共存の象徴
あるところに、とても家族思いな王様がいました。
「ひゃっはー、今日も国民を幸せにしてやるぜ!」
下っ端みたいな口調で喋りながらも、毎日国民のために頑張る個性的な王様です。
王様は個性を大事にする人だったので、皆の違いを大切にしていました。
「男の娘! 萌えるからOK! けも耳もふ耳! 良いじゃねーか味が出てるぜ!」
そんな王様を皆が頼りにしているため、その国では色々な種族が暮らしています。
でも、たくさんの種族がいると諍いが起きる事もしばしば。
そういう時は、王様が見につけている真っ白なスーパーマントが活躍しました。
人を乗せて飛ぶ事ができたり、あらゆる攻撃や魔法を防いでくれるため、王様は大助かりです。
たまに酷使して破れてしまう時もありますが、王妃様がちくちくと縫い合わせてくれました。
そんな王様は、いつも家族を大切にして、誕生日や記念日を忘れずにお祝いしています。
家族にも自分の考えを教えて、たくさんの人と仲良くするように言っていました。
しかし、ある日たくさんの人となんて仲良くできない、という人達が現れて、国で迷惑行為を働き始めます。
彼等は世界滅亡邪神教団。
名前だけでも危ない彼らは、行動も危ないので、色々な国で指名手配されている存在です。
「きゃっはー。多種族との共存なんてむりむり! そんな事するくらいなら滅んだ方がましだっつーの!」
彼等は、色々な種族と仲良くしている人たちを攻撃して、邪神教団色に染め上げてしまいます。
捕まってしまった人たちは、真っ黒な衣装に身を包んで「全ての個性を拒絶する、我々が一番だ」、と主張し始めます。
そして、世界滅亡のために邪神をあがめ始めます。
王様は困ってしまいました。
しかしその時、王妃様が王様にアイデアを授けます。
たくさんの魔法の薔薇を集めて作った染料を彼らの衣装に振りかけると良いと言いました。
王様がその通りにすると、なんとびっくり。
彼等の衣装が、赤と黒のまだらになってしまいました。
しかも、模様はその日身に纏っている人の気分で、色々変化してしまいます。
邪神教団も、これにはさすがにびっくり。
あまりにも驚きすぎたので活動を休止してしまいました。
邪神教団は追加で新しい衣装を作ったものの、すべてまだらになってしまいます。
彼等は、衣装は心の鏡だと考えているため、これでは活動できません。
邪神教団は活動休止状態になりました。
そうして時間がすぎていく間、世界滅亡邪神教団は衣装を元に戻すために、各地を旅してまわり、魔法の染料を開発します。
作り上げた色々な染料を衣装に振りかけて、緑っぽくしたり、青っぽくしたりしているうちに、邪神教団の服はすっかり色々な色になっていました。
その頃になると様々な国や様々な人と関わる事になっていたので、考え方が変わる者達がぽつぽつ出始めます。
「色々な人達と関わるのも悪くないんじゃね?」
「思ったより楽しいんじゃね?」
そう思った人たちが邪神教団を抜けていきました。
そうして彼らの組織は自然消滅、世界に平和がもたらされます。
最後に残ったリーダーがやけっぱちになって邪神を復活させてしまいますが、薔薇色のマントを羽織った王様と、たくさんの種族の協力で倒されました。
この出来事がきっかけで、後の時代では、王妃様が開発した薔薇の染料をしみこませた薔薇色の服は、皆の共存の象徴になっていました。