インターン 1-4
情報持ち込みでゼロの人が来る。
本局である公安「ゼロ」、Zeroの人。
ゼットの人、ここでは仮称「是徒」さんとする。
挨拶もそこそこ時間をムダにせず是さん、かちりICレコーダ起動。
『……なるほど、趣旨は承りました、しかして、何をいかほど、ご用意されていらっしゃるのでしょうか』
『貴方方が望むものであれば、およそ、如何様にも』
『それは、つまり』
『希少鉱物、燃える水と霧、お望みであれば個別の快楽、不死は無理ですが若返り、長命くらいであれば』
ざわめき。
『大変魅力的なお申し出ではありますが、当方には、何を望まれるのでしょう』
『貴方方にとっては、そう、日々産出される、老廃物です』
『それは』
『しかし、私たちにとっては、代え難い財貨であり、宝玉なのです』
『それを、私たちが提供できると』
『極めて、潤沢で、良質でもあります』
『ご説明下さい』
『魔力であり、魔素です』
ざわめき。
かちり。
「とまあ、こうした具合でね」
再生終了。
「聞いての通り、こいつはお宅さんの、もっと言やウェン担さんの事案なんじゃないの、と、そうした次第でお邪魔したワケですわ」
是さん、ちらりと一座を見渡して。
室長、資正さん、上長、自分、紺野サブ、天森。
天森の姿に、なんだ、なんで学生が混じってる、いや、と瞬き、刹那奇異の色を発したが表情は変えず、往来で日中すれ違ってもぜったい、気付けなさそうな、存在感のなさ、特徴なし中肉中背自然体、音無しの構えが逆の凄みを感じさせる、そんな人。
「そのようですね、はい、間違いありません」
代表して、室長。
“「交渉相手は、お前たちではない」”
うん、云ってたいってた。
ふんうん、一つ頷いて、で、どうする、と。
「どう、とは」
「このまま」
と、挙げた指をちょろちょろ振ってみせて、是さん。
「泳がせとくか、それとも」
返してそっと落とした指先を、ぷちっ、と自ら言い添え卓に押し当てて。
「潰すか」
そうね、と室長。
「潰しましょう、速やかに、ただし、穏便に」
即決。
「いいんだな、泳がせなくて」
「そこまで甘えられませんから」
にこやかに公嗣さん。
こえー。
「可能ですか」
「まあ、そうしてくれると助かるわ、正直」
「仰る通り、私たちの事案ですので、でも」
「いや、丁度良かったのよ、《《本筋》》でもね、《《理由》》が付くなら渡りに舟で、んー、ただ」
「穏便は」
「ちょっとは締め付けたかったとこ、ま、それはソレで」
是さん、何か手早く書きつけるとそのまま立ち上がり。
「以上で、また何か引っ掛かったら」
「お世話になります」
「こちらこそ」
飄々と退室。
そして少しして、与野党党幹部名簿数人が、ひっそりと更改された。