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転生ミスで弱小盗賊団の頭になっちゃいました。やり直しは出来ないと言われて頭に来たので地味スキルで生き抜いてやろうと思います。  作者: 駄犬X
序章

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2 行列のできる転生案内所

 2 行列のできる転生案内所


 爽士(そうじ)は突然の事に、何が何だか分からなかった。何も解らないまま、自分の身体が浮いて行くような感覚に戸惑う。天に吸い上げられるように身体が浮いていく。


 部屋の中、倒れている自分が見えた。…俺は魂が抜けたのか…?


「…どうなってる?頭をぶつけただけだぞ…?」


 自分の頭から、大量の血がカーペットを染めているのが見えた。


「そんな…バカな…ただ転んで頭ぶつけただけなのにッ…くそっ、まだ俺は死んでないっ…」


 浮いていく魂を、自分の身体に戻そうと必死に藻掻く爽士。しかし、無情にも身体から抜けた魂は戻る事なく天井をすり抜けて通過した。

 

 段々と小さくなっていく街が見える。


「…そっ、そんなッ、俺はまだ死んでないッ!!転んで頭をぶつけただけ…」


 必死に叫ぶ爽士の前に突然、黒いハットを被り、サングラスを掛けた黒いスーツの男が現れた。爽士の周りは、さっきまであった街の景色ではなく、ただ真っ黒な世界が広がっているだけになっていた。


「…あっ、アンタッ…誰だか知らないけど助けてくれッ!!俺はまだ死んで…」


 その言葉を重低音の声が遮る。


「アナタ様は、本日付で『死亡』となっております。夏見 爽士様。これより、わたくしめがアナタ様をご案内いたします故…」

「そッ、そんなッ…俺はまだ死んでッ…」


 爽士の言葉はそこで途切れた。黒服の男にガッ!!と魂を掴まれた様な感覚の後、爽士の記憶はぷっつりと消えていた。



 次に爽士が気が付いたのは、雲の上に立っている所からだった。足元を見る。空に浮かんでいるような雲の上に立っていた。


 目の前には行列が出来ていて数百人程が並んでいた。


「…では夏見様も列にお並び下さいませ。わたくしの案内はここまででございます。良き『転生』をなされませ…では」


 そう言うと黒服の男は一瞬にして消えた。


 …これは、夢なのか…?俺は本当に死んでしまったのか…?


 立ったまま考える爽士に、後ろからおばちゃんの声が響く。


「ほらほらッ、早く行きなよ!!アンタもわたしももう死んでるんだから諦めな!!それより早く並ばないと転生が遅れちまうよ!!」


 そう言われて戸惑いつつも、爽士は言われるままに列に並んだ。列の先を見ると役所の様な建物があり、看板が掛かっていた。


 『天界転生案内所』


 …これは…所謂(いわゆる)異世界転生とかではない、普通の輪廻転生の方か…。


 考えている後ろから、並んでいたおばちゃんが爽士に聞いてくる。


「…兄ちゃん。アンタ何で死んだのさ?ちなみにわたしはバーゲンで買い物し過ぎて階段でバランス崩して転げ落ちてそのままここに来ちまったのさ」


 爽士はめんどくさいおばちゃんに絡まれたなと思いつつも、正直に話した。


「ギャハハハハッ!!今時そんな冗談みたいな死に方するヤツいるのかい!!」


 …だって事実なんだからしょうがないだろ…。バカにされた様で、ムッとする爽士。うるさいおばちゃんの声に、爽士の前に並ぶ人達も眉を(ひそ)めて迷惑そうな顔をしていた。


「まぁ、気を悪くしなさんな!!まだまだ待ち時間は長いんだし、仲良くいこうや!!」


 そう言って豪快に笑うおばちゃんが肩を組んできた。


 …このババァ、肩組んでくるんじゃねぇッ!!酔っ払いのおっさんかよ!!


 おばちゃんは気が滅入っている爽士に構う事無く、話し続けた…。



 爽士は(ようや)く、役所らしき建物の中に入れた。あれからおばちゃんはずっと喋り続けていた。

 

 …あのババァ、本当に死んだのかよ。元気良過ぎだろ…。


 入り口に入った所で、係員によって各ブースへと振り分けられたので、爽士はやっとの事でおばちゃんから解放された。


 ブースは大きく二種類に分けられていた。魂の昇格を果たし、天界へと入場する人の為の手続きをする窓口。


 そしてもう一つは、魂の更なる昇格の為に、再び転生する人達を案内する窓口だ。爽士が振り分けられたのは転生側だった。


 建物に入ってからは列もスムーズに進み、すぐに爽士の番になった。係員に案内されるままに爽士は転生手続き窓口のあるブースに入って行く。


 目の前には、おっとりとした雰囲気のスタイルの良い可愛い感じの女性がいた。


「夏見 爽士さんですね?それではご案内いたしますので、そちらにお座り下さい」


 その女性は声も可愛らしい感じだ。爽士は言われるまま、銀行の窓口によくあるくるくる回る椅子に座る。


「夏見様は前世でのカルマがまだまだ残っている状態ですねぇ…」


 爽士は黙ったまま、ふんふんと頷きつつ説明を聞く。


「これだと再び、人間に転生して頂き、善徳を積んでカルマを減らして頂かなくてはなりません」

「…あの、その前に少し聞いておきたい事が…」

「はい?何でしょう?」

「次の転生先がどういった所なのか…というのを知りたいんですが。聞いてもよろしいですか?」


 爽士の質問に、女性はにっこり笑う。


「はい、大丈夫ですよ。転生するとここでの記憶は無くなりますから差支えはないんです」


 そう言って窓口の女性は爽士が次に転生するのが地球とは違う星で、まだまだ中世の文明から抜け出せていない世界だと教えてくれた。爽士にとっては現代の地球での転生は望んでいなかったので安心した。


「色々と説明、ありがとう。今度生まれ変わったらあなたみたいな女性と出会いたいですよ」

「あら、まぁお上手ですね。それでは新たな転生ライフを楽しんで来て下さい。カルマを少しでも減らすのはその人生を楽しむ事ですからね」


 そう言われて、爽士は無言で頷いた。言われるままに右側にある個室に入る。足元には説明を受けた転生ボードと呼ばれる魂を素粒子化する装置があった。


「それでは、いってらっしゃい!!」


 女性が窓口に設置してある電子パネルを操作する。足元から眩い光が爽士の魂を包み込んでいく。


 その光が爽士の魂を素粒子へと変換する。魂が素粒子となっていく中、爽士はパネルの前の女性がいない事に気が付いた。


 …あれ?さっきまでそこにいたはずだけど…。


 その時、


「…あっ…」


 という声が聞こえた。


 直後にパネルの上側を掴んで女性が起き上がるのが見えた。女性は焦った様に慌ててパネルを操作している。


 しかし、転生ボードの稼働は止まらず、爽士の魂はあっという間に素粒子に変換されて宇宙空間へと飛び出して行った…。

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