26 一難去ってまた一難。
俺とドジ子が小屋に戻ろうとしたその時、スネアとテジーが慌てて戻ってきた。
「…カシラッ!!大変ですッ!!ロキシアのヤツらがッ…!!」
「…グランジ、まずい事になったぞ…」
「…ロキシアのヤツらがどうした?何があったんだ?」
俺の問いにテジーが息を整えて答える。
「…ロキシアのヤツらがリフレ村(グランジたちが元々住んでいた村)を取り囲んでるんだ!!」
…チッ!!アイツら、村の方に行きやがったか。
俺は思わず舌打ちをしてしまう。
「…アイツら、かなり痛めつけてやったのに村を包囲するチンピラがまだいたのか…」
「…グランジ、だから言ったろ?アイツらはギャングなんだ。一部を潰しても召集が掛かれば別の構成員が集まってくるんだよ」
「…カシラ、どうしますか?」
スネアに聞かれた俺はしばらく考えを巡らせる。村を護る為に盗賊の真似事までしてグリッド達から金を巻き上げて締め上げてやったんだ。
その村がギャングに襲われて潰れてしまったら意味がない。それこそ本末転倒だ。さて、どうするか…。
「…夏見さ…いや、グランジさんっ、すぐに戻って村を助けるべきです!!」
「…グランジ、天使様のいう通りだ。俺達は村を護る為にこんな事をしてるんだ!!早く戻った方が良い!!」
二人の言葉を聞いて頷きつつ、スネアを見る。
「…今から作戦を練る。スネア、ロキシアのチンピラ共は何人いる?」
「…テジーさんと俺が見た感じだと少なくとも300人はいるかと思います…」
…300人か。かなりいるな…。
「…ボスは…ダムドは来てるのか…?」
「…はい。幹部で娘のラミルも来ています…」
「…そうか。構成員ほぼ全員、動員していると言った所か…。それだと領都のロキシアの館を襲って包囲を解かせる作戦は使えないな…」
俺が考えたのは孫ピン兵法の敵の包囲を解かせるあの『策』、敵の本拠地襲って包囲を解かせるアレだ。しかしこの作戦はボスのダムドか娘のラミルが領都のロキシアの館にいないと意味がない。
改めて作戦を練ろうとしたその時、テジーが俺に聞いてくる。
「…グランジ。お前、今なんて言った?」
「…ん?ロキシアの館を襲って包囲を解かせる事か…?」
「あぁ、そうだ。他の方法でロキシアのヤツらの包囲を解かせればいいんだよ!!」
テジーの強い言葉に、俺とドジ子、スネアが視線を合わせる。俺達はテジーが何を言いたいのか分からなかった。
「グランジ、俺達は天使様も含めて七人しかいない。しかも今はガイ、ラスツ、フィネスは出ている…。木材伐採しているヒュージを含めてもたった五人だ…」
「…あぁ、そうだな。それでどうするんだ?俺のスキルを使えば何人かはやれるが俺達が囲まれる危険の方が高い…」
個人的な体感だが窒息させるにしろ過呼吸にさせるにしろスキルの範囲は大体30人を超えない程度だ。現在の俺のスキルだと一気に300人を窒息、過呼吸にさせる事は出来ない。
ましてや箒で吹っ飛ばすなんて10人程度が良いところだ。こういう時は賭けに出ず、安全策でいかなと自分自身を危険に晒してしまう。一番の策は自分達が危険にならない方法で包囲を解かせる必要がある。
「賭けじゃなくて堅実な方法でロキシアの包囲を解かせたい。出来れば俺達が手を出さなくても良い様な作戦を…」
そこまで言った俺は、ハッとした。俺達が手を出さなくてもいい方法が1つ、ある。まさかテジーが言いたいのは…。
俺の驚いた様な視線に不敵に笑うテジー。
「…そうだよ、グランジ。俺達は今、五人しかいない。森の中からゲリラ戦を仕掛けても300人いるロキシアの包囲を崩すなんて無理だ。俺達が危険になる。だから俺達はヤツらに当たらない方が良い」
テジーの言葉にドジ子とスネアが疑問の表情で問う。
「…テジーさんは何が言いたいんですか?わたし達がロキシアに当たらないなら一体誰が…」
「そうですよ。テジーさん。俺達の他に村を助ける事が出来る人なんて…他に誰がいるって言うんですか!?」
そんな二人を俺が宥める。
「…二人とも落ち着け。今、テジーの言いたい事が分かった」
俺の言葉にドジ子とスネアが顔を見合わせる。
「カシラ、どうするんですか?ロキシア300人に対抗出来るヤツらなんて…ぁ、ま、まさか…?」
そこまで言ったスネアはテジーの意図に気が付いたようだ。同じく、スネアの言葉でドジ子も気が付いた。
「…そうですか!!その作戦がありましたね!!それならわたし達が手を出さなくても良いですからね!!」
二人の言葉に頷くテジー。
「…テジー、お前面白い事考えたなw?」
「いや、俺はお前がやりそうな事を考えてみただけだ。グランジ、お前ならどうするかをな…」
テジーはそう言うが俺が考える前にそれ思い付いたのはテジーだ。さすが領都で戦略士官訓練を受けていただけはある。
