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転生ミスで弱小盗賊団の頭になっちゃいました。やり直しは出来ないと言われて頭に来たので地味スキルで生き抜いてやろうと思います。  作者: 駄犬X
序章

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16 盗賊ホイホイ

 16 盗賊ホイホイ


 作戦決行の当日、俺達は交易商人に変装していた。山の中でフィネスを先行させて盗賊達の動きを確認させる。


 俺は馬車の御者席のすぐ後ろの荷台に座る。ガイに御者をやって貰い、俺が商会長、テジー、ヒュージ、スネア、ラスツは商会員という設定だ。


 盗賊を潰したら、そのまま商会を続けて金稼ぎをする予定なので、商会名も付けておいた。


 『スカベンジャー商会』


 『清掃』という意味なんだが、色んな意味を含んでいる。実際に皆と相談して、屋敷や蔵の掃除から、盗賊の掃除まで幅広くやって行こうという事になった。


 盗賊はあくまでもフリだからな…。盗賊なんて続けても碌な事にならない。俺達は確実に盗賊潰しをしながら、堅実に金を稼いでいくつもりだ。


 街道を西へと進む。俺達が目指しているのは、ここらで一番大きい都市バズリンだ。


 グリッド盗賊団のヤツらを誘き寄せる為に、バズリンへと交易商人の振りをしつつ、街道を進んでいく。暫く進んでいくと山の中から、急いた様子でフィネスが現れた。ガイに馬車の速度を落とすよう指示する。


 そっと馬車に近づいて並行して歩くフィネス。


「…総勢十二名…そろそろ来るでやんす…」


 それだけ言うと、フィネスは再び森に隠れた。フィネスからの報告があって十分程進んだ辺りでヤツらが現れた。


 頭にはヤツらが目印にしている同じ黄色と黒が混ざったバンダナ、手には短刀、短剣、剣を抜いて、それぞれ持っていた。


 防具は軽装だが、胴の心臓部分には鉄が使われており、籠手、脛当ても同様に一部金属性だ。

コイツら盗賊の癖に、結構いい装備を付けているな…。


 ヤツらは、無言のまま、馬車を囲むように素早く展開していく。ヤツらが道を塞いだので、馬車を止めた。


「…何ようですかね…?」


 俺達は一様に不安な表情でお互いを見合わせる。ヤツらは沈黙したまま、不安そうな俺達の反応にニヤニヤと笑っている。


 リーダーらしき男が剣を突き出し、凄んで見せる。


「…見れば解かるだろうが?大人しく荷物を置いてさっさと消えろ…」


 俺達は再び、顔を見合わせる。


「…積み荷を置いていけ、と言われましても…我々は交易をしないと生きてはいけません。何とかこの場は…」


 俺の言葉に、リーダーの男が激昂して声を上げる。


「オイッ!!お前ら、新顔か?俺達グリッド盗賊団を知らねぇようだな?俺達が怒らねぇうちにさっさと馬車から降りろッ!!」


 俺達は顔を見合わせ、渋々と言った感じで馬車から降りていく。


「…積み荷は…酒か?」

「…はい、東方の国の貴重な酒でございます…」


 俺はへこへこしながら説明する。


「…ほぅ…東方の珍しい酒か…」


 完全に口から出まかせだったが、この方がより興味を引くだろう。案の定、男達の反応は良いようだ。

お互い顔を見合わせて期待に満ちた目を見せる。


「…今日はお前ら初回だからな、全部貰っていくぜ?まぁ、次からは少しだけでも残してやるよ…」


 そう言いつつ、リーダーの男が、試飲用の木製水筒を見ている。


「…そこにあるのは何だ?それも酒か…?」

「…えぇ、バズリンで領主様と商会長に試飲していただく試飲用の酒でございます…」


 俺は頭を下げながら、男達の様子を窺う。リーダーの男は取り巻きの連中に静かに指示を出す。


「…お前ら、ちょっとコイツらを見張ってろ。おかしな動きをしたら斬っても構わんからな…」


 そう言うと、リーダーの男は試飲用の木製水筒を手に取る。栓を抜くと中の酒の香りを嗅いでいる。


「…確かに、独特の香りがするな…」


 そりゃそうだ。酒に結構、強烈な麻痺剤を溶かし込んである。俺も事前に嗅いでみたが、中々パンチのある香りになっていた。


 そのまま飲もうとする男に、俺は待ったを掛けた。



「…お待ちください。ここはお一人ではなく、お仲間の方々にも振舞われた方が良いかと思いますが…」


 その言葉に、俺を威嚇する様に睨む男。それに構わず、俺は話をする。


「…差し出がましいようですが…」


 と断りを入れて話を続けた。


「もし、あなた様が今後、組織で上を目指そうというお方ならば、仲間や部下の人心掌握には気を配るべきかと思います。私の生まれた国では『人は石垣』という言葉があります。周りの仲間はあなた様という立派な城を支える石垣とも言うべき存在。ここは成果を分かち合う事で結束を促す良い機会かと思いますが…」


