23 刺客
全身真っ黒な影のような男が地面の下に沈んでいく。俺は思わずドジ子を見る。
≪…何だ?今見たヤツは…≫
≪…恐らく刺客です。全身真っ黒、どこから現れるか解らない。テジーさんの情報と一致します…≫
どうしてヤツらは俺がここにいるって知って…。俺はそこまで考えた所で気が付いた…。
…そうだ。街の中や外でグランジの名前出してたの俺だったわ…。そりゃ、場所も割れるし、刺客も送って来るわな…。
仕方ない。防御スキルはまだ発現出来ていないがやるしかない!!俺はどこから来るか分からない敵を迎え撃つ為に集中して気配を探った。
…地中に沈んだ、という事は地中からまた現れるのか…?
俺は、箒を構えてドジ子を見る。
≪…判りません…。気配を探れないんです…≫
ドジ子が気配を察知出来ないとは…この能力者は危険だな…。瞬間、背後に現れる影の男。ペーパーナイフのような細い武器で俺を横薙ぎに斬る。
俺は咄嗟に前転して回避、森の木を背にして体勢を戻し片膝を付く。
…クソッどこから現れるか解らない…。しかし今の所は下の地面からしか現れていない。
こうなったらモグラ叩きしてやるッ!!しかし俺の考えを裏切る様にヤツが現れた。
≪夏見さんっ!!上ですっ!!後ろの木の陰から出て来てますっ!!≫
ドジ子の言葉に俺は再び前転して逃れる。またもや横薙ぎの斬撃を躱された影の男はすぐに木の陰に消えた。
俺はドジ子の言葉でヤツがどこから現れているのかが分かった。
≪…恐らく影ですっ!!影を使って移動してるんです!!≫
≪あぁ、俺も今気付いたわ…≫
黒い影のような男、夕陽で伸びた木の影に沈み、そこから現れる。そして木の上の葉の陰から現れた。俺はゆっくりと後退して森の木の陰から離れる。
影を使っていると分かったらなんて事はない。今度こそモグラ叩きしてやるッ!!
しかし、再びヤツは俺の考えを裏切る様に、木の陰のない後ろから現れる。気付くのが遅れて肩口を切られてしまった。
≪クソッ!!どうなってる!?影かない所から出てきやがったぞ!?≫
≪…そんなっ…確かに影を使っていますっ。それだけは確かなんですっ!!≫
≪ならどうして俺の後ろから現れたんだッ!?≫
混乱する俺達を嘲笑うかのように影の男は俺の足元に現れる。そして瞬間、俺の足首に焼けるような痛みが奔った。
「…ぐっ、くそっ…!!」
俺は膝を付きそのまま前転で逃げる。肩を切られ、脚を切られた俺は思考が混乱したままどうして良いか分からなくなった…。
しかしヤツは俺に考える余裕を与えてはくれない。すぐに背後に現れたヤツの武器を箒の柄で何とか凌いで転がって逃げる。
このままだとマズイ!!いつか掴まって斬られてしまう…。俺はその瞬間、開き直った。ヤツは後ろからしか来ない。どっちにしろ現れた所を箒で掃き出すしかないッ!!
その時、ヒュージの声が飛んで来た。
「アニキッ!!後ろだッ!!」
そう言いつつ、ヒュージが手に持った斧で影の男の上半身をぶった斬る。
「よくやったヒュージ!!危なかった、ぜ…」
しかし、振り返ってそれを見た瞬間、俺は驚愕した。斬られたはずの影の男のカラダは傷一つついていない。それどころか大斧を空振りしたヒュージが背後を狙われていた。
俺はすぐに箒で影の男を薙ぐ。しかし俺の動きに気付いたヤツはすぐに地中に沈んで消えてしまった。
「どうなってる?俺の斧がすり抜けたぞ!?」
「ヒュージ、お前がやっても無駄なんだ!!能力者には能力でしか攻撃出来ないんだよッ!!」
「なんだとッ!?くそっ…」
テジーの言葉に、攻撃出来ないと知って歯噛みするヒュージ。どうやら騒ぎに気付いてみんな集まって来た様だ。
俺は全方位に集中する。大体こう言う時は上か後ろから来るもんだ…。そして気配を察知した瞬間、俺は箒を薙ぐ。しかしそれに気付いた影の男はすぐに地面に沈んだ。
クソッ、このままじゃ埒が開かない…どうするか…?緊張と集中を切らさず、周囲の気配を探る。その時だった、テジーが叫ぶ。グランジッ、後ろの砂粒だッ!!ヤツは砂粒の陰から出て来てるんだッ!!
何だと?砂粒!?そんな小さな粒の陰からも出て来れるのかッ!?
「アニキッ砂粒ごとヤツを箒でやっちまうんだッ!!」
ヒュージの叫びに俺は、背後に現れた男を振り返る事無く、砂粒を掃き集めるように箒を回転させた。その瞬間、砂粒から出て来ようとしていた影の男を纏めて箒で宙へと掃き飛ばす。
「よっしゃぁッ!!捕らえてしまえばこっちのモンだぜッ!!」
俺が叫んだ瞬間、身体が光りを放つ。
≪新たに『ダストストリーム』発現しました≫
俺の身体の周辺を砂と風が旋回する。砂と風と共に宙に舞い上がった影の男を上空から、箒で薙いで砂の無くなった地面に叩き付けた。
「…アニキッ!!やったなッ!!」
「あぁ、何とか倒してやったぜ…テジー、ありがとう。お前のお陰だ…」
「間に合って良かったよ。なんとか倒せたな、グランジ…」
俺はテジーの言葉に頷く。新スキルが発現したのは良かったがかなりの苦戦を強いられたな…。やはり能力者は確実に消して行かないと俺の命どころか皆も巻き込みかねんな…。
俺が刺客を倒したのでドジ子もほっとしているようだ。
「天使様が呼びに来てくれなかったらヤバいとこでしたね」
スネアの言葉で、俺はドジ子が皆を呼んでくれた事に気付いた。
≪わたしもパニックになりかけてましたからね。それで皆さんを呼んだんですよ≫
≪ありがとう、助かったよ。今回はマジでヤバかったわ…≫
俺達がほっと一息ついていると、確認の為に近づこうとしていたテジーの前で、影の男が突然顔を上げると、残りの力を振り絞って自らの首を斬った。
その瞬間、ヤツの首から鮮血が噴き出す。
「…か、覚悟…してお…け。最後の一人、レインは…俺より…」
そこまで行った跡、男は力尽きて死んでしまった…。




