インターン 1-3
で、天森が中に招き入れられ、外で待つ事少し、5分か、10分は経ってないと。
がちゃり。
出て来た天森。
もう一度礼をするかと思ったら、開いた扉もそのままふらふら歩きだす。
おや。
「それでは失礼します」
代わりに中に一声掛け、ひらら手を振り応える室長の口許が、“おだいじに”と動いたように見えたのは、後からの気のせいか。
そのまま微速維持のまま離れ行く背に足早に追い付き、肩に手を掛けた。
「おい、天森? 」
無表情。
見返す眼が虚ろ。
大丈夫です、私は大丈夫。
平板な声で応える、まったく言葉と正反対な状態。
で。
一応連れ戻したものの、何を問うてもただひたすらに無表情機械的に。
大丈夫です。
としか反応しなくなってしまったまったく大丈夫ではない天森、今ココ。
「術、とかではなさそやね」
額の辺りにちょっと手をかざし、眺めて、ほーんと紺野サブ。
そらそうだ、何でつぐみんが天森に。
にしても。
室長との面談以外、なにも思い当たるふし、ないんだよ。
仕方ないので資正さんに取次アポメを投げると、室長終日外出直帰予定と予想通りの即レスやっぱ。
いったいなんなんだよ初日から~。
しかし放置観察しても改善の兆しなし。
「天森」
「……大丈夫です」
「家まで送る、明日も無理して出勤しなくていい」
ようやく反応らしい反応が返って来た。
「そうたい」
早退ではなく相対性理論を意味するような深淵な口調で。
「いえ、大丈夫です! 明日こそもちろん大丈夫です!! 」
臨界に達し生起した核分裂なみの劇的な反応を突然示して。
「いえ、大丈夫です! それでは天森、大変申し訳ありませんが本日はこれにて失礼致します!!」
「ああ、うん、道中気を付けて」
弾かれるように起立し二つ折りに頭を下げ、逃げるように、退勤。
「……なんなん」
「わかりません」
そして、二日目。
少し早めに来たら、各員卓上を元気に雑巾がけの光景。
「あ、お早うございます! 」
「お早、あーウチ、そーいうのはいいから」
「では今日だけで」
「はい今日だけね」
少しだけ元気増しで、確かに大丈夫な天森、よかった、ホント。
しかしなんだったんだ、空白の5分。
九鬼伝来の元気ツボでも押されてたのか?? 。