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5 俺達に明日はない…こともない。

 5 俺達に明日はない…こともない。


 俺は、ダメダメドジ天使に、神様連れて謝罪に来るように叫んだ後、男達に話を聞く為に振り返った。


 全員、顔面蒼白のまま固まっている。


「…お前ら、アレは幽霊とかじゃないからな。恐らくホログラムだ」

「…ぁ、アニキ…ホログラムって…何だ?」


 あぁ、そうだ…コイツらがそんなの知る訳ないか…。コイツらを納得させる為に、俺は簡単に説明してやった。


「ホログラムって言うのはな、光の加減でモノを立体的に見せたりするヤツの事だよ、だぶんな…」

「…おぉっ、カシラが急に賢くなったぞ?」

「雷の衝撃のせいだな…」


 コイツらの話しぶりからすると、このグランジって男は結構なバカのようだな…。取り敢えず、男達に座るように言う。


「…アニキよぅ、そのホログラムとか言うのと何を話してたんだ?」


 まず俺をアニキと呼ぶ、ガタイの良い太った男が聞いて来た。


「あぁ、あれはな、天使様のお告げを聞いてたんだよ。お前ら、さっき俺に雷が直撃したって言ったろ?正にあれがそうだったんだ。雷を喰らった後に頭の中に声が聞こえるようになってな…」


 男達はバカ正直なのか、俺の適当な話を真剣に聞いて相槌を打っている。


「…それでな、湖に来るように誘導されたんだ…。そこで聞いたお告げを話すから、お前ら良く聞けよ?」


 男達は無言で頷くと、ゴクリと唾を呑み込む。


「こんな中途半端で、適当な事してちゃダメだって言われてな…。運命を切り開くなら、覚悟してトコトン突き詰めて行くべし…さすれば、大きな道が開かれるであろう…だそうだ」


 俺の言葉に、全員真剣な眼差しで俺を見る。


「…なんかアニキ、雷に撃たれて人が変わったな?」

「お前ら、俺をバカにしてんのか?人間、雷の直撃受けりゃ人も変わるってもんよ…」


 まぁ、それ以前に普通に雷の直撃受けたら十中八九、死ぬと思うけど…。


 カッコ良く言い放ちつつ、俺は自分(グランジ)の事を把握する為に、順を追って確認する事にした。とにかく、ドジ子が神様連れて来るまで何とか誤魔化さないと、どうなるか分かったもんじゃないからな…。



 取り敢えず、名前はもう聞いた。次に俺…というか俺達がこんなボロ着てこんな森の中で何をしているのかって事の確認だ。

 

 俺達は湖のほとりで、胡坐(あぐら)をかいて座る。


「良く聞いてくれ。雷のせいで俺は記憶を失くしちまったんだ。俺達はこんな所で何やってたんだ?」


 俺の言葉に、男達は顔を見合わせて恐る恐る口を開く。


「…アニキ…。俺達は盗賊やってる。ここら辺りの縄張りを占めてるグリッド盗賊団に所属してるんだ…」


 たぶん身成からして盗賊の類だろうと思ってたが、ホントに盗賊やってたとは…。しかも単独じゃなくて盗賊団に所属してるのか…。厄介だな…。頭痛くなってきた…。


 そのグリッド盗賊団に、接触する前に何とかここから脱出したい所だが…。


「…そもそもなんで俺達は盗賊になろうって思ったんだ?俺達は孤児だったのか?」

「…いや、アニキ。俺達は全員同じ村の出身だ。森を東に進んでいくとリフレ村がある。俺達はそこの出身なんだ」



 …………。



 …コイツらアホなのか…?ちゃんと衣食住に困らない環境があったのに何で盗賊になったんだw?

 

 続けて俺は質問する。


「…俺は村で何してた?」

「あぁ、アニキは15歳から建築士見習いやって5年、棟梁に認められて建築士になってから4年やってる。村では結構いい腕だって言われてたよ。休みの日には、村の防衛柵の修繕で土木も手伝ったりしてたんだ…」


 その言葉に男達はうんうんと頷く。


 …ちょっと待てよ?えーと見習い5年、正式に認められて建築士を4年、コイツは24歳か…。

俺は座ったまま頭を抱えてしまった。



 …コイツ、バカの極みだ…。



 若くして認められ、きちんとした職業、一定額の収入がありながら何でこんなボロ着て盗賊なんかに…なんか泣けてきた…。


「村の人達も、カシラの事、絶賛してたんだぜ?さすが村長の息子だってな…」

「…ん?待て!!今なんて言った…!?」

「村の人達がカシラの建築の腕、絶賛してたって…」

「いや、そこじゃない!!その後だ!!」


 俺の剣幕に、男の一人が驚きつつ答えた。


「さすが村長の息子だって…」


 そう、それだ!!コイツは村長の息子で、建築の腕を持ち、休みには村の為に土木の手伝いをしてた…。手に職を持ち、金もあったはずだ…。それなのにコイツは…。


 何があって、どうしてここまで逆に振り切れてんだ!!このアホがッッ!!俺は怒りで、自分(コイツ)の腹にコークスクリューブローを叩き込みたくなってきた…。


「…あ、アニキ…、大丈夫か…?」

「…カシラ、一体どうしたんだ…?」


 頭を抱えて、ハラハラと涙を流す俺を心配する男達。


「…いや、スマン。何でもないんだ…。続けてお前らの話も聞かせてくれ…」

「…ぁ、あぁ…。解ったよ。改めてアニキに俺達の紹介するのも変な感じだけど、記憶失くしちまったから仕方ないよな…」


 俺はコイツらの話を聞く為に、涙を拭う。ボロ装備の袖が臭くて再び腹が立って来た。

俺は心の中で叫んだ。


 ドジ子オォォォォッッ!!早く神様連れて来てくれえェェェッッ…!!

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