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終わりとはじまり

 あぁ、彼は何を間違えたのだろう。自らと同じ姿をした少年が、崩れ燃え盛る瓦礫の上で子供を抱き抱えたまま項垂れている。

「これで終わりか…」

 現状を嘆く涙であるかのようにぽつりと溢れた言葉は、ゆくあてもなく消えてゆく。

 腕の中に抱えた子供はもう動かない。一刻前に「ごめんね、おにいちゃん」という言葉を最後に息を引き取った。

 動く気力も消え失せ、頭の回転も止まり始めたが、ザッザッというモーターの駆動音混じりの足音に意識をやる。

 少年はソレをキッと睨みつけたが状況は何も変わらない。武装した機械は少年の方を見やり何か連絡を始めた。

 そしてすぐ、何かが音速で瓦礫の山に飛来する。着弾とほぼ同時に10メートルほど吹き飛ばされた辺りで壁に衝突し少年の背中に衝撃が走った。

「ッてぇなぁ…こっちは死にかけてるんだぞ。」

 飛んできた翼竜とミサイルを合わせた様な姿をしたソレは勝ち誇った様に少年に向かいゆっくりと話し始める。

「死んでくれて結構。しかし、幾ら死に体とはいえお前たちがこの程度で死ぬわけがない。しかし、お前たちの力でオレを止められない様に、お前たちを殺すのはオレでなくてはならない」

「そうか。でもいつか俺たちはお前を越えてみせる」

「越える?ハ、笑わせるな。オレを必要としたのはお前たちだ。製造者責任というものがあるだろう。此処で死んでいけ」

「お前を作ったのは俺たちの総意じゃない。こんなものが生まれなければいいと思っている人間の方が多いと信じている」

「まぁ確かに、そうかもしれんな。しかし、オレの様な物が人類誕生から無くならんのもまた事実だろう。オレが消えることはない。お前に、この試練の回答はあるのか?」

「悪いがまだない。でもいつか見つけるさ」

 今にも溢れだしそうな悔しさと無力感を噛み殺し、精一杯の虚勢で返す。

「そうか。ではまた会うことになるだろう。楽しみにしている」

 歪な姿をしたソレは虚空からライフルを取り出し引き金に指をかける。

「でもさぁ、この世界まるまる皆殺しにされて、ただで死んでやるわけにはいかねぇよなぁ?」 

 そう呟いた少年は、最期の力を振り絞り力一杯叫んだ。

「我と我、未来を打破せし世界の禁じ手、この命この世界を礎に、彼方の安寧を祈り続けよう!」

 一瞬、少年から極光があふれ出し、光はどこかへ消えてゆく。その様を見届けた翼竜は不快そうにこちらを見やる。

「権能譲渡か、複製品レプリカを幾ら残そうが無駄なあがきだ」

 少年から出血が酷くなり、ぐったりとしている。それを見た翼竜は初めて焦燥の表情を浮かべた。

「まさか!原典オリジンを手放したのか?最期まで癪に障るクソガキだ。しかし、これでお前に残された道はなくなった。ここからどうする?」

「どうもしないさ。俺からコレ(オリジン)取ったら別んとこ行く予定だったろ?最期の嫌がらせに、此処のお前は此処にいてもらおうと思ってさ」 

 少年は最期に空を見上げる。

(上手くやれよ)

 彼は心の中でそう呟くと覚悟を決めた。

「随分と規模の大きい心中だな」

「他に回答者チャレンジャーがいるならなら、そっちにもチャンスがあったほうがいいだろ?」

「業腹だが一理ある。オレもこの回答には興味がある。他に言い残したことはないか?」

 反応する力も残っていないのでその言葉を聞き流した。最期まで自分に何が足りなかったのかを考えながら。

「そうか」

 翼竜はそう告げると手にあったライフルで少年の頭を撃ちぬく。

 カランカランと音を立てて落ちた薬莢は、終末の鐘の音の代わりにその世界に終わりを告げた。


 



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