テジーが考えた作戦はこの先にいるカニング盗賊団を動かす事だ。
「グリッド達がさっきのヤツに潰されたからカニング盗賊団は今、250人程度に減っている。だが盗賊もメンツがあるからな。上手く説得すれば動いてくれるはずだ。グリッド達がロキシアの用心棒に殺られたのは事実だ。メンツを潰されてこのまま黙ってないだろう」
テジーの言葉に俺は頷く。
「決まりだな。カニングを上手く動かしてロキシアの包囲を解かせよう。ロキシアは背後を取られたくはないだろうからな…」
続けて、ドジ子が悪魔のような笑みを浮かべて言う。
「…クククッ、この際だからゴミ共には潰し合いでもして貰いますか!!わたし達は生き残った方を最後に叩き潰すんです!!ゴミのようにね!!正に一石二鳥です!!」
その言いようにドン引きする俺とテジー。直後にスネアの言葉で我に返った。
「カシラ!!そうと決まれば早く動きましょう!!リフレ村の中には非戦闘員の方が多いんです!!時間が掛かればかかる程、村が危険になります!!」
スネアの言葉に俺はすぐに二手に分かれる事にした。
「俺がカニングを説得してくる。スネア、案内を頼む!!」
「分かりました!!」
「それからテジーとドジ子は小屋に戻ってヒュージと合流。残りの麻痺弾と手頃な石を出来るだけ集めて待機だ、良いな!?」
俺の言葉に一同が頷いた。
◇
スネアの案内を受けて俺はカニング盗賊団の砦に到着した。さすがにグリッドと違って大所帯なだけはある。砦がデカい。
門衛に挨拶をして緊急で面会を頼んだ。
しばらくして許可が出たので俺達はカニングの砦内に入った。集金をしていた為に幹部連中は全員揃っていたようだ。
大広間の上座、中央に木製の椅子にザンバラ髪でひげ面の大男が座っていた。それがカニングのようだ。
両側には二人づつ、男達が座っている。
「緊急とは何だ?お前はどこの所属のヤツだ?」
カニングに問われて答えようとした俺より先に、頭にバンダナで眼帯をしたツンツン頭の目付きの悪い男が答えた。
「ボス。そいつはグリッドの所の最近入ったヤツです。オイッ、グランジッ!!カニングさんに挨拶しろッ!!」
その男は俺を知っているようだったが俺は知らない。と言うか顔の記憶がないからそいつが誰なのか分からなかった。後ろからそっとスネアがアスチュートさんだと教えてくれた。
ついでにアスチュートの向かいに座っているのがブルータル、その右隣に座っているのがレウドだと教えてくれた。アスチュートの左に座っているのがマッドというヤツらしい。
そう言えばグリッドの所のパシリがアスチュートの話してたな…。
そのアスチュートからの紹介で俺は深々と頭を下げる。
「俺はグリッドさんの所に所属するグランジ・スクアードです。カニングさん、幹部の皆さん。面会ありがとうございます。本日は緊急報告で参りました」
顔を上げた俺は今日あった事を話した。
グリッドの所に上納金を持って行くとグリッド達が惨殺されていた事、そしてそれをやったのが領都にいるギャング、ロキシアファミリーの用心棒で暗殺者のレインだと言う事を伝える。
俺の話を聞いた男達は騒然となった。
組織の幹部で一角を担うグリッド達がいとも簡単に全員殺されたのだ。50人規模だが一人の青年がそれをやったと聞いたらそりゃ驚くだろう。
「…で、グランジとか言ったな?お前はその時、何してやがった!?」
アスチュートの左に座る鼠のような傷だらけの顔をしたフードを被った小男マッドが凄んでくる。
「…まぁ待て、マッド。グランジを責めるのは話の後だ。お前はそのとき何をやっていた?まさか傍観してたわけじゃねぇだろうな?」
カニングに問われて俺は正直に答える。
「…俺達が到着した時には既にグリッドさん以外の者はほぼ、殺されていました。そしてグリッドさんは俺の目の前で全身を斬られて死にました…」
「…で、その暗殺者どうした?お前、まさか逃がしたのか…?」
「いえ、レインは俺が仕留めてグリッドさんの仇を討ちました」
「…ほう、能力者相手にお前が殺ったのか?どうやってそいつを殺した?」
「…実は俺も能力を持っています。そう言って拳大の石を見せる」
「吹かすのもいい加減にしろよ?石でどうやって殺したんだよ(笑)?」
笑いながら俺に問う、茶色の短髪でガタイのいいブルータル。
「俺の石投げ能力は命中精度が高く、離れた場所からでも攻撃して相手を殺傷する事が出来ます。それは後でお見せします。実は今回、もう一つ報告がありまして…」
そう言いつつ、俺はカニング達を動かす為に話を続けた。
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