 俺の言葉に、考える様子を見せるリーダーの男。


 俺としては一人だけ麻痺に掛かっても他が暴れると都合が悪いので全員に呑ませたいだけだったが、まんまと乗ってくれた。


「…ふむ。お前、中々良い事を言うな?確かにその通りだ。オイ、お前らも呑め!!」


 リーダーの言葉に、集まってくる男達。俺はすぐに試飲用の木製の器を配り、全員に酒を注いで周った。


「…俺達のチームの成果と、今後の成功を祝って乾杯だ!!」


 リーダーの男の音頭で、盗賊全員が麻痺剤を溶かし込んだ酒を一気に煽った。その瞬間、男達は全員、電撃を喰らったかの様に身体を激しく痙攣させてその場にぶっ倒れた…。


 俺の目の前で倒れたのは、グリッド盗賊団の幹部でアンビーという男だ。フィネスが調べた情報では、コイツは野心を隠さない男のようだ。


 グリッドを引き摺り下ろし、次の頭目を狙っているとの情報もある。それだけに仲間を(ないがし)ろには出来ないだろう。それが仇になるとは皮肉なものだ。全員に酒を呑ませる為の、咄嗟の思い付きだったが、上手く乗ってくれた。


 俺は、ヤツら全員が呑んだのを確認した瞬間、顔を俯けて笑っていた。



「作戦成功だな」


 俺の言葉に皆、顔を見合わせ笑っていた。ヤツらはあっさりと罠に掛かってくれた。フィネスも合流して早速、片っ端から身ぐるみ剥いでいく。


 バンダナ、眼帯、ピアス、軽装の胸当て、籠手と脛当て。インナーの服に、剣、短剣、短刀などを回収して馬車の荷台に積んでいく。


「…グランジ、これを見てくれ…」


 テジーがアンビーの懐からネックレスを見つけたようだ。見た感じ、高級なネックレスの様だが…。


「…恐らく、どこかで襲った時に取り上げたモノなんじゃないか?それは売らずに何とか持ち主の所へ帰してやりたい所だな…」


 俺の言葉に皆頷く。


 取り敢えず売れそうなものは回収したので、盗賊達をふんどし姿のまま目隠しをして荒縄で縛り上げる。麻痺剤が強力過ぎたのか、死んではいなかったが一向に起きて来る様子はなかった。荒縄で縛ったヤツらを、馬車の後ろに更に縄で(くく)り付ける。


