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19 一階

 迷宮内部の風景は、階層を下る中で変化していく。


 地下50階を越えた後のフロアが〈地獄〉と呼ばれるのは、魔物の驚異もさることながら、それだけ異常で異様な光景が広がっているからだとか。


 もちろん、僕自身はそんな深淵の領域に足を踏み入れたことはない。


 迷宮の中に入るのが、そもそも初めてなのだから。


 今更だけど、若干の拍子抜けの感もあった。


 地下1階は床も壁もしっかりとした石造り。相当な月日の元に風化した印象は受けるものの、異常さや異様さの類は感じられなかった。例えるならば、修学旅行の時に見学したドイツの古城である。その地下室の雰囲気に似ていた。確かに特別な場所ではあるけれど、身構えていた程ではなかったという感じだろうか。


 僕らは横並びに回廊を進んでいた。

 回廊の幅は、もう一人分ぐらいの余裕がある。


 広いと思うべきか、狭いと思うべきか。


 何にしろ、大軍の行進ができる程の幅はないため、迷宮の攻略にはパーティーという単位が用いられる。パーティーとは、三人から六人の冒険者による戦闘集団のことを云う。それぐらいの人数が、迷宮というフィールドを鑑みた時には最適な人数なのだ。


「はい。クリア」


 ルーシーはそう云って、小走りに僕の前に出た。


 神秘石の緑光が周囲を照らしているが、遙か先まで見通せる程のものではない。そのため、僕はどちらかと云えば、転ばないようにという意味で足下に注意していた。一方で、迷宮に慣れており、地下1階程度では余裕綽々のルーシーはひたすらゴールを探して暗闇を注視していたようだ。


 ゴール。

 すなわち、さらに下の階層に続く階段である。


 僕をちょっとだけ置き去りにしながら、ルーシーは階段の前で万歳のポーズ。光源は彼女自身であるため、それで僕にも階段がよく見えるようになった。回廊と同じ幅の階段は、迷宮の入口にあったそれとほぼ変わらない。


「意外とあっさりだね」


 僕はそんな感想を漏らす。


 ここに至るまで、分かれ道は二回あった。


 最初の分かれ道で、僕らは左を選んだ。しかし、その道はすぐさま行き止まりとなったため、引き返してもう一方の道に進んだ。続いて登場したのは交差路で、僕らはそこを真っ直ぐに進み、そのままゴールに至った。


 所要時間は、15分程度か。

 その内の5分は、ルーシーがGラットを虐殺していた時間だけど。


「まあ、チュートリアルみたいなものだからねー」


 ルーシーはそんな風に云い返してくる。


「迷宮は、下に行けば行く程、どんどん広くなるんだよ。こうね、ピラミッドが埋まっている状態を想像して。入口はてっぺんの所にあって、上の方のフロアは狭く感じるけれど、下の方はその何倍も広くなっていくの」


「さらに、魔物も強くなると……」


 なるほど。


 僕には、まったく向いていない。


 浅い階層ならば、ルーシーに頼ることで散歩気分のまま踏破することもできるが、ミノタウルスやラミアが雨後の竹の子のように湧いて出る深層を目指すのは、現状ではどう足掻いても無理そうだ。


 深層〈地獄〉、そのさらに果て――。


 真のゴールである地下100階。


 そんな所に至るなんて、僕には想像もできない。


「まあ、わかっていたことだけどね」


 ちなみに、ハーレルアの迷宮の終わりが地下100階であることはリリィが教えてくれた。その事実を知っている者は現状、〈封印を司る者〉であるリリィを覗けば、僕だけらしい。もちろん、リリィがそう云っているというだけで、ハーレルアの迷宮の終わりが地下100階であるなんて、本当なのか嘘なのかはまったくわからない。


 そしてまた、真実を探る術はまったくないのだ。


 少なくとも、今の所は――。


「ところで、マリア」


 次のフロアに向けて階段に歩み出そうとしながら、ルーシーが不意に云った。


「どうして、いきなり迷宮に入りたいなんて思ったの?」

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