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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第一部 転生編

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第九章 力の得方、そして孤独

 戦闘が終わって一息つくと、


『レベルが9に上がりました

規定レベルに達したため「簡易液状化」「簡易自己液状体操作」を獲得しました

また、この種族におけるレベル獲得スキルは完了しました

条件を満たしたため「スライム殺し」「スライムキラー」「同族殺し」を獲得しました

スライム(通常種)を倒したことにより能力の一部を簒奪しました

「物理軽減・極小」を獲得しました

上位スキル「スライムキラー」「同族殺し」を獲得したため下位スキル「スライム殺し(仮)」「同族殺し(仮)」「スライム殺し」は自動的に上書きされます』


 恒例のアナウンスが流れる。どうやらネオスライムで得られるスキルはもうないようだ。


 それにしても前のゴブリンの時にもだが、能力の簒奪とは一体何なのだろうか。確か簒奪の言葉の意味は奪って得るみたいな感じだったはずだし、得られたスキルからして相手の持っていたスキルをオレが覚えたのはまず間違いない。


 倒して力が得られるのはレベルが上がることやこのことから間違いない。しかし、だったら相手を食った時に力を得られたり、得られなかったりするのは一体何なのだろうか。


 そのことでオレはある推測を思い付いていた。その証明の為にも最後に倒したスライムの一部を食ってみる。


 先程わざわざ突進で倒したのは体の性質のせいなのか毒だと溶けてはすぐになくなってしまうからだ。突進で倒したこいつはそんなこともないし食える部分を損失することはほとんどない。まあ、それも掠るように攻撃を当てたからだが。


 まともに当てたらミンチというか潰れて水になってしまって、そうなると食っても力が得られないようなので加減に苦労したが、それに見合う成果は得られた。すなわちそいつの身を食っても力を得られなかったという結果が。


 このことから考えて種族や個体によって左右されていると言う事は考え難い。そうなら同じ巣穴で生息するこいつらで差があるとは思えないから。


 だとすれば別の原因があるはずで、オレはそれを自らが倒したか倒してないかの違いではないかと考えた。


 そう思った理由はゴブリンを倒した時に多く力を得られた気がしたのと、さっきスライムを大量に喰ったのに他のスライムを倒したときに比べると得られた力の量が少ないように感じたからだ。

 

 そのことからオレは力の得方には二種類の方法があるのではないかと考えた。


 一つは相手を倒すか殺すことでこれが一番得られる力が大きい。そして場合によっては相手のスキルも得られると思われる。


 二つ目が相手を倒さずに肉体かその一部を食すことだ。得られる力の量は前者に比べて低く、またスキルを簒奪することも無理だと思われる。前に十匹近くのスライムを食っても簒奪のアナウンスはでなかったことから食う事ではそれが無理だという証明になるからだ。もちろん運が悪かった可能性もあるがそれは今後調べていけばいい。


 それに恐らくだが前者で力を得ていた場合は後者では力が得られないようになっているのだろう。より多くの力を得ているのでそれ以上引き出せないのは当然だ。


 あくまで現在得られる情報からの推測だが、オレはなんとなくこの考えが正しい気がしていた。


(まあ、はずれならはずれで考え直すだけだし)


 次に今得られたスキルを確認してみることにしたが、わかったのは自己液状体操作だけ。その名の通りある程度までならこの体を自由自在に動かせるというものだ。その気になれば体から触手のような物を伸ばすことも出来るし、これなら擬似的な手足を作りだすことも出来そうだ。


 まあ、見た目がキモイことになるのは簡単に予想がついたので必要な時以外は平常時のままでいることにしたが。


 そうしてやることが終わったので振り返ってみると、そこにはまだ子供二人が座り込んでいた。


 オレとしては考えたりしている間にさっさと逃げ出してほしいのが正直な気持ちだったのだが、泣きそうな顔のまま動けないのは相変わらずらしい。

 一応、背を向けて隙を作りまくっていたのだが思うようにはいかないものだ。


「怪我は無いかな?」


 そう言ってから、仕方ないのでオレは体を通常サイズまで収縮させて二人に近付く。なるべく怖がらせないように配慮したのだが、それも無駄に近かった。

 

 オレが一歩ずつ(ズルズルと地面を滑るようになので一ズルと称するべきかもしれないが)近寄っていくと二人とも体をびくりと震わせる。明らかに怖がりまくっていた。


 目の前まで近寄っても二人は抱き合うようにして動けないでいた。敵でないことを知らせたいが残念なことに人間の言葉は話すスキルは手に入れていない。言葉が通じないことはさっきの一言に反応がない時点で明らかだ。


