15 作戦準備
15 作戦準備
翌日、小屋を補強する床板や壁板、補強の角材が揃ったので朝から、貼り替えていく。まず壁板を外して骨組みだけにする。中に入って床板を外して新しい板に変えた。
床板を全て張り替えた後に、次に壁板を付けていく。壁板を貼り替えたら外側に補強角材を打ち付けていく予定だ。
皆で協力して何とか、壁板を張り付ける所まで出来た。明日からは角材で補強していくだけだ。それと並行して、上納金やらの催促が来る前に、ヤツらを少しづつ削る作戦の準備に入る。
上納金と言っても、こっちの金なんか出す気なんか更々ない。夕方、フィネスが戻って来てから皆に、改めて作戦を説明する事にした。
◇
フィネスが戻ってきたので、夕飯を食べつつ盗賊達を潰していく計画を話す。
「当初の計画だと麻痺弾を使ってこっちがヤツらを襲う、とテジーと話をしていたんだがもっと確実な方法に変える」
天使様からのお告げだ、という俺の話に皆集中していた。
「まずはヤツらを引き付けて、確実に無力化する。その為に…」
酒樽いっぱいに水をいれたダミーを荷車に乗せて、如何にも交易で街に酒を運んでいるかのように見せて、ヤツらが俺達を襲う様に仕向ける。
ヤツらを引き付ける為に事前にそれとなく情報を流しておく。
当日、商人に変装して交易の振りをしつつ、ヤツらが襲ってくるのを待つ。後は麻痺剤を溶かし込んだ酒を呑ませて無力化する。
ヤツらが動けなくなったら、身ぐるみ剥がして街に行って全部、金に換える。
捕まえたヤツの懸賞金も貰いつつ、俺達の取り分は残して、適当な金額を上納金として納める、と話した。
「…ふむ。中々面白い計画だな。それだと怪我する心配もなさそうだな」
テジーの言葉に、頷きつつ俺は話を続ける。
「元々ヤツらの持っていたモノを売って納めているから、こっちの懐事情は全然痛くない。むしろどんどんヤツらから金に換えられるものを毟っていってやろう」
「そうと決まれば明日から準備だな」
ヒュージの言葉に、皆うむうむと頷く。
「まずは馬と馬に引かせる荷車、それから大きく目出つ酒樽だ。この辺りは村から何とか出して貰いたい所だな…」
荷車は少し大きめがいいだろう。樽を乗せる他にもヤツらから毟り取った装備諸々を乗せるスペースがいるからな。
「他には商人風の服と変装用の付け髭やらメガネなど小道具がいりますね。その辺りはわたしが用意しますよ」
俺はガイの言葉に頷く。
「後は荷車と酒樽、試飲用のチョイといい酒と強めの麻痺剤、ヤツらを無効化した後に必要な縛り上げる為の荒縄と目隠し用の布が必要だな…」
「それは僕に任せて下さい。村に行って調達してきます」
ラスツがそう言うので、任せる事にした。
「捕まえたヤツらは荒縄で縛り上げて、そのまま荷車の後ろで引き摺って行けばいいだろう。麻痺が効いてるなら多少の痛みは感じないはずだからな」
そう言ったものの、今までの所業を考えると痛みを感じさせてやった方が良いかもしれんなw
取り敢えず、ガイ、ラスツに頼んで明日村に行ってもらおう。ガイには衣装、小道具諸々を揃えて貰い、ラスツには馬と荷車、酒樽と試飲用のちょっと良い酒を出して貰えるように交渉して貰う。
水に麻痺剤を溶かし込んでも良いが、水と分かった瞬間に吐き出されても困るからな。そこは確実に酒を呑ませるようにしたい。
まぁ、グランジの親父にそれとなく作戦を伝えておけば、馬と荷車、酒辺りは何とか出してくれるかもしれん。明日フィネスにも村に行って貰って、グランジの親父に作戦を伝えて貰おう。
俺達は、夕食を食べつつ、作戦に抜けがない様に話し合った。
