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神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈ですけれど~  作者: 於田縫紀
第8話 お土産と使い方

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39 なんだって!

 私は車と猪の様子を、全知を使って観察している。

 猪はなんとなく不機嫌そうな感じで川下、つまり車の方向へと早足で歩行中。


 そして車の前席左側にいたブルージュが、顔を少し上げて、前方遠くへと視線をやった。

 どうやら猪に気づいたようだ。


「この先に何か大きいのがいる。多分4分の1里(1km)くらい」


 ロシュが運転中の車の速度を落とした。彼女は左右を見ながらちらっと前方遠くを見る。


「本当ね。運転しながらではじっくり見えないけれど」


「多分、猪」


 ロシュ達と一緒に1列目の座席に乗っていたクエルチェが、目を細める。


「確かに猪ね。こっちに向かってきている」


「倒していい? もう少し近づけば倒せる」


 そう言ったのはブルージュだ。

 おいおい、8歳児が体重10倍の大物を狙うのかよと思ってしまう。

 でも考えてみれば、ブルージュは大人以上に魔法を使える。

 だから多分、問題無い。


「大丈夫? 何なら私がやるけれど」


「大丈夫。今の距離の半分くらいまで近づけば、狙える」


「わかった。任せるね」


「もう少しゆっくり走ろうか」


「今のままでいい」


 当初より速度は落としているけれど、それでも30km/hくらいで走っている。

 大丈夫だろうか。そう思いつつ、私は車の様子を見守る。


「下りて手伝った方がいいですか」


 これは2列目に座っているナルゼだ。


「大丈夫よ。ブルージュちゃん、私より魔法が得意だから。お世話役として神様と一緒に住んでいるから、その分色々な事を教わってもいるようだし」


 クエルチェ、ロシュとブルージュについては結構把握しているようだ。

 やはり世話をした事があるから気になるし、気にしているのだろう。


 ブルージュが手を伸ばして、車の前方に置いてある薪を4本、手に取った。魔法で使うとすればかなり多い量だ。

 ブルージュ、どんな倒し方を考えたのだろう。

 

 ブルージュが手にした薪が変化しはじめた。急速に灰になり、崩れる。1本、2本……


 なるほど。私はブルージュがどんな方法で猪を倒すつもりか、理解した。

 ブルージュが使っている魔法を、全知で知ったからだけれど。

 確かにこの方法なら薪が沢山必要だ。でも利点は多い。


 2本目が灰になったあたりで、猪がつんのめって倒れた。

 ブルージュの手元にある3本目の薪も、灰になっていく。そしてブルージュは、更に4本目に手を伸ばす。


 4本目が半分ほど灰になったところで、ブルージュは頷いた。


「倒した。冷やしてあるから、このままこの後ろに載せて、帰ったら解体しよう」


「でも今の、どうやって倒したの? 私はてっきり力の魔法で殴打するとか、血管を切るとか考えたんだけれど、どっちでもないようだし」


 確かにクエルチェの言う方法が、狩りとして魔法を使った場合の正攻法だろう。

 しかしブルージュが採ったのは、まったく違う発想だ。


「猪の身体全体を、凍る寸前まで冷やした。倒した後はどうせ冷やすから。それに出血していると、荷台が汚れる」


「冷やすだけで倒せるの?」

 

 確かにこの倒し方は一般的ではない。そもそも魔法を使えないと出来ない方法だし。

 猪は恒温動物で、恒温動物は低体温症で死亡するという知識も必要だろう。こういった知識は、この世界では一般的ではない。


 ブルージュはクエルチェに、大きく頷いた。


「神様の家にある本に書いてあった。冬眠しない動物は、身体を冷やして体の温度が戻せなくなると死ぬ。そして猪や鹿は冬眠しない。

 ただ温度の魔法は薪を一杯使う。だから車で移動している時でないと使えない」


「その本って、神様の家にあるの?」


 ブルージュは大きく頷く。


「神様が作っている。増えたら皆にも読めるようにするって言っていた。動物の他に、植物の本も、それ以外の生き物の本も、料理の本や物語の本もある」


 話している間に、車が大分猪に近づいた。


「出来るだけ近づけて止めて。運ぶのは私がする。あとは後ろの荷台に近い席で、魔法で冷やしている。帰りの運転はお姉ちゃん、お願い」


「いいの? ブルージュも運転したいと思うけれど」


「今日は猪を冷やしたり、汚れを取ったりしておく。それにこれを食べるの、今から楽しみ」


 うんうん、楽しみだから番をする訳か。子供らしくていい。


 車が停まったところで、ブルージュが下り、たたっと猪に駆け寄った。


「手伝った方がいいでしょうか?」


「大丈夫よ。力の魔法は、熱の魔法よりずっと簡単だから」


 ナルゼとクエルチェが、さっきと似たやりとり。

 そしてブルージュは水魔法でざっと猪の体表を洗い流した後、やはり魔法で猪を車の荷台に乗せ、自分は3列目の席に座る。


「何というか、凄いな。こんな小さな子でも、この大きさの猪を一人で狩って運べるんだ」


「子供でも出来るのはまだ、ここにいるロシュとブルージュくらいよ。子供だけれど村の中でもトップクラスに魔法を使えるから。この車もこの2人用。神様の従者だからというのもあるけれど、村の中では2人が一番上手く使えるから。

 でもブルージュ、嬉しそうね」


 ブルージュはうんうんと頷いた。


「コトーミ様の料理は美味しい。だからこれがどんな料理になるか、今から楽しみ」


 なんだって!

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