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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第四部 覚醒編

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幕間 ミラの遠距離射撃

 私がオズさんの援護に向かおうと走っている時、それは突如として現れた。


 圧倒的な闇と光の魔力。それは破壊の嵐とも言うべき存在。


 ただ存在する、それだけでどうしようもなく周囲を壊してしまう規格外のもの。私なんかじゃ近付くこともできやしない存在だ。それが魔力だけでわかってしまう。


 しかもそんな危険極まりないものが二つあり、互いに相手を殺すべき争っているのだった。


「っく!」


 私は咄嗟に近くにあった柱の瓦礫に身を隠して、そのすぐ後にやって来た衝撃をやり過ごす。


 アディアと戦っている内にオズさんがいる場所から遠ざかっていたこともあってまだまだそこまで距離がある。


 それこそ、この戦いの前に測っておいた私が狙いをつけられる射程距離最大の約二百メルトル――ちなみにそれを見たオズさんはそのサイズの弓で二百メートル(・・・・)先まで狙い撃ち可能とかあり得ねえ、と呟いていた――くらいは離れていた。


 だと言うのに剣と剣がぶつかり合うことで生じる衝撃。つまり戦いの余波にすぎないそれに耐えるだけで私には精一杯だった。これでは援護に駆けつけるなんて出来るわけがない。


「冗談でしょ……」


 足手まといとかそういう次元の話じゃない。私はもはやそんな物でさえなくなっていた。


 言うなればそこらに転がっている石ころや生えている雑草と同じ。巻き込まれないように祈っていることしかできない。ただの背景、それと同じだった。


 瓦礫の山から顔を覗かせて様子を伺うけど、その衝撃は幾度も周りのすべてを引き裂きながら牙を剥く。これ以上、近付けば私もその牙によって意味のない死を迎えることになるだろうことが嫌でもわかった。


(ここから矢を当てるには雷弓しかない、か)


 普通に射るか風精霊(シルフ)の矢でも軌道を山なりにすれば、そこまで狙いをつけて届かせることは出来る。だけど、この距離で放っては矢が到達するまでに時間が掛かり過ぎだ。それでは着弾までに敵が移動するか、そうでなくても躱されるのがオチ。


 だけどこれ以上、近付けないのならここから矢を射るしかない。


「ふぅ……」


 威力のことを考えれば近いほうがいいのだが、敵に気付かれないという面から見れば、ここからでも悪くはないはず。そう信じてここで出来ることをやるしかなかった。


 そうして瓦礫の影から出て大きく深呼吸。全身に衝撃が伝わってくるが構わず魔力を練る。

 

 イメージするのはここから敵に向かって伸びている空中に描かれた一本の直線。本来なら山なりの曲線を描くのだろうけど、雷弓ならその必要もない。


 そのイメージした線は魔力で出来た道。矢はこの道の上を滑っていく感じに近い。


「……」


 戦闘をしているのだから、対象は当然ながら動き続ける。そう簡単に狙いをつけられないが、焦らず覚えている敵の魔力を頼りに狙いを定めていく。


 こういう時、集中すればする程に心は空っぽなっていく。周囲の音が聞こえているはずなのに遠くになってく感じと言えばいいのだろうか。自分がただ弓を放つだけの存在になっていく気さえしてくる。


 だからだろうか、ここでようやく視界に捉えたオズさんらしき人物の姿が大量の闇を無理矢理人型に押し込めて形を成しているような状態でも動揺しなかったのは。


 いや、きっと私は心のどこかで分かっていたのだ。この莫大な闇の魔力を感じた時に。


 その真っ黒な人物から発せられるのは間違えようもなくオズさんの闇でありながら暖かさを感じさせてくれる魔力だ。


 だけどそれと同時に闇でありながら邪悪さを感じさせない澄み切った魔力、それゆえに冷たさを感じさせる別人のような魔力も発している。


 それは前に眠っている時に漏れ出ていたものと同一のものだった。それだけでオズさんがまた無茶をしたことが理解出来る。


「無茶ばっかりして……帰ったら説教ですからね」


 それは集中するのには余計な考えだったはずなのに、不思議と邪魔になることはなかった。


 その時、敵の光の魔力が高まる。


(危ない!)


 その時、オズさんが敵から離れた。そしてそれを見逃す私ではない。


 最後の調整を済ませて完璧に狙いを付ける。そして


「瞬きの雷弓」


 私の全力の一射は放たれた。

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