◇
翌日、小屋の壁の補強をしていると、グリッド盗賊団から使いが来た。細長で褐色肌、頭にはバンダナ、目付きは鋭く、革の軽装で腰には短剣を下げた細身の男だ。
「オイッ、お前らッ!!グリッドさんからの使いで来てやったぞ!!」
偉そうに小屋の前で叫ぶ男に、俺は裏から顔を出した。今は小屋の裏側を補強しているからだ。
「…あぁ、ご苦労さんです。グリッドさんからの使いって何かあったんですか?」
俺は角材を張り付けつつ、顔を覗かせて男に尋ねた。
「オイッ!!グランジッ!!俺はグリッドさんからの使いだぞッ!!顔覗かせて喋ってねーでちゃんと出て来て喋れやッ!!」
「あぁ、はいはい。今行きますよ」
そう言いつつ、俺は皆に角材張りを任せて小屋の裏から出る。
「小屋は今補修中なので、取り敢えずそちらにお掛け下さい」
俺は丸太の椅子を勧める。「フンッ!!」と偉そうな感じで鼻を鳴らしつつ座る男。
「…で、何の御用ですか?」
「…チッ、お前らの所に来ると調子が狂うぜ…」
「俺達はまだまだこの業界じゃ新人ですからね。ペーペーですから、こんなもんです。おたくさんみたいに凄い迫力は出せませんよ」
「…解った。それはまぁいい。取り敢えず用件だけ伝える」
…コイツ、パシリの癖に偉そうだな…。まぁ、話は聞いてやるか。
「カニングさんの所から、うちにもう少し上納金増やせって言われてな。同じ傘下のアスチュートの所には負けたくねぇってカシラが言うもんでよォ。お前らにも、いくらでも良いからもう少し出せって指令だ…」
男は、下っ端で入りたての俺達には期待してなかったのか、来た時ほどの威勢は無い。
「…無くても何とか用意しろよ?期限は五日後だからな」
「えぇ、解りました。五日あれば充分ですよ。では五日後にグリッドさんの所に上納金持って行きますので…」
余りにも淡々と話す俺に、使いの男は顔を顰める。
「…グランジ。お前、何か前と違うな…?前は落ち着きがない浮ついたビビり野郎だと思ってたが…」
「あぁ。俺、ついこの前なんですが雷の直撃受けましてね。身体はどうもなかったんですが、完全に記憶をなくしまして…。前の俺がどんなヤツだったのか忘れちまったんですよ」
「…マジか?雷の直撃受けて死んでないって…お前ふかしてんのか?」
疑う男に、俺は応える。
「…どうでしょうね。俺自身がその現場を見たわけじゃないのでね。仲間が見てたらしいですが、確かに雷に撃たれたって言ってましたよ」
「…そうか。まぁそれはどうでもいい。用件は伝えたからな…」
「解りました。では五日後に、グリッドさんの所に伺います…」
俺の返事を聞いた男は、すぐに帰って行った。使いの男が帰った後、外壁を角材で補強し終えたテジーとヒュージ、スネアも裏から出て来た。
ガイとフィネス、ラスツには村に行って諸々の準備をして貰っている。帰ってくるのは昼過ぎだろう。
「…アニキ、さっきのヤツ何だって…?」
「あぁ、グリッドが上部組織のカニングの所からもっと金寄越せって言われたらしい」
「…で、俺達にも出せって事か…?」
「まぁ、そんなとこだ」
「で、カシラ。どうするんで?」
「…あぁ、予定より早いが作戦を開始する。明日中に情報がヤツらに回るようにしよう。決行は三日後の昼だ。良いな?」
俺の言葉に、二人が頷く。
村を護る為もあるが、俺はグランジ・スクアードとしてこの生涯を全うする為に三日後から、盗賊潰しを開始する事にした。
まずは邪魔なヤツらの排除からだ。何としてもこの世界で生き抜く!!盗賊を監獄へ放り込んでやる!!
俺は天界への怒りと共に、改めて固く誓った。




