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Dead!

 実際のところ他人の城など、どうでも良かった。ギルドが潰れ、先行きの見えないモヤモヤを吐き出したかっただけ。

 いつか見た夢はこんな所にあるはずもなく。最初から理解していた。夢を見るには仄暗い世界に身を置きすぎた。

 コイツらの眼はあまりにも初々しくて、青臭くて、輝いていたから。

 その光に寄せられ熱に当てられてしまった。『燃え滓すら残っていない』と思っていた自分の心は、いとも容易く燃え上がった。

 剣を抜いたのはいつぶりだろうか。先生の教えは、いつまでも身に染みている。

 子供相手に大人気ないとも思う、先生に知られたら未熟と誹りを受けるだろう。

 ……それでも、全力で戦いたくなってしまったものは仕方がなかった。


 尾羽を弾かれ、金属の音が響くと同時に本能が警鐘を鳴らす。

 「硬っぅ!なんて強度してやがる」

 声を無視しバックステップで距離を取る。対抗策を練る暇もなくやってくる追撃、羽根に手が届かない。

 「剣も使うんだ!ズルくない!?」

 闇を切り裂く様に喉元目掛けて迫り来る一撃。それは直前ですり抜ける。

 「そりゃあ自由を求めるなら弓だけじゃダメでしょ」

 そのまま、返される刃は瞬きの間に線となって肩をかすめていった。

 「なるほど。強い訳だ」

  先を考え、漏れるため息。

 (これを崩すのは骨が折れるなぁ)

 実際、権能ギフトを使ってみて動き自体は存外、悪くないと考えていた。しかし、いかんせん相手が悪い。一太刀振るわれる毎に反撃のイメージがわかない、というのは良くない状況であるのは明らかで、これをどうにかしないと日皆の勝ちはない。

 激戦の中で揺れる木々に怯え、どこかに飛び去っていく鳥達。

 (夜中なのにすいませんねほんと)

 雑念に駆られながら、幾度となく浴びた剣を翼で防ぐ。後ろに下がり続けるにも限度があった。

 「やる気がないなら終わらせるけど」

 

 その一声にハッとする。うさぎのこともある、可及的速やかに終わらせる。という目標を楽しさにかまけて忘れかけていた。

 ふっと我に返る、燃え盛る様に高まる身体の熱。それに相反するように思考の熱は下がっていく。

 一太刀、受ける、流す。スローモーションになっていく世界。

 冴え渡る思考の中で浮かび上がる一つの疑問。

 それは、死なぬから不死鳥なのか?

 単純な問いかけ。

 いつか読んだ物語。記憶は曖昧だが、死して灰より蘇るのが不死鳥だったはず。

 では、この身を癒していたものはなんだったのか。辿り着けぬ問い、コレは今要らない。そんな事あとで考えればいい。

 今必要なのは、死んで蘇ることができるのかという一点のみ。

 この問いの答えの出し方は、一度死んでみる事が一番だと考えた。

 決して、死に対して恐怖がないわけではない。それでも、勝ちへの貪欲さ、未知への好奇心、自分自身の限界。

 それらが、死への恐怖心を上回ってしまっただけのこと。常軌を逸した考え、ソレを実行に移す為に覚悟を決める。

 

 「じゃあまぁ……死んでみようか」


 これから自分が行う事柄を再確認し、到底正気ではないと溢れる笑み。身を守り包む様に使っていた翼を背に納める。

 迫り来る剣、翼を撃つ為に振るわれたそれは行き場を失った。代わりの目標は、すいと差し出される色白い少女の首。

 剣の担い手には驚愕と困惑、当たり前だろう。堅牢に守っていたと思った次の瞬間には自らの命を差し出されていた。


 「止めるの間に合わないッ!コイツ……イカれてる!」


 勢いよく振り抜かれた剣は、スパン!と少女の首を刎ね飛ばしていた。

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