともあって言い負かされてしまったのだ。もちろん、それだけじゃないぞ。
ミラにも村に留まっているわけにはいかない理由があったことなどもその一因だ。
エルフのような希少な種族だし、今回ネームドモンスターをほぼ単身で倒したことでミラもまた少なくない情報を世界にばら撒くことになった。名声を得るだけならいいがそんな訳もなく、最悪の場合ミラのことを狙ってくる不埒者が現れないとも限らないのだ。
ネームドモンスターを倒したと知れればそうそう襲われることはないが、逆に襲われるときはそれこそ大人数でなんてことになりかねない。ミラを殺せばネームドモンスターの力の一部を得られるのだ。そうじゃなくてもエルフってだけで狙われやすいだろう。
モンスターと人間とほとんど変わらないエルフ、どっちが倒しやすいか言うまでもないしな。あのまま村にいたら最悪の場合、ミラ狙いの輩が村を襲って人質を取ることも考えられた。
それで村が壊滅なんてことになったらこうして頑張った意味がない。少しの間は数人の討伐隊の人が村の護衛に残ってくれるらしいが用心するに越したことはない。
とのことでミラも村にはいられないとなり。
なので、責任取って守ってくださいと言われたらこちらには何も言えなかった。別にオレの責任じゃないのだけれど。悪いのはグーラなのだが、その魂はオレの中にあるので文句を言う相手もいない。というかオレ自身になるのだろうか。
なんとか安全が確保できるまでの間ということにして、無条件で要求を呑むことだけは回避したが押し切られた感は否めない。
なるべく早くミラに護衛でもなんでも雇わせて安全を確保しなければならなくなった。それまでは不本意だが一緒にいなければならない。
まあ、内心嬉しくないかと言われれば嘘になるが。
なんだかんだと共に死線をくぐり抜けたおかげかミラとの関係は良好だった。向こうもやたらとオレに親切にしてくれるし、この世界で一番信頼できる相手だろう。
これからミラが目指すのは南のあるという街らしい。一応ミラの道具袋の中に隠れて入り込む手はずになっているが果たしてどうなることやら。
「まあ、なるようになるか」
悩んだってしょうがない。何かあったらその都度、対応していけばいいのだ。
先のことを考えるのも大事だが、それで今を楽しめないのはもったいない。折角、転生までしたのに、その生涯を楽しまなければ損だろう。
生きたいと感じてからそう思えるようになった。
これは生きるために一歩前進したのだろうか。それともただの開き直りだろうか。
それはこれから確かめればいい。オレはまだまだ生きるつもりなのだから。
思わず笑みが漏れる。自爆しようとした奴の言うことじゃないな、そう思っておかしかった。
「オズさん、どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない」
オズワルド、新たな名前。これがオレの新たな一生の始まりだというならこの先いったい何が待っているのだろうか。
それを確かめるためにオレは、また新たな一歩を踏み出した。




