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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第一部 転生編

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第十五章 超強いんだが

 フレイムスライムが。


 早速進化する条件の一つである薬草摂取をクリアしようとひたすら薬草を食いまくっている時に現れたゴブリンがいたのだが、瞬殺だった。


 至近距離での新たに得たスキル、火炎吐きであっさりと丸コゲだし。


 口から火が出るっていうのに息を吐く感じで出来るし、そんなバカげた行為がこうもあっさり可能になるとは、よくよく考えるとスキルとは凄まじいものがある。


「おみごと!」


 肉屋はそう言って笑いながらゴブリンの死体から肉を取っていた。ほぼ黒焦げなのに肉なんて取れるのだろうか。まあ、取れるから死体を漁っているのだろう。


 それにしてもゴブリン一匹ではもうレベルアップしなくなったし、得られる力も少なくなっている気がする。オレの力の総量が前より増えた証だろう。


「言っとくけどオレが倒した奴の肉は対価だってこと忘れるなよ。タダじゃないぞ」


 肉屋に釘を刺しながらオレはひたすら薬草を食いまくる。


 肉屋と行動を共にするにあたってオレ達はある契約を結んでおいたのだ。

それはオレが倒した敵の肉を無条件で肉屋に差し出すこと。その分肉屋はそれに似合ったサポートをオレに与える、という相互にメリットがある契約を。


 ゴブリンの肉なんて価値はほとんどなさそうだが、塵も積もれば山となる。敵を倒したらオレが肉を食う必要もないし、今後の為に保存しておくこともできないから肉屋にあげた方が断然ましだ。文句があるわけもなかった。


 考えてみればオレと肉屋も変な関係だ。お互い信用がない訳じゃないがあくまでそれは契約によるもので心を許したとは到底言い難い。けれど、こうしてかなり息が合っているのもまた事実。


(やっぱり利益ってのは大事なんだな)


 前に会社勤めしていた時はそこまで深く考えたこともなかった。いや、いろいろ見てはいたが考える暇さえなかったと言うべきか。


 こうして落ち着いて考えると、見落としていたことなどが見えてくるもので勉強になった。


(互いに損がない内は裏切ることがない、今はそれで十分だろうな)


 もちろんその関係が崩れた時のことも考えておかなければならないが。どんな世でもただの人を信じる奴はバカを見る、これ鉄則だ。


 そう思って次の薬草を口に入れた瞬間に、


「あ、来た!」

 

『進化条件「薬草摂取」をクリアにより時間制限スキル「未熟な進化の可能性」が発動しました

これにより条件を満たした種族への進化が可能となりました

現在進化可能なものは一種、ハーブスライムのみとなります

進化しますか?

YES

NO』


 当然、NOを選択。まだフレイムスライムのスキルが残っている。


『進化拒否を確認しました

進化は行わず現状維持を続けます

なお、進化条件を満たしているため任意のタイミングで進化が可能です』


 アナウンスが消えて世界が動き始める。時は止まっていたはずなのに、オレの様子の変化を見抜いたのか肉屋がオレの方へと走ってくる。


「こちらは取り終わりましたが、あなたもその様子だと成功されましたかな?」

「ああ、でもまだ進化はしないけどな。スキルを獲得し終えた後に進化する予定だし」


 とは言え、この感じだとこれからのレベル上げには苦労しそうだ。前みたいに巣穴に攻め込んだりすれば数を相手に出来るし、かなり力も得られそうなのだが。


 ゴブリン程度なら今は問題にもならないし。


「なあ、ここら辺でモンスターの巣穴とか知らないか?」


 肉屋に尋ねる。こいつなら知ってそうだと思ったのだが、


「白骨はあくまで肉屋ですよ? 情報も取り扱ってはいますがそこまでの事は知りませんよ」

「いや、だからこそより良い肉のありそうな場所を知ってそうじゃないかと思ったんだが」

「それをお教えするには対価が足りませんね」


 この野郎、知らないんじゃなくて教えないんじゃないか。


 ただ、対価が足りないと言われても納得するしかない。オレが現在払っている対価はゴブリン一匹のみ。オレ自身の肉の対価は既に進化条件を聞くので使い切っている。


 さて、ここは考えどころだ。ゴブリン一匹分の対価でどうにかしていい情報が引き出せないだろうか。


 頭の中で幾つか候補を挙げて、その中で一番可能性がありそうな奴を言ってみることにする。


「じゃあ、この辺りで川とか水辺の場所を教えてもらうことは出来るか?」

「なるほど、面白いことを考える。それなら可能ですよ。ゴブリン一匹分でも充分対価になりますから」


 水辺、スライムのオレはともかくゴブリンや動物系のモンスターは生きるために一日に数回の食事は必要だ。当然水の補給も。


 そこで張っていれば獲物にありつけそうだと考えたのだ。


 そうして肉屋に案内されたのは川だった。例に一口飲んでみる。


「うん、普通の水だな」


 格別ってわけじゃないが普通にうまい。食事はしてきたものの水を飲むのは数日振りだしな。


 というかスライムはどれだけの日数水飲まなくてもいいのだろうか。今の今まで失念していたが物凄く重要な事を見落としていた。干からびて死ぬなんてまっぴら御免である。これからは気を付けよう。


