威力偵察 1-4
そして翌朝、さらに、もう一名。
「矢嶋 孝雄と申します。本日より勤務を命じられました、皆さま、宜しく御願いします」
実直な言葉遣いだが、ゆるんだ顔に眠たげな眼つき、スーツの上からでも判るよく鍛えられ、肉付きのいい引き締まった体躯。
ぱっと見、柔道剣道段持ちの、資正さんのその雰囲気にも似た、武闘派、フィジカルに秀でての人員配属、人物のようだが、やはりどこか、違う。公安特有の剣吞さ、是徒さんらが纏う空気のそれ、とも。
「ウェン担の長を勤めます、チーフオフィサの外局 綾香です、この度はお世話になります」
「いえ、こちらこそ」
目線を向けて。
「紺野サブリーダー、貴方の部下です、宜しく御願いします」
今日の紺野サブ、どういうワケか、まるで上長とお揃いのようなダークスーツにパンツの上下でかっちり。
「サブリーダーの紺野 敏です、宜しく御願いします」
「こちらこそ」
確かに矢嶋さん、新人、席次最下位でその、実年齢はいちばん上。
や、実年齢、だと、サブが約半ミレニアム、か。
にしても、その紺野さんまでこの物腰は、なにがどうした。
「それでは、室内挨拶周り、同行します」
「待て」
綾香さん、席を立って。
「私も付き添う」
三人がブースを離れると、当然のよう洋子ちゃん、なにあれなにアレ? 。
隣で天森、猛然とサーフしていたが、ぴたりと止み、これって……ブラウザを指差し、固まった。
そんな若者たちを傍ら、着信を開いて自分もほぼほぼ、氷解。
「矢嶋 孝雄、通称、ジーマ」
自動翻訳、海外サイトを読み上げている。
高校中退、海外渡航。
民間軍事会社、PMSC、private military and security company 各社を渡り歩く。
実戦経験豊富な、文字通りの、フリーランス。
傭兵。
「実戦経験豊富」
「実戦経験豊富」
「実戦経験豊富」
天森の後ろに瀬戸くん、洋子ちゃん、若者たちが念仏のように繰り返しながらスクロールさせる。
「で、でも! 」
と洋子ちゃん。
「味方というか、即戦力ベテラン新人さん? 頼もしいオジさまよ、強力助っ人大歓迎! 海外から戦力補強、基本よねキホン! 」
しかしながら、気持ち上ずった声で。
ああ、うん。
いつでもどこでも躊躇なく人命を絶てる、殺しの、プロ。
この上なく頼もしい。