 なので、オレは子供でもわかるであろう行動で敵でないことを示すことした。


 先程手に入れたスキルをさっそく使って、体から触手のようなものを二本伸ばす。


 それを見た二人は何かを堪えるかのように目を瞑った。


 いつまでもこのまま勘違いで怖がらせるのは忍びないので、その二本の触手を二人の頭の上に乗せて、


「……え?」


 ゆっくりと撫でるように動かす。その行動に驚いたのか目を瞑って何かに堪える様子だった二人の内の年上の少女がそう疑問の声を上げる。


 ゆっくり、ゆっくりと出来る限り優しく頭を撫で続ける。出来れば手を作り出したかったのだが慣れないと細部まで凝るのは難しかったのだ。獲得はできても訓練が必要なスキルもあるらしい。


 粘り強く撫で続けたかいもあり、二人は次第に体から力を抜いていってこちらを見てくれるようになった。その眼にはまだ若干怯えがあるものの先程と比べたら雲泥の差だ。


 これなら多少動いても大丈夫そうなのでオレは触手を頭から離すと、どうにか操作して矢印と?マークを作り出す。


 言葉が伝わらないならボディランゲージしかない。オレはその二つを操ってどこに行くつもりだったのかを体で聞いてみる。


「もしかして、どっちに行きたいか聞いてるの?」


 最初は意味が分からずにキョトンとしていた二人だったが、諦めずに続ける内にと年上の少女が気付いてくれた。理解力が高くて何よりだ。


 オレが大きく頷いて肯定を示すと少女はゆっくりと手を上げて、


「……あっち」


 方向を示す。こうしてすぐに行き先を言えるってことは迷子ってわけではないらしい。何でここにいたのかとか聞きたいが、それは流石に言葉が通じなければ難しいのはわかりきっているので諦めることにした。


 今は早くこの子達を安全な場所に運ぶことが最優先。こんないつ襲われるかもしれないところにいつまでもいられないっての。


 オレはある程度肥大化した後に触手を使って二人を持ち上げて頭に乗せる。安全の為に触手をシートベルトのように巻き付けることも忘れない。


 そしてそのまま跳躍した。


「「きゃああああああああ!」」


 二人が同時に叫ぶ。実際にはそこまでの高さまで飛んでないのだが。まあ、いきなり持ち上げられてその上で宙に浮くなんて経験したら誰でも驚くか普通。


 一回の跳躍で止まって、二人が大丈夫か確認する。衝撃はちゃんと吸収したし、あるとしたら高い所が恐いくらいか。


 見た感じ大丈夫そうと判断してオレはまた跳躍した。だって、年下の子とか若干笑っていたし明らか楽しんでいる。さっきまでとは大違いだ。


「きゃははは! すごい、すごい!」


 どうやら恐怖心より好奇心が勝ったらしい。オレといては気を使わない分だけ楽なので大いに助かった。


 年上の子はまだおっかなびっくりって感じだったけどそこは我慢してもらおう。オレだってこの子達をずっと守っているわけにもいかない。早く親元へ運んで安全を確保してあげなければ。

 

 ある程度進むたびに方向を聞き、示された方へと進むことしばらく少女たちも慣れたようでオレの体に全体重を預けてくれるようになる。

そうして進むことしばらく村らしきものが見えてくる。


 いかにもゲームとかでありそうな農村って感じの村だ。どうやらこの世界はそういうところまでゲームのようになっているようだ。


 近寄るにつれて村の入り口には各々武器や防具をつけている大人がいるのが見えてくる。一体何かあったのだろうか、ってそんなこと決まってるか。


 この子達を探しに行こうとしているに違いない。村の子供がいなくなってモンスターだらけの場所に行ったとなれば当然だ。


 オレはいち早く無事を知らせてあげようと大きく跳躍して村人の前に着地する。そこでアホなことをしたことに気付いた。


「な、何だこいつは!?」


 村人達がオレに向かって武器を構えて戦闘態勢をとる。また自分が人間であるかのように行動してしまったが、仕方ないだろう。咄嗟の時には自分がスライムだってことを忘れてしまうのだ。まだ転生して一日、慣れたと言っても限度がある。


 敵意がないことを示したいが言葉は喋れないし、両手を挙げようにも触手しか出せない。触手かかげたら絶対警戒されること間違いなしだしそれはやめておこう。


 こちらとしてはこの子達を返しに来ただけなので、攻撃されるのは勘弁してもらいたい。人助けして死ぬのも一回で十分だし。


 オレは相手を警戒させないようにゆっくりと収縮して、頭の上に乗せていた少女達をゆっくりと地面に降ろす。


「ミナ! アリス!」


 村人の一人が驚いてそう叫ぶ。いきなり探そうとしていた子供がモンスターに連れて来られたらそうなるわな。


 あんまりのんびりしていると痺れを切らした誰かが特攻でもしかねない雰囲気なのでオレはさっさと用件を済ませることにした。今はこの子達が傍にいるから弓を持った奴も攻撃を仕掛けて来られないようだが、早まった真似されるのも面倒くさい。


