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3 転生…されてます?

 3 転生…されてます? 


 強い光と共に、闇を通り抜けて意識が沈んでいくのを感じた。暫くして、俺は息苦しさと余りにひどい臭いで意識が覚醒した。


 あれ?目が開かない。確か俺は…一度死んで…天界で転生手続きをして…。おかしいな?前世の記憶がある…?俺は…夏目(なつめ) 爽士(そうじ)…。


 しかし、おかしな状況に構ってる余裕もない程の強烈な臭いで、俺は飛び起きた。


「やったー!!アニキの意識が戻ったぞ!!」

「…カシラ、心配したぜ!!」


 何だか周りがうるさいが、俺は前が見えず目を掻き毟る。


「アニキ、バンダナだよ!!バンダナがズレてんだ!!」


 …バンダナ?何で転生した俺がバンダナなんか巻いてんだ…?俺は落ち着いて目を隠していたソレを取る。


 俺は周りを確認する。俺の周りには小汚い装備に身を包んだむさくるしい男達がいた。全員無精ひげで日焼けしているが、ワイルドを通り越してもはやホームレスの様な格好のヤツらだ。臭うはずだ。


 臭いのはコイツらだ。そう思ってとにかく、早くここから立ち去ろうと木製のカビ臭いベッドから下りて立ち上がる。


 しかし足に力が入らずよろけてしまった。一番近くにいた俺を『アニキ』と呼んでいた太ったガタイの良い男が、慌てて俺の身体を支える。


「…アニキ、ムリしないでくれ!!さっき雷に撃たれたばっかりだからよぅ…」

「…何…?何で俺が雷に撃たれて…いや、俺は天界から転生してここに来たはずだ…」


 俺の言葉に、むさい男達がキョトンとする。しかしとにかく臭過ぎる!!何かおかしいが、早くここから出ないと…。


 俺は太った男の手を払って、外に出ようとする。心配して前を塞ぐ男達。しかし余りのカビ臭さとすえた臭いに俺は思わず激昂してしまった。


「臭いんだよッ!!早くどいてくれッ!!」


 俺の叫びに、男達は後ずさりをして道を空けた。


「アニキ、なんか変だぜ?どうしちまったんだよぅ」

「…カシラ、おかしくなっちまったのか?」


 心配そうな男達の言葉を無視して、壁に手を付いてヨロヨロと歩く。何か妙だ、転生したはずなのに何かがおかしい。しかし今はこんなヤツらに構ってられない…。


 俺は必死に歩いて、今にも外れそうな木の扉を押し開けた。



 扉を開けた瞬間、余りにも強い太陽の光に思わず、手を翳して顔を背ける。暫くして、(ようや)く、光に慣れてきた俺の目に映ったのは森だった。


 …ここはどこだ?俺は思わず振り返る。


 そこには木で作られた小さなボロの掘っ立て小屋があった…。男達は小屋から出て来て、俺を心配そうに見ていた。


 森…ボロ小屋…俺は何でこんな所に…近くに湖らしき水場を発見した俺はヨロヨロと近づいていく。


 とにかく喉が渇いていた。速くのどを潤したい衝動で必死に歩く。湖の端にたどり着いた俺は手で水を掬うとひたすら飲んでいく。


 水は冷たくて気持ちが良かった。喉の渇きが収まり、俺は水で顔を洗う。何かゴワゴワしていて気持ち悪かったからだ。


顔を洗ってさっぱりした俺は、湖面に映った顔を見て思わず叫んだ!!


「…なんじゃ、これはああぁぁぁぁぁぁーッッ!!」


 湖面に映っていたのは、日焼けして瘦せぎすな不健康な顔で、目元は落ちくぼんでいて顔中ヒゲだらけの顔だった…。


 一体どうなってんだ…。そもそも転生するって事はどの生物に生まれ変わるとしても、まず赤ちゃんからだろう?


 それが今の俺は、あのパイレーツ映画に出てきそうなザコっぽい海賊(この場合、山賊か盗賊だけど)みたいな格好だ。


 おかしい。どう考えてもおかしい。そもそもちゃんと転生されてないんじゃ…。


 頭にはよれよれのバンダナ、身体にはボロのレザー装備、腰に錆び付いたボロイ剣。ナニコレ?コスプレにしても酷すぎるだろう?


 俺の叫び声を聞いた男達が集まってくる。振り返った俺は、男達に聞いた。


「…俺は…誰なんだ…?何があった…?」

「…あぁ、アニキはさっき突然、雷に撃たれてよぅ。…記憶、失くしちまったのか…?」

「…あぁ、そうらしい。それで…俺の名前は…」


 俺の言葉に男達は顔を見合わせる。


「…アニキの名前はグランジ。グランジ・スクアードだ」

「…グランジ…スクアード…」


 頬がこけていて髭だらけの癖に、名前だけは無駄にカッコいいな…。とにかく俺は状況を把握する為、男達に確認する事にした。


 このグランジとやらが、何を生業(なりわい)としている人物で何歳なのか?そしてグランジと、この男達は一体どういう関係なのか…。


 諸々の話を聞こうとした所、男達の顔が急に蒼褪める。そして、後ずさりを始めた。


「…ん?どうした…?」


 振り返ると、湖面の下から、すぅーっと女性が静かに現れた。俺にはその顔に見覚えがあった。

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