 ここからの道中はゆっくり行く必要はない。ガイと俺は馬車の前側へ、他のメンバーは荷台の後部に乗り込むと、馬車を走らせた。



 バズリンに到着すると馬車を停めて衛兵に挨拶をする。身分照会のついでに捕まえてきた盗賊はどこに引き渡せばいいか聞いてみた。


「俺達が連絡をして警備隊に来て貰うから少し待ってくれ」


 暫くすると、警備隊が五人程来てくれた。まずは警備隊の人達とギルドに向かう事となった。


 警備隊の案内で街に入る。バズリンという街が、この世界でどれくらいの規模なのか解からなかったが基本的な施設は揃っているようだ。


 見た感じだとちょっとした都市と言った所だろう。警備隊に着いて行くと、街の中心に二階建てのレンガ造りの建物があった。


 まず俺と警備隊員達が、捕まえたヤツらを引き摺ってギルドに入る。警備隊から盗賊達の指名手配情報を照会して貰う。


「…コイツはアンビーだな…。かなり慎重なヤツで足を掴ませなかったんだが…。良く捕まえたな?」


 ギルドの職員にどうやった?と聞かれたが、企業秘密です(笑)とだけ答えておいた。


 アンビーはグリッド盗賊団の幹部だったので賞金三十万ゼニー程だ。ゼニーは日本で言う所の円で通過の単位らしい。


 アンビー以外の仲間達は名が知れていない最下級構成員なので纏めて五万ゼニー程だった。

ついでにアンビーから回収したネックレスを見せて、持ち主を調べて欲しいと頼む。


 この世界ではハンターギルドと商業ギルドは別れてはいないようだ。鑑定の出来るギルド職員が出て来てくれた。


「…ふむ。これは…領都の商会主ウェスリー氏のモノだな…」


 鑑定するまでもなく、ギルド職員はネックレスの裏の刻印を見て領都の商会主のモノだと教えてくれた。


「…そうですか。出来ればウェスリー氏の元に何とか戻して貰いたいんだが…」


 俺が頼むと、ギルド職員は快諾してくれた。話している間に、準備されていた賞金を受け取る。


「…無理はするなよ?また捕まえる事が出来たら引き摺ってきてくれ(笑)」


 ギルド職員が笑いながら話しつつ、賞金を渡してくれた。その後、アンビー達はそのまま警備隊本部へと連行された。


 麻痺が強すぎたのか、未だにヤツらは目が覚めていなかった…。その後、商会の登録をしてギルドを後にした。



 次に俺達は装備屋に向かう。店に入ると、メガネを掛けた白髪で短髪の爺さんがいた。店の主の様だ。


「…何か用でもあるのか?」


 ぶっきらぼうな言い方だったが、職人気質の人にはこういう人が多い。俺は荷台の後ろに乗せていた装備諸々を持ち込む。


「これがいくらになるか、概算で良いので鑑定して欲しいんですよ」

「…こんなに沢山の装備をどこで手に入れて来た…?」


 店の主に聞かれたので、隠す事なく答える。


「盗賊を無力化して捕らえたので、引き渡す前に身ぐるみ剥がしておいたんですよ」


 俺が話すと爺さんが目を光らせて小さく笑う。


「…フフ。お主、面白いヤツじゃのう。普通はそのまま引き渡して賞金だけもらう輩が多いんじゃが…。装備を剥がして売りに来たヤツはお主が初めてじゃ…」

「そうですか?盗賊の装備もバカには出来ませんからね。こういうのは身ぐるみ剥がして売らないと勿体ないでしょう?」

「…フフフ、確かにそうじゃな。どれ、鑑定してやろう…」


 そう言うと、爺さんは真剣に中古装備の鑑定を始めた。


「…これだけ多いと少し時間が掛かるからのう。そこで店の装備でも見ててくれ…」


 そう言われたので、皆で店の中にある売り物を見て周る。この店に入った時から目立って気になっていた装備を見る。


 全身、黄金で固められた金ピカのゴールドアーマーだ…。こんなもん、よくこんな小さな街で売ってるよな…。


 装備の下に提示してある値段を見てみる。十万ゼニーだ…。何でこんな黄金装備が十万で売ってるんだ?(いわく)つきの呪い装備とかか?


 俺がじっと見ていると、店の主の爺さんが教えてくれた。


「…お主、それは金メッキの装飾用の鎧じゃからの。実用性は全くないぞ?まぁ、本物の金だったとしてもそんなの身に付けて戦うバカなんぞどこにもおりはせんよ」


 そりゃそうだ。こんなの身に付けて戦場に出たら狙って下さいと言ってるようなもんだ。…ていうか装飾用の金メッキのアーマーだったのか…。道理で安いわけだ…。


「それはな、貴族が道楽で買って飾っていた鎧だったんだが、所有するやつが片っ端から事故に遭って死んだり、病気になったりするって言うんでワシが引き取ったんじゃ。欲しけりゃ、売ってやってもいいぞ?」

「…いや、まだ生きてたいので遠慮します…」


 …やっぱ呪いの装備じゃねーか。こんなあぶねーモノ、当たり前のように店に置くなよ…。ていうかこの爺さんは大丈夫なのかw?


 爺さんは、机の上で計算をしている。店内を見て歩いている間に鑑定が終わったようだ。


「…ほれ、うちで買い取るならこの金額じゃな…」


 そう言って見せて貰った紙面には『三十八万ゼニー』と書いてあった。十二人分の装備でこの額か…結構な金額だな。


 しかし地球とこの星でのレートがどれだけ違うのか良く解からないが、大体同じくらいなのか…?

まぁ、盗賊の軽装だし一度使用済みの中古装備だからこんなもんなんだろう。


 どっちにしても元々俺達のモノじゃないし、金額がいくらだろうと別に良いよな。


「…どうする?売るかね…?」


 そう聞かれたので即答で売ると答えた。


「よし、それなら少し色を付けて四十万にしてやろう。また盗賊の身ぐるみ剥がしたらうちに持ち込んでくれよ?」

「ありがとうございます。また持ってきますよ(笑)」


 最初の厳しい雰囲気はどこへやら、爺さんは気前よくオマケを付けてお金を渡してくれた。

お礼を言った後、装備屋を後にした俺達は、少し遅い昼飯を食べる為に、大衆食堂に向かった。

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