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13 帽子

 白猫のリリィを飼い始めてから、一週間が経った。


 彼女はその間、〈迷宮の王〉だとか〈封印を司る者〉だとか、僕が尋ねてもいないことを色々と説明してくれたものだけど、特筆すべきことは余りないような気がするので割愛。


 それよりも、僕の可愛さについて語ろうじゃないか。


「割愛すんニャ!」


「僕のモノローグに突っ込むなよ」


 リリィの定位置は、僕の肩に決まっていた。


 時々は、頭の上。


 多少の重さは感じるけれど、腐っても猫ということか、器用にバランスを取ってくれるため、ほとんど気にならない。他人の目がある時は、あくまでただの猫として振る舞っている。


 一方、僕と二人きりになると、途端にあれこれとやかましい。


「僕の温情で、お前はここに居られることを忘れるなよ」


 一応、釘を刺しておいた。


 御主人様が可愛がっている以上、実は、僕の意思だけでリリィを屋敷から追い出したりすることはできない。ただし、僕の肩から追い払うことは可能だ。そうしないのは、初日に一晩中泣かしてしまった気まずさと申し訳なさ、それらの償いの意味が強かった。


 また、それに加えて――。


「リリィ、どうかな?」


 僕は、真剣な声色で尋ねた。


 それなのに、彼女はやる気なく返してくる。


「あー、はいはい。似合っているニャ」


「こら。ちゃんと見ろ。大事なことだぞ」


 僕らは、自室で姿見の前に立っていた。


 本日のファッションチェック。薄手の黒のローブに、インナーは白のブラウス。胸元には、細めの赤色タイ。春の陽気もそろそろ感じられる頃合いだから、ブーツは明るめの色合いをチョイスした。


 ここまでならば、ただ単に普段通りの僕である。


 シンプルに、可愛いだけの僕。


 超可愛いだけの僕。


 しかし、この一週間、僕は大きな問題に頭を悩まされていた。それは、肩の上に常時、猫が乗っているということだ。見た目的に、このアクセントは凄まじい影響力を持っている。肩の上に、猫である。白猫である。当然ながら、今まで通りの服装で許されるはずがなかった。


 それ相応の服装を再構築しなければいけない。


「じゃーん」


 悪戦苦闘の末、僕はひとつの答えを手にしていた。


 ハーレルアの帽子屋に頼んでいた特注品が、ようやく届いたのだ。


「どうかな、この帽子?」


 幅広の三角帽。色はもちろん、黒である。


 大げさで下品にならないように、ぎりぎりのサイズ感。コスプレのような滑稽さが出てはいけない。だから、素材は良いもので頼んでおいた。所々の意匠も、黒のローブというテンプレの合わせ方だけでなく、どんなアウターにも合うように試行錯誤を重ねたものだ。


 僕は息を呑む。


 鏡の中には、天使のような魔女っ娘がいた。


「か、完璧じゃないか」


 僕は、感動に打ち震える。


 リリィは肩の上で垂れながら、「はいはい、可愛いニャ。可愛いニャ」とやっぱりやる気がない。「お前には、この素晴らしさがわからないのか?」「我は、衣服に大して興味がないニャ」「ははは。さすが、常時全裸の女は云うことが違うな」「ぜ、全裸とか云うニャ!」と、仲良く罵り合った。


 何はともあれ。


 僕の可愛さについて語った所で、次に行こうか。

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