 一歩下がって二人の背中を触手でそっと押す。


 二人は一瞬だけ迷ったが、すぐに村人の方へと駆けて行った。これで危険はなくなっただろう。


 そう思った瞬間に弓を構えていた奴が素早く矢を放つ。不意打ちならともかくこんな正面から撃たれて当たる程オレもバカじゃない。


 威嚇する意味も込めて飛んでくる矢に毒を吐きかけて溶かしてやった。当然、矢は空中でドロドロに溶けて消滅する。


 こうなるかもとは思っていた。いくら親切にしても今のオレはスライムで、人間からしたら相容れない敵のはずだ。そんな相手がいくら少しくらいマシなことをしても罠だと考えるのが当たり前。そんなことはわかっていた。


 ゲームや物語のように一回助けたからってこっちに都合のいいイベントが起きるわけがない。


 このままオレがいてもこの人達は余計に警戒させるだけだし、既に幾人かの村人は子どもという人質がいなくなったと考えたのか接近してきて剣を振りかぶっている奴もいる。


 オレを殺そうとしているのだ。


「っく!」


 頭のどこかではわかっていた。だからこそ意識的にしろ、無意識的にしろ、人を避けてきていたのだ。人に殺意を持って襲い掛かられる、それは予想以上に心に来た。


 理由は自分でもわからない、散々この数日で命を懸けてきたし多少の事なら動じない自信があった。だからこそこうして子供達を運んで来たのにそんな自信はあっけなく砕け散った。


「いじめちゃダメ!」

「邪魔するな、ミナ!」


 年下少女が近くにいる村人に飛びついて止めにかかる。あの子がミナということはお姉さんの方がアリスなのかなんて場違いなことを考えて、オレはふと笑いが込み上げてきた。


「ははは!」


 村人には決して通じない笑いを浮かべながらオレは背を向けて跳躍する。さっきみたいに二人を乗せていた時みたいに遠慮なんてしない跳躍に付いて来られる村人はいなかった。


 オレは笑いながらがむしゃらに跳躍を続け前に進み続ける。距離も方向も考えないで、ただひたすら前に進むために。


「ははははははは!」


 なぜだか笑いが止まらない。自分でも理由はわからないがおかしくて仕方なかった。


 おかしいのに、笑えるのに胸が苦しい。なんだこれは。


「何なんだよ、これは!?」


 一心不乱に進み続けて、気付いた時には転がるようにして地面に突っ込んでいた。いくらスキルで補助があるからって飛ばし過ぎたら体力は消耗する。息切れは起こさないが少しの間体が動きそうになかった。心地いい疲労感が体を包んでいる。


 仰向けになって空を眺める。元の世界と変わらない青い空、だと言うのにオレは何故こんなことになっているのだろう。


「ははは……はは、は」


 わかっていた。ずっと目を逸らしてきた。この世界に来て色々な物を見てからずっと、生きるための必死になることでオレはその事から目を逸らし続けてきたのだ。


 それは孤独。


 スライムのようなモンスターと分かり合うことはできない。人を襲う時点で元人間のオレにはそれをどうしても認めることが出来ないからだ。


 本能の部分でそれを確立している奴らを仲良くやれるわけがない。仲良くしたところでさっきみたいに最終的には争うことになって、殺し合うことになるだけなのだから。


 だからと言って人間とも無理だ。姿がスライムであるオレはどう頑張ってモンスターとしてしか見られない。ミナやアリスのように状況が良ければ多少歩み寄ることは出来るかもしれない。


 けれどたとえあそこで村の人がオレを襲わずに受け入れてくれたとして、オレは安心してあの人達共にあれただろうか。


「はは……無理に決まってる」


 もし逆の立場だったらオレはいつ寝返るかわからないようなスライムが村に入ってくることを認めるなんて出来ないし、仮にオレ以外の人が認めてその考えを飲み込むしかなくても、だったらだったでオレはそいつを事故に見せかけてでも闇討ちでもなんでもして殺す。転生して来て生き残るためと理由をつけてスライムやゴブリンを殺したように。


 だってそうしないと死ぬかもしれないのだ。簡単に信用して痛い目を見て、その後取り返しがつくとは限らない。ここでは人を殺すことを本能レベルで体のすべてに染み込ませている存在がいるのだから。


 どちらにも混ざれない存在、弾かれたもの、それがオレだった。


(オレは孤独だ)


 それを意識してしまった瞬間、オレの中で何かが壊れた。今まで必死に押さえつけてきた恐怖や寂しさ、そして絶望感が蓋をこじ開けて溢れだしてきたのだ。


「あああ」


 泣きたくても涙は出ない。スライムには涙腺がないらしい。


 もう限界だった。何故オレがこんな目に遭わなければならない。わけがわからない、死にたくないけどなんでこんなことをしなくちゃいけない。


「うあああああ!」


 オレは声を上げて泣いた。赤ん坊のようにそれしか不満を示す手段がなかったから。けれどその声は、今は決して人には届かない。届くことはないのだ。


 オレはこの世界で独りきりだった。


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