 まあ、少なくとも数日は大丈夫ってことは証明されているし、それだけわかっていれば大丈夫だ。


 ちなみに肉屋に聞いても本当に知らないとのことだった。他種族の生態系までは把握していないし、個体差もあるから一概には言えないとのこと。言われてみればもっともな話だった。


 隠れて待つこと三十分、失敗だったかと思い始めた頃に遂に獲物が現れる。


 それはまたしてもと言うべきか、二匹のゴブリンだった。どちらも丸裸で武器も持ってない。前に手強かった奴はボロ布とは言え衣服を身に着けていたし武器も持っていたのに。たぶん、あいつはアナウンスで亜種とか言っていたし普通の奴と違って強かったのだろう。


 普通の奴にはずっと前の時点でも楽勝だったことを考えれば恐れることはまったくない。奇襲せずとも倒せる。


 けど、オレはまだ動かなかった。ここで二匹程度のゴブリンを倒したところでレベルが上がるとは到底思えなかったからだ。

 やるならもっと多くの獲物が欲しい。こいつらに巣穴まで案内してもらう事にしよう。


 帰るまで待っていられないしとっとと仕掛けることにする。


 その内、最初は周りを警戒していたゴブリン達だったが次第に緊張を解いて隙だらけになって川の水を飲み始める。食事時は誰しも隙を見せるものとはよく言ったものだ。


 その内の一体がオレの隠れる場所の近くに来たのを見逃さず、一気に触手で掴んで草むらに引きずり込み、そしてそのまま首を絞め殺す。口も押さえたし、断末魔の悲鳴を上げる暇さえ与えなかった。


 わずかな力が手に入ったのを確認して肉屋に肉を取らせた後、その死体をもう一匹の方へと放り投げる。


 いきなり目の前に落ちてきたものに驚いたように跳ね上がったゴブリンが次の瞬間には恐怖で目を大きく開いた。いきなりさっきまでの一緒だった仲間が殺されて目の前に現れればそりゃそうなるわな。


 周囲を警戒するゴブリンをあざ笑うかのようにオレは触手を使って周囲の木々や草を揺らして音を立てた。無論のことオレが隠れている場所はばれないようにだが。


 怯えたように周囲をキョロキョロ見回すゴブリン。頭は悪くても恐怖は感じるようでこれならイケそうだ。


 オレは大きく息を吸い、そして吠えた。


「があああああああああ!」


 ゴブリンから得られたスキルだから仲間と勘違いされないか心配だったが今のオレはスライムだ。鳴き声は全くもって異なるから大丈夫だと思う。


「ギ、ギイ!?」


 その声を聞いたゴブリンはオレでもわかるくらいに怯えた様子で鳴くと一目散に走り出す。ここまで行けばあと一息だ。


 その後もオレはそいつの後をつけて立ち止まりそうになるたびに刺激する。それを数回繰り返すうちに耐えられなくなったゴブリンはとうとう巣穴に帰りその中に飛び込むように入っていった。


「ご苦労様」


 巣穴の近くに来たので周囲はゴブリンだらけだし獲物はたくさん、あいつは十分役目を果たしてくれた。感謝である。


 まずは巣穴の外にいる奴らからだ。


 言い忘れたが肉屋はいつの間にか消えていた。どうせ隠れて高みの見物でも決め込んでいるだろうから、心配などしない。むしろ若干むかつきすらする。


 戦えない奴の事は放っておいて、オレはゆっくり慎重に敵に近づき隙を見せた奴からさっきの奴と同じように引きずり込んで仕留めていく。


 逃げられたらもったいないし、なるべく動いたら死ぬってことをわからせるようにじっくりじっくりと。


『条件を満たしたため「気配消し」を獲得しました』

 

 思わぬところでアナウンスが流れるが今は無視、順調に作業を重ねて行った。

 

 その内、生き残った外にいるすべてのゴブリンと中から出てきた奴らが一か所に固まり始めたので暗殺劇はこれにて終了。今からは虐殺劇だ。


 近くにあった木の枝に飛び乗る。ここからなら十分届く距離だった。


「必殺、プレスアタック。とう」

 

『レベルが5に上がりました

規定レベルに達したため「微炎熱生成」「微炎熱付与」を獲得しました

ゴブリンを倒したことにより能力の一部を簒奪しました

「異種族交配可能化」を獲得しました』

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