6 男達の挽歌?
6 男達の挽歌?
俺は目の前にいる男達の話を聞く事にした。
「まず順番に名前、それと村で何をやっていたのか、話してくれ…」
男達は顔を見合わせて、誰が最初に話すか視線で確認している。すると俺を『アニキ』と呼ぶ、太った大男が話を始めた。
「…じゃあ、まず俺から話すよ。俺はヒュージ。ヒュージ・スクアードだ。俺達は一年違いの兄弟だよ」
顔付も体格も全く違うし、アニキって呼ぶから義兄弟かと思っていたが、まさか本当の兄弟だったとは…。
「…解った。ヒュージ、お前は村で何の仕事をしていたんだ?」
「俺は木材伐採をしてたんだ。木材の事なら大体の事は解かるよ」
「…そうか。ちゃんと仕事してたのに、何で盗賊になろうって決めたんだよ?」
「…いや、アニキが盗賊やろうぜッ!!って言うから…」
…いや、なんだその軽いノリは…。そうだ!!京〇いこうぜ!!ってくらい軽い感じだな…。
「…そ、そうだったのか…何かスマンな…」
「…いや、良いんだよアニキ…。しかし何も覚えてないって…本当に記憶失くしちまったんだな…」
「…あぁ、全く記憶がないんだ…」
記憶がないって言うか、そもそも別人格がグランジの身体に入り込んでるから知ってる訳ないんだけど…。
とにかく神様が来て何とかしてくれるまで誤魔化さないと…。
実弟、ヒュージに続いて、シルバーの短髪で額には俺と同じバンダナをしている、細面で目付きの鋭い、カイゼル髭の背の高い男が話してくれた。
「俺はテジー・ストラドルだ」
「…ふむ。テジーだな。テジーは何をしていたんだ?」
「俺は、戦略士官を目指して領都に出てたんだ。ちなみにグランジと俺は幼馴染だ。子供の頃はよく一緒にバカやってたよ」
「…そうか。テジーは士官目指して領都にいたのにどうしてここにいるんだ?」
俺の言葉に、テジーが顔を顰める。
「本当に何もかも忘れちまったんだな…。お前が『俺達盗賊やるからお前も戻って来いよ!!』て書いた手紙を寄越したから、バカはやめさせようとして戻ってきたんだよ…」
「…あぁ、そうか…。何か本当にスマンな…」
次に、細身で背の低い、黒髪で頭がぼさぼさ、糸目の出っ歯が話す。
「あっしはフィネス・ウィークでやんす。村で情報屋をやってまして…。あっしは昔から、グランジさんの舎弟ですよ」
「…舎弟…。そうか、ウィークは何でここにいるんだ?」
「…いや、グランジさんが『お前は舎弟なんだから当然、俺と一緒に盗賊やるよな?』って言ったもんで…」
俺は溜息を吐いた、
「…そうか…。前の俺に変わって、今の俺が謝る。本当にスマン…」
「ぁ、いやいや。グランジさんには一度、女風呂覗きで捕まりそうになったあっしを助けて頂いた事がありやして、へへっ…」
…前言撤回だ。覗きなんかするなよ…。
次に、俺を『カシラ』と呼んでいた男だ。
「…カシラ、次は俺が話してもいいですかい?」
「…あぁ、どうぞ…」
「俺はスネア・カーズです。村での職業は狩猟の為の罠の設置や、獲物の誘導をしていました」
「…そうか。誘い文句は敢えて聞かない事にするよ…」
スネアは中肉中背、細く筋肉質な引き締まった体型だ。影の薄い特徴の掴みにくい、ごく普通のヤツだ。栗色の髪で顔は…どこにでも良そうな、と言えばいいのか…特徴がない!!
スネアに続いて、ボロを纏ってはいたが紳士の様な品を感じさせる男が自己紹介を始めた。
「ガイ・ウィズダムです。村では服飾と縫製屋をしておりました。グランジさんとは昔、一緒にワルをよくやってました」
体型的には細身だがやはり筋肉質だ。服飾、縫製をしてるとは思えない厳めしい目付きと彫の深い顔立ち。黒い髪をオールバックで後ろに流していた。
こんな怖い顔のヤツと昔、ワルやってたって…一体何やってたんだ…。
敢えて何も聞かないけど…。
最後に、この集団の中では一番イケメンな男が話をする。
「僕はラルツ・オーグル。村では木材販売の為の売り込みをやってたんだ。交渉なら僕が一番かな」
うっとり話すその男は、およそ盗賊には似つかわしくない顔立ちだ。優しげな眉、目尻の垂れた二重の青い眼。
そして引き締まった、筋肉質な体型だ。
しかし、グランジは何で軽いノリで人を盗賊に誘うんだか…。まぁ付いて来るコイツらもどうかと思うが…。
「…良く解った。皆、本当にスマンな…。そこでお前達に言っておく事がある。良く聞いてくれ!!」
俺の言葉に、男達はゴクリと唾を呑み込んだ。その表情から緊張が見て取れる。
「…良いかお前ら。今日を持ってこの盗賊団は『解散』とするッ!!以上ッ!!」
「「「「「「…え?…えええぇぇェェェェェェッッッ!!」」」」」」
男達の驚きの声が、山の中に響いた。